「オリビエ・ポプランは、いわばカモメです」
「なんだ?それは」
キャゼルヌが言った。
アッテンボローの散文的な言葉についていけなかった。
そもそもキャゼルヌにはその方面での才能もない。
レベルが低いが恋愛関係において一番的確な行動を起こせる人間はこの三人の中では
ヤン・ウェンリーかもしれない。
コンマ単位の違いでしかないが。
「飼えない鳥ですよ。カナリヤとか、インコとは違います。繋いでおくのはあれのためではないんです」
アッテンボローは話を続けた。
「他の女のところによりたいならそれは仕方がないことです。自棄とは違うんですが多分
私はあれが帰ってきたら・・・浮気をしていても聞かなかったことにするでしょうね。浮気したことを
許すしかないでしょう。あの男とこれ以上付き合うつもりなら。」
彼女は薄く微笑んだ。
ヤンが慌てていった。
もうすでに、公人としてではなく私人として後輩の姿勢が気になったのだ。
「それが自棄というんだよ。アッテンボロー。もっと自分を大事にしなさい。そんなほかの誰とでも
スライドできる立場に自分を置き換えてはいけないよ。
ポプランは少なくとも付き合うときは、お前以外の女性と逢瀬をしないつもりではじまっただろう。
確かにハイネセンへつれてはいくけれど浮気公認は明らかに自分を軽んじているよ。
確かに彼はそのう・・・過去の女性関係は・・・」
「最低ですよね」
言いにくそうな黒髪の先輩のかわりに彼女は言った。
一刀両断である。
毒舌家として知られるキャゼルヌはヤンとは違って容赦はない。
「わかってるんなら、他の男を選べばいいものを。お前を好きな誠実で貞操観念と良識がある男は世の中
いくらでもいるだろう。あぁそうだ、分別と思慮を加えてもいい。どうだアッテンボロー。俺が探してやろう。」
アイスクリームのトッピングではない。
「おあいにく様です。私はあの男が好きですよ。キャゼルヌ先輩」
アッテンボローは瞳を伏せたまま、はっきりいった。
「よい趣味じゃないな・・・。」
キャゼルヌは言葉にして呆れヤンは無言のまま・・・呆れた。
恋は盲目である。
かくも聡明であったはずの美人提督が・・・。
「恋愛は理屈ではないでしょう。私だってあいつを好きになるとは夢にも思わなかったんですから。
コーネフの方が恋愛するにはよかったかも知れませんが、私はあれを選んだんです。といって
仕事を忘れてもいません。立場もあります。みんな私があの男に愛想を尽かすばかり思っている
でしょうがその逆だってあリえるんですよ。男より仕事をとる冷たい女は嫌いだってポプランは
言っていいです。」
二人の先輩は静かな面持ちで語る後輩がかなり恋に堕ちていることを悟った。
参ったな。
ヤンは困った。
彼女が今後仕事と恋人の言動で彼女の尊厳を失うのは残念である。
アッテンボローの魅力のひとつは孤高であっても誇りある言動であり、
自尊心である。
妙な自尊ではなく彼女は自分らしく生きてきた。
それはヤンやキャゼルヌにはない翼のように
崇高なものに映った。
ある意味アッテンボローは縛られてほしくないとヤンは特に思う。
キャゼルヌも思いはあるが近い世代で20代で将官になってしまった人間同士感じることかもしれない。
ヤンは残念ながら自分がつながれていることをたびたび、
思う。
イゼルローン要塞を第13艦隊という名前のわずか半個艦隊で落とすことを強いられたのも、
軍部につながれているからであった。
辞表を出したくても、アムリッツァではシトレ元帥にほだされ、第13艦隊の兵士のことを思えば
辞表は破棄しなければならなかった。
「エルファシルの英雄」「魔術師ヤン」「奇跡のヤン」というネームプレートに
縛られていることを否めない。
アッテンボローは何か大きな功労で将官になったのではない。
勿論あのむごい戦場で生き残り将兵を守った功績は評価されるべきものであるが
ヤンのように『派手』ではない。
派手なネームプレートでないぶん兵士たちも民衆も政治家も彼女を
