ビバ・デモクラシー!・2
女性提督と「自称撃墜王」との愛の巣。 ユリアンは不器用なんだよなあと自称撃墜王のポプランがソファに座って靴や靴下を脱ぎながら 言う。 「言うに事欠いてシェーンコップ中将はいい人だって?馬鹿だよな。カリンが罵倒したくなるのは当たり 前だ。「君って器用だね。僕はいくらひとに習っても不器用で君は素敵だと思うな」とか茶を濁せば良かった のに。」 脱いだ靴下を投げ、靴を蹴飛ばす。 「行儀悪いなあ。」 といいながらもせっせとそれらを片づける女性提督ことアッテンボローは、マダム・オルタンス並みの 賢妻かもしれない。 靴下はランドリーへ。靴は消臭剤を入れて風通しの良いところに。制服のジャケットもスラックスも 時間の問題でポプランは脱いでしまうし、二人おそろいのギンガムチェックのガウンを持ってき着替え させた。とっととシャツと下着は洗っちゃおうと思っている奥様、アッテンボローである。 「ユリアンが器用な子なわけないじゃないか。昔から女の子のことはヤン先輩以上に不器用でね。 ましてカリンのような「グラス・ハート」の少女を「朴念仁」とも言えるユリアンがなんとかできるはずが ない。未熟だとか熟成してるとか以前の問題で先輩に似て、単純に野暮なんだよ。」 洗濯のあいまに掃除をし、数日分の食料をキッチンで作る女。彼女こそこの革命軍において司令官を 補佐する女傑であった。 亭主にやや甘い女傑。 なあ。 「おまえさ、「ジーク・カイザー」に対抗するうちの歓呼の合い言葉ってのは考えたのか。士気を高めるような そういう言葉。考えてるって言ってたよね。是非拝聴したいな。」 アッテンボローはキッチンで作り置きする食料を保存しながら言った。 解凍すれば食べれるように簡単な食事しか作っていない。 今でこそ、フレデリカは満足な食事をこさえられるようになったけれど、新婚当初はアイリッシュ・シチューを 炭化させてシャルロット・フィリス・キャゼルヌ嬢に、そのうち上手になると慰められたと本人からきいている。 あの当時は自分たちは地球へ、ヤン夫妻は宇宙を放浪していたころだから物資はさぞ貴重だっただろう。 イゼルローン要塞にいれば作物など栽培できるシステムがあるので、食料には困ることはない。 それだけでも要塞再奪取は意義があったと、アッテンボローは思う。 まして。 銀河帝国皇帝ラインハルト一世と対峙する現在・・・・・・専制政治と対峙する民主政治。 アッテンボローは思う。 ヤン・ウェンリーは当人は不本意であろうが民主政治のシンボルとして難攻不落のイゼルローン要塞に 厳然といることは共和政治を望むものの大きな希望になるであろうと。 以前ヤンが漏らしたことがある。 人間の中に二面性というものが存在する以上、専制と民主という二種類以上の政府形態が宇宙に共存 するであろうと。自由惑星同盟の水で育ったアッテンボローには想像の枠をでないが、人間の中には完全なる 自由よりも「能力豊かな人間のもとの手に届く自由」をほっする人種がいるという。 能力、政治感覚や行政能力が優れたものが一人独裁をしく。 これ自体が悪なのではないと。 その後継者が果たして器量があるのか、どれだけの行政能力があるのか人道的に優れているのかは わからない。 まして世襲という形で権力を子に引き継ぐとしたら親は良くともその子にいかなる人間的な能力如何は 疑問で・・・・・・。 いやいやいまはそこを考えるときではないとアッテンボローは思う。 専制政治の悪が問題ではない。 だが一度民主共和の種が根こそぎ消滅してしまうと専制政治に疑義を抱いた人々は一体どういきれば いいのか。ゆえに民主共和制の苗床をエル・ファシルなり、小さな惑星でもいい。宇宙に残しておくべきだと ヤンは言っていた。 そのためには・・・・・・銀河帝国皇帝ラインハルト一世とヤン・ウェンリーは戦わなくてはいけないのだ。 ・・・・・・妙な連鎖だなとアッテンボローは苦笑した。 ダーリン。 「なんかすごく真剣に飯作ってるな。手伝おうか。」 ポプランはアッテンボローがいつまでもキッチンから出てこないでいるから不思議に思ってやってきた。 「うん。料理はね。大丈夫。