日常と非日常のはざまで・3
2000時。 ポプラン家(アッテンボローの家でもある)に一人増えたポプランのことを「パパ」と呼ぶ5歳の幼児。 眠くなったようで彼の膝の上で舟をこいでいる。緑の眸が夢うつつになっている様子がうかがえた。 膝に抱いているからポプランも幼児の体温が高くなっていたのでそろそろ眠いんだなとわかる。 「おう。ベイブ。おねむの時間だな。寝るか。」と「パパ」がきくと「はい。」と赤目の金髪の少年はこくんと 頷いて自分の鞄のほうに向かった。どこまでもニコラ・ジーリンスキーの言葉は乱れない。夕方には風呂に 入れていたから幼児はパジャマ姿であった。けれど着替えは自分でした。・・・・・・5歳ともなればできるの だろう。今度は持ってきた洗面用具を出して自分ひとりで歯を磨こうとした。このこはたいていのことを一人で きちんとやってのける。アッテンボローは自分の少女時代はあれほどしっかりしていたか考える。 とても眠たそうにしているけれどきちんと荷物をまとめている。小さなトランクの中の衣服だってこの幼児が きちんと折りたたんで整頓している。 「おねえさん。」ちょっと困った顔になっている幼児がアッテンボローを小さな声で呼んだ。 やっぱり歯をみがけないのかもしれない。彼女の甥っ子は保育所時代まで母親である姉が 膝に乗せてみがいていた。きちんと磨いてやらねば虫歯になるからアッテンボローは微笑んで 返事した。 「歯磨きできないだろ。してあげようか。」と彼女はその赤めの金髪を撫でた。本当にポプランそっくりの 赤めの金髪。彼女の好きな髪の色。 「いいえ。みがけるんだけど、ぼく、せんめんだいのかがみがみえないから・・・・・・なにか台か、はこは ありませんか。のりたいの。」 ・・・・・・ああ。なるほど。 手を洗うのにもトイレットにも台はいらないが洗顔や歯磨きは鏡を見るからこの小さな背丈では今ひとつ 届かない。合点がいくとアッテンボローは物をおろすときに使う低い踏み台を洗面所に持って行ってみた。 最近では手が届かぬところは・・・・・・もっとも彼女は179センチの長身だから大体が届くが無理なところは 亭主が力を貸してくれる。といっても3センチの差なのであるが・・・・・・。 「この台ならどうかな。まだ低いかな。」と少年の足元に木の踏み台を置いてみた。 高さは40センチ程度で小さな段がついているから子供でも大丈夫だと思う。 「あ。みえた。おねえさん。ありがとう。ぼく、かがみを見ないと歯がみがけないの・・・・・。」とてれながら 小さな歯ブラシを使ってこれまた小さな歯を磨いている。アッテンボローはその様子を眺めていた。水色の パジャマを着て懸命に歯ブラシを口にして鏡を覗き込んでいる。風呂に入れたのはポプランだった。 そのときも自分で洗えるよとニコラ少年はいいはり、そして実現した。ポプランはふむふむと感心も したしあらい残しもないのでたいした子供だなと思ったそうだ。最近の五歳児は何でもできるんだなと 風呂上りアッテンボローと話したものである。 ・・・・・・それししてもかれこれ4分以上少年は歯ブラシをうまくつかって歯をみがいている。 普通の子供なら飽きてしまいそうなものなんだろうけれど。アッテンボローもポプランもその様子を じっと見ていた。 やっぱりしつけが行き届いているなと思う。 コーネフと話したとおり賢母でも22歳のミズ・ジーリンスキーは男と恋をして出奔したと考えるのはとても自然 である。 ・・・・・・自然だが違和感がこの少年のあまりのできのよさだ。 口をゆすいでも洗面台を汚さぬように気を使っていて歯磨きを終えるとティッシュで洗面台を一通り 拭き始めた。 「いいよ。ニコラ。それはあとでおねえさんがするからね。眠いだろう。もう寝ようね。」 と彼女は子供を制止しようとするが。 「ついたよごれははやくおとすと、おとしやすいよ。おねえさん。」と天使はきゅきゅっとみがいて終了。 あたりかまわず水を弾き飛ばす父親とは全然違う。しつけって大事なんだなと思うアッテンボローであった。 同じ血が流れているのになぜこうも父親と気質が違うのだろうとアッテンボローは首をひねる。 「・・・・・・あの子の母親はきちんとした女性なんだな。」 