特別に「英雄扱い」はしない。
運のよい女性という認識程度であろう。
ヤンは時々アッテンボローがうらやましくなる。
自分が彼女の立場ならば、軍なんか辞めてやるのにと思う・・・。
これはヤンの本音でありといって、アッテンボローへの羨望ではない。
「私は男の嫉妬の中で、この仕事をやってきました。ヤン先輩もキャゼルヌ先輩もそうでしょうが、
若くして出世すると、ねたまれます。特に男に。ポプランの以前の女達の嫉妬など、
それに比べればかわいいものです。女の嫉妬なんて一家を亡ぼすだけですが男のそれは国を亡ぼします。
昔そんなことをヤン先輩は教えてくれましたよね」
「そんなこともあったね」
ヤンもキャゼルヌも出世が早かったし、ましてアッテンボローは最年少の軍史上初の女性提督だ。
どれだけ反感を買い甘くみられたかは多少は想像できる。
けれども想像でしかない。
口にはいえない苦労を彼女は耐えていると思われる。
この後輩は自分の苦労話をひけらかすようなところはない。
三人とも冷めた紅茶や、コーヒーを口にする。
「私は出世を喜んだことはありませんし、かといって責任を放棄する気もありませんから
私なりにやってきたつもりです。自分の狭量さや未熟さなど承知ですし。
努力って苦手ですがそれなりに負けない戦いをしようとない頭を使っています。」
アッテンボローにしては殊勝にいった。
かわいらしいおつむを指でつついた。
「それは・・・わかるよ。アッテンボロー。わかってるつもりだよ。」
ヤンが困ったような顔をしていった。
「すいません。ヤン先輩や、キャゼルヌ先輩が随分助けてくださってるのはわかってるんです。
でも、お二方のように物分かりのよい男ばかりではないですからね。
ともかく文句を言うやつは多いです。
それは先輩も同じでしょう。」
ヤンは髪をまた、いじった。
自分でもいい癖ではないとわかるがつい髪をかいてしまう。
軍部には女性もいるにはいる。
しかし基本的に男性社会である。
ヤンは歴史にはそれなりに造詣は深いがやはり過去にも女性が提督にまでなった
事例を挙げることができない。
軍部の目的はアッテンボローのカリスマ的な魅力だ。
「奇跡のヤン」の後輩で、「不死身の女神」というお題目がつけば精鋭部隊に見えなくもない。
是が非でも「自由民主のための聖戦」・・・ヤンは嫌いな言葉であるが、それには「勝利の女神」が
プロパガンダ(政治宣伝)として必要だった。
アッテンボローはカリスマモデルと同じ位置に考えられて
軍部によってヤンの元にすえられたのである。
功をあげればもっけの幸い。
あげられなくとも「奇跡のヤン」のもとにいれば、負けない戦ができるといわれる。
軍部は兵士の意気高揚にアッテンボローの運と、魅力を使っているに過ぎない。
アッテンボローは先刻承知だしやむなきことだと思っている。
運がないわけではないのも事実だし、「女性提督」という名前がつけば軍部の支持に
一役買うことになることも彼女は知っている。
けれど彼女は一兵士としての矜持を持ち戦場で生きている。
部下を殺さない算段をつけるために。
ヤンはそんなアッテンボローを見ると一兵士ならかえってよかったのであろうかと思う。
「先輩、私はこれでもタフなんですよ。そんなかわいそうな子を見るように見ないでください」
アッテンボローは笑った。
「いや、そんな風に見ていたわけでもない・・・。うまくいえなくてすまない。」
「ポプランは私を一人の女として大事にしてくれています。あの男といると自分が楽になる
どうもそこが好きなようです。あれといると楽なんです。・・・・・・物理的にいつもそばにいなくて構わない。
同じ宇宙で元気で生きているなら私は嬉しいんです。生きていればまた会えます。
喧嘩ができるのも生きているからです。あまり論理的な理由じゃないので説得力に欠けるのが、
我ながら情けないとは思いますがね」
「重態だな」
キャゼルヌが、ぼそっと言った。