この戦いの意義を少しばかり考えてたんだが・・・・・・。」 「で、その卓越した頭脳からどんな答えが出てきたわけ?」 ポプランはアッテンボローの腰を抱き寄せて、綺麗な素肌の額にキスをした。 「ま、伊達と酔狂でおっぱじめる戦いでしかないわな。まともな意義などたてられぬよ。」とにこりと 微笑んだ。 で、歓呼の声は何にしたわけ? アッテンボローは3センチだけ高い亭主の唇にキス。 「考えるには考えたけどな。「ビバ・デモクラシー!」。」 ポプランにしてもアッテンボローにしてもいまいちそれじゃインパクトに欠けるなと思っている。確かに 心境は「ビバ・デモクラシー(民主制)!」なのだがいま三つほど華麗さも欠ける。 「こういうものにはもっと印象に残る要素が必要だよ。オリビエ。それじゃ及第点が出しづらいなあ。」 もう一個あるにはあるぜと奥方に接吻けをして「自称撃墜王」のご亭主は言う。 「くたばれ皇帝!」 ふむ。 「まだそっちの方が良いね。すくなくとも兵士の士気は上がりそうだ。それにしてもあの金髪の麗人の 名を借りぬには歓呼の言葉すら作れないとは。我々の言語的な能力の乏しさが因するのか、司令官の 地味さが原因なのか・・・・・・。」 アッテンボローはポプランを見つめて困ったような笑顔を見せた。 「及第点、くれる?ダーリン・ダスティ。」 ・・・・・・。 「お前ってさ、よく法律の本読むだろ。いずれ弁護士かなにかになるつもりなら、もっと舌鋒鋭い根拠ある 指摘ができなくちゃね。まあ今夜のところは及第点をあげるよ。」 あれ。 「ばらしてないのになぜわかる。」 ポプランは戦後、生き残ればアッテンボローと二人、法曹界で身を置きながら生計を立てるつもりで民事 判例集などを読みあさっていた。 「わかるよ。お前の女房だもの。」 アッテンボローはいたずら娘のようなチャーミングな輝く笑顔でポプランを、テクニカル・ノック・アウトした。 「ベッドでイイコトシヨ。ダスティ、かわいすぎ。我慢できないかも。」 ばか。 アッテンボローは真っ赤になってうつむいた。 「いちいち言うな。恥ずかしい。」 プラトニックではない関係をはじめて早4年。 それでもこの二人の蜜月は終わらない。 脳みそが溶けると白旗を揚げたのはアッテンボローの方。「ねえ。オリビエ。のど乾いたからお水。」 いくら注意しても堂々と真っ裸で部屋を縦断するのがオリビエ・ポプランで、それになれていく能力が 優れているのがダスティ・アッテンボロー・ポプラン。 「ダーリン・ダスティ、水とワインとどっちが良いか。」 「・・・・・・水でいい。」 体が火照って熱いのにその上アルコールはいただけない。女性提督はお酒に実は強くない。クールな 美貌に不釣り合い。 だがそのギャップがポプランにはたまらなくかわいいと思える。 「女房がかわいいなんて男の人生でかなり幸せだよな。水持ってきたぞ。飲ませてやろうか。」 「自分で飲めるよ。」 アッテンボローは上掛けを胸までたくし上げて体を起こし冷たいグラスを受け取った。口移しで飲ませようと 楽しみにしてたのにと隣に潜り込んでシーツの下で「ヨカラヌ」ことをしているポプラン。 「こら。水物を持ってるときに変なとこ、さわるな。こそばゆい。」 あまりおいたをすると奥様のご機嫌を損ねてしまうのでポプランはシーツの膿からやっと顔を出した。 「30すぎて背中に肉が付いてないなんてお前って・・・・・・綺麗なからだしてるよ。」とアッテンボローの 背中に接吻。 ・・・・・・。 色気のない話で悪いんだけどさ、とアッテンボローは裸の背中をポプランがキスするままに任せて口火を 切った。 「ドクター・ロムスキーは第2のジョアン・レベロにならずにすんだ様子だよ。もしうちの艦隊と司令官をいま 帝国に売られても見ろよ。あのロムスキーって人間は個人的な羞恥心が先に走るが今回それは吉と でたな。お前さんが大嫌いなシェーンコップにはらせておいたがロムスキー氏をたぶらかす輩はいたそう だが、それを見事にはねのけたらしい。一枚岩とは言えぬ組織であれ煙が立っている以上はけしておかない とね。」 ふーんとほとんどアッテンボローの素肌以外に関心がないポプランは適当な返事をした。