日常と非日常のはざまで・4
2345時。 要塞事務監アレックス・キャゼルヌ少将と要塞駐留艦隊司令官ヤン・ウェンリーは二人のゲストを迎えていた。 そしてさらに半分眠っている幼児を抱きかかえてオリビエ・ポプラン少佐とダスティ・アッテンボロー・ポプラン 少将がその部屋に現れた。 ゲストの二人はソファから立ち上がって男は敬礼をし女は頭を下げた。 「ポプラン少佐、まことに申し訳ありませんでした。今回のこと申し開きのしようがありません・・・・・。」 ポプランは敬礼をしたスーツ姿の男の顔をしばらく見て・・・・・・。 「リンドバーグ伍長。5年ぶり・・・・・・いや、いつだっけか。俺は男のことは記憶に残さない主義なんだ。 だがお前さんのことはやっと思い出した。」と腕の中の幼児をリンドバーグという男にゆっくりと大事に渡した。 アッテンボローは伍長と呼ばれた男の髪の色と瞳の色を見て驚いた。 「おれのほうが男ぶりはいいんだが髪の色と目の色はお前とはほぼ一緒だもんな。二人ともパイロットスーツ 着て後ろ姿だとよく間違われた。昔。失礼な話だぜ。」 とポプランはアッテンボローに瀟洒なウィンクをした。 「・・・・・・ごめんなさい。ポプラン少佐。私、どう考えてもあなたを頼りにするしかなかったんです。 この子を預けられる人はあなたしかいなくて。あなたの子供だと偽りましたけれど・・・・・・間違いなく 彼の子供、オーエン・リンドバーグと私の間にできた子供なんです。」 あれま。 「・・・・・・結構自分の息子と思ってかわいがってたんだが。かわいい坊主だな。リンドバーグ。退役したん だっけ。お前さんは。」 ええと、アッテンボローから見るとややハンサムに見えるミスター・リンドバーグは返事をした。 「ハイネセンで家業を継がなくちゃいけなくて。それがいろいろと厄介な事態を巻き起こしたわけです。 男としての甲斐性を批難されても仕方がないです。」 その隣には小柄でかわいい容貌をしたソニア・ジーリンスキーらしい女性が立っている。 「ミセス・ポプラン、本当にごめんなさい。」 と涙目で言われたら・・・・・・アッテンボローは赦すに決まっている。ソニア・ジーリンスキーは金髪碧眼の 美人なのだから。 よくよくの事情があるのだろうと女性提督はこの状況でさて何を言おうか迷った。 「いや。ミズ・ジーリンスキー。とてもいい子だった。ニコラは。でもポプランの子供じゃないわけなのかな。」 はいと彼女はまた頭を下げた。 「全部私が悪いんです。軽々しい考えで動いてしまって。・・・・・・ほかにこのこを預けられる人がいなくて。 少佐とは・・・・・・ほんの少しお付き合いをしました。でもこのこは少佐と別れて半年後リンドバーグと交際を してできた子供なんです。」 「・・・・・・お二人は夫婦別姓なんですね。ニコラ坊やはジーリンスキーと名乗ってましたから・・・・・・。いや 私が口出しすることではなかったですね。失礼しました。」アッテンボローのくちからつい言葉がついてでた。 それが私の男としての不甲斐ないことなんですとリンドバーグという男がミズ・ジーリンスキーを見やりながら 答えを引き継いだ。 「とにかくみんな座って話しをしよう。・・・・・・短い話でもなさそうだからな。」要塞事務監はみなを席に着かせた。 本当の父親の腕に抱かれた少年は一度は目を覚ましかけたけれど眠さに勝てずに夢の中のご様子である。 天使のような愛くるしさ。ポプランとリンドバーグの姿かたちは後ろから見れば似ているような気がする。 女性提督は考えた。もっとも彼女の亭主のほうが幾分荒削りの容貌をしている気がする。 ヤンは宵っ張りだからこの時間さえている。といえどこのような問題であるから口出しは控えている。 リンドバーグという男が言うには。 オーエン・リンドバーグはかつてポプランと同じ部隊にいた。ポプランより1歳年少。その当時ポプランは 少尉ですでに若き撃墜王と評判の高いエリートパイロットであった。 リンドバーグは実家の家業を継ぐことになっていたから艦載機乗りではあったけれどいわば義務で兵役に ついていた。 自由惑星同盟には成人男子には兵役義務があり、三年すれば自由に退役できる。