「・・・・・・記憶にないんだよ。」 ポプランは本当にソニア・ジーリンスキーの記憶がない。あの子が5歳だから6年前として。20歳のころ。 現在のソニア・ジーリンスキーの年齢は22歳だったっけと思うと。 ・・・・・・16歳の女の子に20歳の自分は何をああして子供までうませたのか・・・・・・・とやや背中に寒いものを 覚えた。できればこの事実は妻には気づかれたくない・・・・・・・。仕方がないけれど。 ポプランが寒気を覚えているころ。明晰であるはずのアッテンボローはソニア・ジーリンスキーと若き 撃墜王殿のあまりに早熟なラブ・アフェアは頭になかった。女性提督が思ったことはしつけの大事さ であった。彼女が生むとしたら間違いなくポプランの子供である。ならばきっちり小さいうちから しつけをしようと思い描くのである。彼女は自分が出産したらニコラ少年を模範にしようと思った。父親の ポプランのように歩くそこから散らかす子供になっては娘なら嘆かわしいし、息子でもガールフレンドや 嫁が気の毒になる。 「ぼくはどこでねたらいいですか。さっきのおへやでねていいですか。」ともう眠いのであろう。 まぶたがとろんとしている。長い歯磨きが終わり後片付けも少年はし終えた。 「坊主。こい。」とポプランは5歳児を軽々と抱き上げてやっぱりアッテンボローのベッドでないほうへ 運んだ。 「・・・・・・ほんと意地の悪い父親だ。」と女性提督は思う。 この寝室のベッドだって同じサイズだからかなり大きい。 ヤン家ではユリアンが使うベッドのサイズと同じである。 イゼルローン要塞の部屋の規格はやや贅沢で広めだ。こんな広い部屋に子供を一人で寝かせるなど アッテンボローには無茶に思える。まだ5歳の子供。 「やっぱりこの部屋じゃなくて三人で寝ようよ。五歳じゃまだ一人で寝るのは早いと思うよ。私が一人 部屋をもらったのは士官学校をでて少尉になってからだ。」 お前は深窓のご令嬢だからなとポプランは歌うようにいってニコラ・ジーリンスキーに聞いた。 「ニコラ・ハニー。お前男だよな。」 ポプランはベッドに腰を下ろして目線を幼児に合わせる。 「はい。パパ。」と「ろくでもないパパ」の訓辞をありがたく聞いている5歳児のミニサイズのポプランがいた。 「この部屋で一人で寝るのは恐いか。パパやおねえさんと寝るか。どうする。」と赤目の金髪を ポプランは撫でた。・・・・・・本当に自分の髪の色と同じだなと思いながら。大きな瞳の色もそっくりな 煌めく緑色。すんだ眸をしている。 「ぼくひとりでねむれるよ。ママときどきお外にお出かけしてたから、ぼくるすばんもできるよ。」 ・・・・・・なんだかソニア・ジーリンスキーの生活の一部を感じ取れる少年のあどけない一言であった。 余計なことを聞いた気もするポプランであった。アッテンボローも困った顔してポプランを見た。 おさなさと素直さからくる言葉ゆえに、二人にはそれがかえって寒々しい現実を思わせる。 夜一人で残される少年か・・・・・・。それは孤児ならば大いにありうることなんだがこの少年には母親が いる。仕事をしているのであろうか。いろいろと二人は考えるけれど・・・・・・。 「じゃあ。おやすみなさい。パパ・・・・・・・おねえさん・・・・・・。」 少年は大きな枕にうずくまってことんと眠りこけてしまった。 アッテンボローはそこからしばらく動く気持ちにならなかった。 ソニア・ジーリンスキーの生活はまだ推し量れないけれど、自分が少女だったころはうるさいほど人が回り にいた。丁寧な言葉を使わずとも赦してくれる大人がいた。ニコラ・ジーリンスキーには5歳でありながら それはない。 それがイコール不幸ではないにせよ彼女はしばらく「ポプランの子供」の安らかな寝顔を見つめては 起こさぬように、額を撫でた。コーネフが評するようにアッテンボローという人間は基本的にやさしい。 置いていかれたのだろうか・・・・・・。このかわいい少年は。 そう思うと少し悲しい気がする。そんな現実はあんまり受け止めたくはにが・・・・・・このこを育てる気持ちを 少しずつかためる女性提督である。 ポプランは耳元で「ともかくここをでて。