「さすがに浮気してもいいよ、とはいえませんでしたね。あいつの性癖を考えればいってやるべきでしょうか。」
また物騒なことを言い出した後輩に、ヤンはあたふたと付け加えた。
「そんな無茶なことは言わなくていいんだよ。アッテンボロー」
「あの男が帰ってきたら、話し合うことにしますよ。あいつだってこういう女に疑問を持ってもいいんです。
後方勤務の女性士官にも綺麗な人は大勢いますしね。仕事より兵士の生命よりも、愛する男のことを純粋に
考えられる女性があいつにはいいのかもしれませんし」
「お前、やっぱり、自棄だぞ?」
キャゼルヌは言ったが、もう彼女は決めているようでこれ以上言ってもだめだと、彼も観念した。
「私はいやいや軍人ですが、この立場になった以上は、部下の命が最優先です。
これが同盟政府にどう使われようが私の責務です。」
政府の、軍部の宣伝に使われている自分を自覚している。
とヤンに伝えたかったのであろう。
それでも軍人になった以上は兵士の生命が大事と言い切った。
それはアッテンボローの正常な人間感覚でありまともな精神状態である。
「オリビエ・ポプランは本当のバカではありません。役に立つ男ですから、
もうこの人事で進行しているならそうしてください」
そして。
彼女は、付け加えていった。
「それと、あの男がプライベイトでしたいことはそのままさせてやってくださいね。きっとあいつもいろいろと
考えることもあるでしょうし。私は大丈夫ですから。」
妙なことを自分でも言っていると彼女は思ったがそのまま仕事に戻った。
ヤンの知らないアッテンボローの後姿。
いつでもうつむかないで、
あごを上げて綺麗なストライドで歩くのが彼女だと思っていた。
でも、今の彼女は少し違う。
女性・・・なんだな、とヤンは思う。
「アッテンボローが過去にも恋人を作った姿は見ていたが」
残されたキャゼルヌはヤンにいった。
「オルタンスが言っていた。アッテンボローが尽くすような男はこの世にはいないと。あいつが『かわいい』と
思う男を手のひらで転がすのが一番だと。それは当たってるだろうな。浮気をしない男なんて実のところ
俺はほんの数人しか知らん・・・。ポプランやシェーンコップのような前線にいる男は特にな。というか、
シェーンコップやポプランに言わせれば、一人の女とのほんのわずかな情事すらも、真剣な恋に
違いないんだろうし。」
いつもの家庭人らしくない発言ですねとヤンは、冷め切った紅茶を飲んだ。
かなり渋い。
しかしユリアンが入れたものを粗末にはできない。
「結婚しているといろいろとあるさ。オルタンスがにくいと思う夜なぞしょっちゅうだぞ。でも、娘たちがかわいい。
お前だって結婚すれば女房に殺意をいだくこともあるだろう。」
「・・・物騒ですね。」
お前さんがおびえるから黙っていただけだとキャゼルヌはしれっと言う。
「考えるとあのかわいい娘たちを産んで育てたのがオルタンスなんだから、結局は降伏する。
長い人生、振り返ってもしかすればお前と結婚できて幸せだったというかも知れんな。死ぬ前に。
でも同じ屋根の下にいるといなくなればいいものをと思う日もある。それは事実だ。」
ますます自分の結婚観が揺らぎそうなヤンであった。
「どこでも多かれ少なかれ夫婦にはそんな悶着があるさ。それも夫婦善哉だ。
憎い日ばかりじゃないし。勿論おおむねうちは家内で持っている家だし
俺は家内には逆らわないようにしている。家庭事情まで波乱万丈でなくていいんだ。
でも甘いタルトのような生活ではなくてやや、薬味が聞いた料理のようなもんだな。
結婚生活って。」
実質はやはりキャゼルヌは家庭人で、大体をマダム・オルタンスに従っているのも
家庭を大事にする心ゆえ。
ところで、とヤンは尋ねた。
「先輩は浮気しなかったんですか。」
ヤンが面白そうに尋ねた。
「ばか。してたら俺が殺されてる。あいつは何でもお見通しなんだ。怖くてできると思うか。
おれが浮気でもしていたら今頃食中毒を装って死んでる。」