アッテンボローは それも丁度良いかなと水を一口飲んで、話を続けた。 さて。 「帝国の猪提督から降伏をせよと勧告文が送られてきて、こちらはいくらでも返信文は用意しているけれど、 うちの司令官は返事をまだださないでいる・・・・・・。何かたくらんでるんだろうな。たった2万の手勢で宇宙一の 権力と戦力を誇る皇帝と対決するんだから・・・・・・多分、先の「神々の黄昏」作戦の時のように緒戦は各個 撃破を狙っているのだろうけれど・・・・・・。」 ふんふんとポプランはお構いなしに「ヨカラヌ」ことを続けていい加減な相づちを打っている。 アッテンボローは考える。 「この要塞は結局講和の切り札に取り置くだろうし、回廊内で戦う方が回廊外縁の危険宙域を使って 地の利を生かせるよな。いやかなり生かせる。イゼルローン要塞にいるってことは政治的にも戦術的にも かなってるようだ。・・・・・・問題は回廊にどう敵さんを・・・・・・黒色槍騎兵をお招きするかなんだよね。 ビッテンフェルトは猪突とはいえど、皇帝をいたくあがめているときく。となるとあの金髪の坊やが簡単な 誘惑に乗るはずないし、それじゃあビッテンフェルト一人勝手に戦端を開くってことにはならないよなあ。」 黒色槍騎兵だけでも回廊に誘い込めれば楽なんだけどなあと、奥様はぼやいている。どうせヤンの ことだから自分に「引率者」役を任せるつもりでいるであろうと彼女には容易に予測できた。 「金髪の坊やを故意に勝たせてのぼせ上がらすか、こっちが全力で戦って皇帝を逆上させるかの どちらかじゃないわけ。」 「ヨカラヌ」ことばかりしていたがポプランはアッテンボローの手からグラスをとってテーブルに置き、 さらに「ヨカラヌ」ことをすべくベッドの中にアッテンボローを引きずり込んだ。 「そんな三流の奇計でのってくるようなたまじゃないんだってば。皇帝ラインハルト一世は。昔から そうだ。あの麗人はね。基本が完璧の用兵家なんだ。補給経路、完備、人事すべて緻密に構成して 戦略レベルでいつもうちの司令官の上を行くんだから。ヤン・ウェンリー一人をしとめるのに大仰な ことだけど今回イゼルローン要塞を取りまく帝国の諸提督の配置は、完璧な戦略理念からできあがって いるんだ。それを崩そうって言うのが難点なんだよな。」 あっちだって。 「あっちだって各個撃破の危険性は考えているし回廊内に引きずり込まれる危うさを配慮して今回作戦を 練ってきているんだ。」 私ごときが考える程度の小細工は、皇帝はお見通しなんだよねと唇をとがらせると、アッテンボローは とうとうポプランに組み敷かれた。 「ストップ。うちの女房殿は見目麗しく才も長けているがいかんせん、戦争が好きだ。そういうことはうちの 元帥閣下にお任せすれば良い。ダスティ、戦いが始まれば一緒にいられる時間も減る。」 いまを大事にしようぜ。ダーリン。 きらめく緑の眸にやさしく見つめられて。 「うん。そうだった。ごめん。ダーリン・オリビエ。・・・・・・キスして。」 その言葉と、とろけるようなアッテンボローの宙(そら)色の潤んだ眸と艶のあるふっくらとした美しい唇。 あっけなくオリビエ・ポプランは陥落。 甘く、そして深い接吻を・・・・・・。 さすがに明晰なる女性提督も、愛しい男に抱かれて「ただの女」に戻る。 ただひとりの男に愛されたい、愛したいただのひとりの女になる・・・・・・。 by りょう ヤンが思っていることをアッテンボローに語らせてしまいました。 原作、DVDともにアッテンボローはポプランのことを「自称撃墜王」ってよんでいます。 じゃれ合ってますね。(腐の視線。) ポプランさんは原作では当然同盟軍史上最多撃墜王なんですが娘ではコーネフに 一機およばないでいるままのNO.2なんです。 DVDで受けたのはチーズケーキを二口で食べて出勤したキャゼルヌをみて二人の 令嬢がまねをしようとするとオルタンスが間髪入れずに「お行儀悪いですよ」とたしなめます。 それにびくっとするキャゼルヌさん・・・・・・。 やっぱり陰の実力者は違いますね。 |
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LadyAdmiral