あとでまた様子を見にこよう。ダーリン。」と妻を促した。 彼もじつは幼児が遠慮する様子や強がる振りを見せれば三人で寝てもいいと思っていた。 まだ5歳。言葉は自由に話せるであろうがやはり一人で寝付かせるのに苦労するのではと思ったし、 母親が不在というのは心もとなかった。けれどぼうやはあっというまに、夢の中。手がかからない立派な 子供だけれど。 ともかくあとで様子を見に来ようと「パパ」と呼ばれる撃墜王殿は考えていた。 後ろ髪を引かれるのはアッテンボローだけではない。ポプランの子供なのである。彼もとてもこの 少年のことを気にしている。 「枕と同じ大きさだな・・・・・・。体が。」アッテンボローは呟いた。 「最近の5歳児は一人で平気で眠れるんだな。電気も消しても大丈夫らしい・・・・・・。」寝室のベッドで アッテンボローは天井を眺めて呟いた。 「お前は何歳から一人で寝てた。「パパ」。」と隣で「民事事例集」なる本を読んでいる夫に声をかけた。 「・・・・・・おれはいくつだっけかな。5歳くらいだったと思うぜ。母親は家にいたけどな。」 「でも、「パパ」ぶりが身についているよ。オリビエ。」 彼女は彼が読書をするときに邪魔をするのが趣味である。一応ベッドに彼女も「シリアルキラーの記録」なる 本を持ち込んでいるが・・・・・・。本を読んでいる彼の頬にキスをしたり、ハグしたりと誘惑する・・・・・・している つもりだ。しかし割合本を読み出すとインテリな彼は・・・・・・もっとも自分がインテリだとは死んでも認めたがら ない男であるが・・・・・・誘いにのらないのだ。こうなると陥落するのが面白いと思うのがアッテンボローが 「いたずらっ子」から脱出できないゆえんであろう。 彼の額やこめかみに唇を這わせてみたり。首筋を舐めてみたり。耳元でささやいてみたり。 その程度じゃどうも彼女の夫は陥落できない。いろいろと話しかけても何せ頭の回転が速いので 本を手放さなくても彼女の質問には簡単に答えるし、話が成立する。 彼は新陳代謝が活発で頭脳が明晰なのだ。話はたしかに成立するが・・・・・・。 誘ってものってこないとなるとアッテンボローは割合コンプレックスも持っているので自分に 魅力が足りないのかなと思い始めて、憂鬱なラビリンスに入り込む。 「民事事例集っておもしろいの。」 「面白くはないが先々のことを考えたら読んでおく必要があるんだ。でも本を読んでいるからってお前を 放置してるんじゃないから存分にキスしてくれてかまわんぞ。」 ・・・・・・かわいくないなーとアッテンボローは視線がまだ文字に集中しているポプランを軽くにらんで みた。大きな枕を背もたれにしてベッドで読書をするポプラン。・・・・・・この姿、秘密事項なんだろうなあと 思う女性提督である。イワン・コーネフを普段「クロスワードにしか興味のないやつ。」と揶揄しているし、 読書家なんか恥ずかしいと当人は言っている。すっかり「民亊事例集」に負けた気持ちのアッテンボローは あっさりと陥落をあきらめて枕に顔をうずめ背中を向ける。 「赤ちゃん。ほしいな・・・・・・。」 何となく彼女は呟いてしまう。枕に向かっていったのでくぐもった声が彼女だけに聞こえた気がした。 一人でいるほうがいいなと思うときはこんなとき。 二人でいてさみしいなら一人の方がいいなと彼女はよく思う。それは屈折した感情らしく ポプランに言わせると過去の恋愛体験がよほど悪いということらしい。 自分の夫にに子供がいたこと。 たしかに衝撃でもあるし・・・・・・面白いことではない。 以前の女性との間の子供であれ妻として愉快ではない。 幸いニコラ・ジーリンスキーがポプランに瓜二つだから彼女はある程度赦せるのだろう。・・・・・・けれど 女性側に似ていたとなれば正直複雑だ。人道的な見地から「子供に罪はない」と言い聞かせて幼児と 接してきた一日。 これから始まる三人の生活。 自分も彼の遺伝子を持つ子供がほしいと願うのは何も軍を退役したいからではない。いつのまにやらどうやら 彼女は彼・・・・・・オリビエ・ポプランがとても好きになっていた。 愚かなほど好きだから「子供」が出現しても赦すしか道がない。