あまりにまじめなご面相でキャゼルヌが言うので、ヤンは笑った。
彼女の事情。
彼女は彼女で、ひとりの部屋で眠れぬ夜を送った。
男がいれば眠れないし、いないとまた、眠れない。
けれども、もともとものめずらしい「女性提督」というネームカードがなかったら、
あの男は自分に気がついたであろうか。
彼女は美人といわれると違和感を覚える。
他人は気安く美人だといってくれるが、
実は当人はコンプレックスの塊で、女性としての自信はそれほどない。
背が高すぎることも、そばかすもきつく見える切れ長の眸も表情のない唇も
当人はそれほど気に入ってはいなかった。
それに性格もかわいいものじゃないと思っている。
これだけ自信がないのに「美人」呼ばわりされるのは正直、荷が重い。
そんなかわいげのない自分をあの男は至上のもののように愛してくれていた・・・。
それを思うと、眠れないアッテンボローなのである。
イゼルローンでの懐かしいやり取りをヤンは思い出しながら様々な出来事に追われて
やがて、そのことも考えられないほどさんざんな事件が勃発する。
ハートの撃墜王でさえも手をこまねくしかできなかった事件である。
「ドールトン事件」。
船団航法士であるドールトンという女性大尉が船団に彼女を裏切った帰還兵がいたことで、航路を変えて
危険宙域に200万の命をいざなっていたのだ。
ヤンたちの生命も含まれている。
ポプランはドールトン大尉に同情的で理由はやはり「唇がもう少し薄ければ完璧な美人」だった
からであろう。コーネフはそんなポプランと男女の痴情事件でさてどちらに非があるかをごうごうと
談義していると・・・・・・さすがのやさしいフレデリカでさえ、さりげなく咳払いをした。
そんな悠長な事態ではなかった。明らかに船はハイネセンではない危険宙息に
むかっているのだ。フレデリカが二時間かけてドア越しに女性の立場でドールトンを
説得しようとしてもドアを開けられることはなかった。
結句は彼女の自殺で事件の幕は閉じ、大幅の遅れでハイネセンへヤンたち一行は
到着した。
とどのつまり、ハイネセン滞在期間は多いに短縮され、
ヤンはせわしなくビュコック大将との密会を果たした。
事態が深刻なベクトルに向かっているのに、何の手もうてない自分に歯がみした。
後輩のこともであるし国内のクーデターもどこまでビュコック大将に甘えてよいやら。
算段がつかぬままヤンは次の手を考える。
白い船の奴さん。
ラインハルト・フォン・ローエングラム侯は彼の先手をいっている。
看破していながら何もできないふがいなさをヤンは感じていた。
戦術レベルの段階でいつもヤンはすでに後れを取ってしまうのである。
それはヤンが「民主政治」のもとの軍人だからである。
彼が非凡だったのでは決してない。もっともこれは憶測に過ぎない。
フレデリカの用意した茶葉が航路で役に立ってユリアンはますます彼女にあこがれた。
ハイネセンではしこたま茶葉を買い込んでトランクにたくさん詰め込んでいる。
その一生懸命な姿を見てヤンは少し心が安らいだ。
だが、ヤンは帰りの船のことを忘れていた・・・。
それだけビュコック大将との密会が大事であったのであるが
ジェシカ・エドワーズ女史の誘いに出て行ったことも何か関係するのかもしれない。
ユリアン少年はエドワーズ女史が嫌いなのではない。
ヤン提督の美しき優秀なる副官をひいきしているのだ。
ユリアンは事務処理を黙々とこなし船の手配をしてくれたフレデリカに感謝した。
これだけ手を尽くし心を配れるフレデリカをひいきする少年の気持ちも理解できなくはない。
ハイネセンからイゼルローンへ還る当日の朝。
予定通りであったらしいが、シルバーブリッジで停電があった。
そんなことをユリアンが知るはずもない。通知はしているというけれどつい先日ここに帰ってきた彼に
知るよしはない。ホテルよりもヤンの自宅のほうがいいと気を使ったものの裏目裏目に出ていた。
少年は寝坊した。
少年が寝坊すればおのずともう一人寝坊する人がいる。
0800時に揺さぶり起こされた青年司令官は意識が朦朧としている。
朝は全くだめな人である。すぐに熱くて濃い紅茶だけを与えてユリアンは
出立の準備をした。
気を利かしたフレデリカが(気の利かないフレデリカなど想像できない)
車をヤンの家までまわして三人で空港に行くとリンツ、コーネフはいたが
「ポプラン少佐がいませんね・・・。」
ユリアンはポツリとひとり言を言った。
ヤンはコーネフにポプランが駐留していそうな女性に連絡を取れないのか聞くと
さすがのコーネフも女性たちのファーストネイムしか知らないのだから連絡できない。
もっと同行者のことも考えて行動してほしいとヤンが恐ろしい棚上げを言う。
ユリアンはフレデリカの顔を見て赤面した。自分たちだって寝坊をした上、ヤンは帰りの船も
手配しなかった。すべてはフレデリカの機転でみな無事に帰路につけるというのに。
フレデリカはそんなことは気にならないようで、ただポプランだけをおいていくわけにもいかないと
まじめに考えていた。
地上車(ランド・カー)からおりてきて空港に駆け込んできたポプランの姿はアッテンボローが見れば
横っ面を張り倒しそうな乱れた服装で、まともにシャツのボタンもはめていない。
ともかく女性の誰かがしつこかったのだそうだが、才媛かつ人格者のフレデリカは
「提督、全員そろいましたね。」
と優美に微笑んだ。
帰りの船では大きなアクシデントもなく順調な航路であった。
20時間ほどポプランが個室で隣に女性もなく一人で熟睡したそうでリンツが
永遠に眠ってていいんだぜ、といってのけた。
途中ユリアンは15歳になった。
あれだけブラスターの手入れに熱心だったみなが船でお祝いをした。
ヤンは4月4日までは、14歳違いのユリアンですと嬉しそうにいう。
普段は15歳の年の差がこの時期だけは一年なくなる。
それほどそんなことがうれしいのかとまだ幼い少年は考える。
あわただしく出発をしたのでささやかなパーティだったが、ユリアンはプレゼント予約チケットをみなから
頂戴した。それは彼にとってはうれしいプレゼントだった。
次はヤン・ウェンリーのバースデーである。
当人は30歳の誕生日なのでうれしくないというし、
うれしくないようだけれど・・・3月30日には手を打っていたものでさえ瓦解した。
クブルスリー大将暗殺事件が発生した。
当初は情報が入らずグリーンヒル大尉がヤンにハイネセンへ引き返すかと聞けば
彼はすぐにイゼルローンに変える必要性があるとしかいわない。
夜遅くに暗殺が未遂で終わったことの情報がはいった。
だがこれでは終わらないのがローエングラム侯の手らしい。
4月3日。
惑星ネプティスにて軍の反乱。
これでは奴さんの思うが侭だとヤンは思う。
4月4日。
ヤンはとうとう30歳になった。
ユリアンやフレデリカはおめでとうというがヤンには一向にめでたくはない。
ポプランはきらきら星の王子さまなので30歳になる前に29歳から若返って18歳になり、
また29歳になるまで今度は年を取るのだそうだ。
・・・幸せそうな人だとユリアンは思う。
フレデリカはバースデーケーキを用意しながら「男性の価値は30代から」といいつつも
ろうそくを27本しか立てなかった。
そんな彼女にまたユリアンは傾倒するのである。
こうして、一行はイゼルローン要塞へ帰ってきた。
4月8日。イゼルローンへ帰還。惑星パルメレンドにて武力反乱発生。
これではヤンはアッテンボローの恋路まで慮る(おもんばかる)余裕はない。
とうのアッテンボローは還ってきたユリアンに
どうせならイゼルローンが嵐の中心になればいいのに・・・などあの大きな声で言うものだから、
ムライ参謀長ににらまれていた。
撃墜王とはまだ再会していないらしい・・・。
by りょう
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