それと幸いにやはりアッテンボローは恋に 関しては自己評価が低く情緒の安定にかけるけれど、家族単位になれば安定した性質であった。 母においていかれた5歳児がいれば、結婚していなかったとしても今日のように少年のために食事を整えたり、 世話をかいがいしく務める。アッテンボローは「他の女性が産んだポプランの子供」もかわいいと認識した。 彼女の母性は間違いなく現実として現れたし今後もおそらくそれは必要に応じて発揮される であろう。 ただ、他の女性が生んだ彼の子供でもこれだけかわいいのであれば自分が彼の子供を生んだらどれくらい かわいいだろうと考えずにはおられなかった。正式な結婚の話が出てからは避妊をしていないし、 健康な女性であるはずの自分はまだ懐妊の兆しがない。周りから赤ん坊をせっつかれることはないけれど できれば子供を望んでいる気持ちが強い。夫のほうはのんびりと授かるものはそのうちというし、彼女の 両親も姉もそういう。彼女自身もそう思っていた。けれど。 懐妊を望み悩む自分などつい先月は考えなかったのであるが・・・・・・人生とはわからぬことばかり。 たしかに考えてもせんがない。28歳の自分はこれからもまだ懐妊する機会に恵まれるであろう。 きっとポプランそっくりの子供を今日目の当たりにしたから、いささかセンチメンタルになっただけだ。 彼女も「シリアルキラーの記録」でも読もうかと思ったとき。 むぎゅっと体がのしかかってきた。心地よい重さなのであるがいまは少し憎らしい。 「・・・・・・民事事例集でも読んでおけば。あたしも本読むから。」 アッテンボローは私生活で不機嫌になるとときどき一人称が私ではなく「あたし」にかわる。 この主語を使うときの彼女はかなり機嫌がよろしくない。ポプランはそれをきちんとしっている。 けれどもご機嫌斜めの女というものはかわいいものだと基本的に「どこまでも気楽で楽観的」な 考えなので隣でペーパーバックを手にして活字の世界に入り込もうとするアッテンボローから やさしく本を取り上げた。すねた女というものは男に惚れているから大概すねる。 つまり彼女は彼に愛しているのよと知らずにアピールしている。ポプランはそんなこと心得ている。 「赤ちゃんほしいよな。俺たちの。」 「本でも読んでろ。知識階級者。もう赤ちゃんはいいよ。いずれ産まれる・・・・・・と思う。 そんなことに神経を使うと気が疲れるから考えたくない。本返せ。ばか。」 すねたダスティはかわいいなと男は唇を重ねてくる。「あたしだって読書したいんだ。邪魔するな。」と 少し唇が開放された間に息を切らしてアッテンボローは言う。 「機嫌直して。ダーリン。不機嫌でも美人は得だな。かわいいぜ。」とまた深く接吻ける。 「・・・・・・やだ。自分は本を読んでいるときには相手しないくせに人の邪魔をする。お前自分勝手だ。 そういうところはやだ。」 ともがくけれどアッテンボローがぐずりだすとポプランはとたん「彼女のへの愛情」が燃え上がる。 「ダーリン。・・・・・・ほんとお前かわいい。俺、本読んでるけどいろいろと考えて読んでるだけでお前が ほしい気持ちは全然変わらないんだから。こっちむいてダスティ。」と彼女の顔を自分のほうに向ける。 「このエゴイスト。」とアッテンボローはいう。「・・・・・・嫌い?」とやさしいキスを彼女のかわいい額に落とす。 白い肌。艶があってしっとりとしているし額はすべすべしている。頬にも唇を当てて。 じっと彼女の眸を覗き込む。 「・・・・・・。」嫌いといいたいのであるがいえないのがダスティ・アッテンボローの正直さとやさしさである。 「俺、お前だいすき。・・・・・・お前がほしい。」と今度は額ではなく唇に優しい感触。 なんだかくやしいなと思うけれど彼女も彼が恋しいのでじっとキスされるがままになっている。 「なんだか悔しい。」 「・・・・・・なにが。」ポプランはいかにも悔しそうに目線をあわさぬ腕の中のアッテンボローに 微笑んだ。わがまま放題が赦されるかなり得な女だと思う。彼女は過去の恋愛でそう男に 大事にされていなかった様子で、恋に関すればすぐ情緒の不安定を見せる。 昔の女との間にできた子供が現れても子供には寛大だったし男をなじることもしない。 そこは立派なんだが自分が読書すると彼女はどうも一人きりにされている気持ちがするらしく 適度に彼は彼女をかまわなくてはいけない。 けれどそんな手間はポプランにとっては戦闘機に乗るよりも楽しいことで心がうきうきする。 「だってあたしがキスしても全然その気にならないくせにそっちの気分で押し倒されるのってやだ。 あたしは本を読むんだってば。本返して。それがいやなら寝る。おやすみ。」と身をよじって シーツの中にもぐりこもうとする。おやおやと男は余裕で彼女を逃がさない。 付き合うまではよく彼女に逃げ道を与えていたが、ワイフにしたからには逃がす気は全くない。 「赤ちゃんがほしいといわれたら、その気になる。お前はおれがどんな集中力を駆使して本読んでたと 思っているわけ。・・・・・・惚れた女からああも誘われたら俺も陥落せざるを得ない。」額にかかる彼女の 前髪を掬って。 「・・・・・・民亊事例集よんでいたじゃん。インテリ。」 彼女はポプランの髪をいじる。ふざけて男はくちをへの字にする。けれど目が笑っている。 「それも俺たち二人のためなんだけど。ま、その話は後日として、お前がほしい。ほんと、冗談抜きで・・・・・・・。 それでもやなの?」 ・・・・・・。本当に罪な男だな、こいつって。 アッテンボローは細い腕を彼の首に回した。 「・・・・・・ちゃんとやさしくして。」 夏の太陽のような温かみのある金の髪にみとれてアッテンボローはささやいた。ポプランはやさしい笑みを 見せた。不機嫌な彼女でさえいとしいのだから素直な彼女はもっとかわいい。 「うん。すごくやさしくする。」とゆっくりと彼女におおいかぶった・・・・・・。 そんな夜の情事の幕間に音声通話を知らせる音が鳴る。 「こんな時間にかけてくるのはキャゼルヌのだんなのような気がするな。」 2330時。 ポプランはベッドサイドのテーブルの受話器に手をのばした。 「やっぱりだんなだ。あのね。いま子作り真っ最中なんですけど。種をまいているとこですよ。・・・・・・・。」 最初は冗談っぽい口調で応じていたポプランは途中からまじめな受け答えになった。 「・・・・・・それで全部わかりました。じゃあ坊やを連れてそっちに行きましょう。はい。了解です。だんな。」 なにやら会話を終えてポプランは電話を切った。 ったく子作りを邪魔する媒酌人ってのはなとぶつぶつ言いながらアッテンボローを抱き寄せていう。 彼女は上掛けを胸元まで引っ張りあげて体を隠す。 「坊やの母親が現れた。いま事務監の執務室にいるんだと。ま、あのひとも家庭があるのにこんな時間に ご苦労だよな。着替えて坊主を起こそう。眠っているのをかわいそうだがミズ・ジーリンスキーが登場した以上 あわせたほうがいいだろ。ダーリン・ダスティ。」 うん、そうだねと彼女は身支度をすばやく整える。 「お前ってさ。ある意味完璧なんだが玉に瑕は・・・・・・亭主にもきれいなヌードをあんまり見せないでさっさと 着替え終わるとこだよな。俺にはじっくり見ていい特権があると思うんだが。」 馬鹿なこといわないで。 「お前はさっさと何かはきなさい。いつでも大体がヌードでうろうろするお前がおかしいよ。」と文句を言い つつもポプランの着替えを手伝った。二人は坊やの荷物をまとめ、別の寝室でぐっすり寝入っている 5歳の男の子を真夜中に起こした。 本当は眠ったままのほうがいいのだろうが実の母親が迎えに来たならば起こしたほうがいいだろう。 パジャマのまま、まだ眠りから解放されていない天使をブランケットにつつんでポプランが抱き上げた。 少年の荷物はアッテンボローが持っていくことにして二人は「要塞事務監執務室」へ緊急に出頭した。 真夜中でもいい。 このこの実の母親が迎えに来てくれたのならこのこにとってそれはきっと幸せなことになる・・・・・・ そう信じたい気持ちの女性提督であった。 by りょう 4で落とせるようになりたい・・・・・。寝るときに話を考えたりするのですけれどね。でもいま我が家の話題は 1ディナールっていくらだろうねってことでした。この話は終わるのだろうか。終わるけど。 次回で終わらせたいです・・・・・・。 つか修正しどころ満載でした。はうっ。 |