アッテンボローの父親も そんな口である。彼女の父親は兵役の三年を勤めてジャーナリストとして活躍した。 勿論三年だから退職金や年金はそれほど期待できない。 けれどリンドバーグには金の心配は要らなかったのである。 彼の実家はバーラト星域一の油田を持つ石油王。軍には相当なコネクションがあったから生存率の高い ハイネセン本部付け後方勤務も望めたが、リンドバーグは一度艦載機に乗ってみたかったので飛行訓練を 受けてスパルタニアンの人となった。 リンドバーグという名前の男はそらにあこがれるものなのかもしれない。 ソニア・ジーリンスキーは当時16歳。 基地周囲に住む民間人の少女で実に美しい娘であった。 美しい娘の前には当然のごとくオリビエ・ポプランは登場する。ソニアは生真面目でどちらかというとうぶで ポプランが手を出してはいけない部類の女性である。けれど若い撃墜王殿はごく自然に彼女を口説き 恋をした。ソニア・ジーリンスキーもまじめに恋をした。 しかしながら黙っていないのは傷物にされたソニアの父親であった。たしかにポプランは歴戦の勇士の 階段を駆け上がっていたりりしい青年であったが、不道徳な恋の履歴も更新中であった。 これは基地内でも、外でも有名な話だったので、たった一週間であったけれどかわいい娘と 若くてまさしく「質より量」のロマンスを重ねていたポプランと引き離した。 やや時代錯誤であるが彼女は父親に家に閉じ込められてしまった。 一方のポプランはそんな事情など知らないから自分がふられたと思ったので次の女性との恋を愉しむこと になる・・・・・・。 「おれでもポプランに娘に手出しだれたら娘を幽閉するな。けだものにくれてやるようなまねは父親としては 看過できない。若いころのポプランはもっと今以上に無分別で無節操で野獣だったに違いないものな。」 キャゼルヌ少将は遅い時間だったが従卒がみなに珈琲と一杯の紅茶を出したのでそれを口にしていう。 「・・・・・・そっか・・・・・・俺が嫌いになったわけじゃなかったのか。てっきり会ってくれないから俺は終わった んだなと思ってた。世の中の父親ってのは横暴だよな。」 など悪びれないでいうので「お前が娘でも持てば気持ちがよくわかるはずだ。」とキャゼルヌが釘を刺した。 「その半年後、私はソニアと交際を始めたんです。私は退役をして基地を離れるけれど彼女にプロポーズを してお父上に許しを得ました。」 石油王の跡取り息子だもんなとアッテンボローは夫を見て苦笑した。 「それならミスター・ジーリンスキーもご結婚に反対はしないだろう。・・・・・・でもそれだけ話が進んでいながら 苗字が今も違うのはなぜなのかな・・・・・・。」女性提督はリンドバーグと言うニコラの本当の父親に尋ねた。 「今度はうちの家族が結婚に大反対をしました。・・・・・・家業が家業ですし政府とのコネクションの関係上 どうも私にはその手の閨閥をあてにしていたみたいです。悪いことに私は一人息子で。・・・・・・最高評議会の 係累の子女を正妻に迎えたかったようですね。」 モノが石油だからなとヤンは口を挟んだ。 本当に政府と石油関係や軍需産業とのコネクションはすさまじい。 やがてソニアは懐妊をした。 それでもリンドバーグ家は二人の正式な婚姻を認めなかった。 不運にもソニア嬢はリンドバーグ家から認められぬ影の女とされていた。 「思い切って何か仕事を見つければよかったのですが温室育ちの私に仕事というものがなく・・・・・・もともと 家を継ぐための学業はしましたがその業界で働こうとすると必ず実家に話をつぶされました。赤ん坊も 産まれるし彼女のことも考えるとまだ若くて私は情けない男でしたし、実家が出す提案を 飲んだんです。」 ソニア・ジーリンスキーと婚姻せず、生まれる子供は非嫡出子とするならば経済的支援は約束する提案。 「ひどい話だな。」とアッテンボローが言う前にポプランが言った。 ええ、そしられて当然です。とリンドバーグは言う。 だが彼女も彼も経済的にとても困った状況に追い込まれていた。 リンドバーグが石油業界以外の他の仕事でもしようとすると一族の手が回り職場を追われた。 それは30回では利かなかった。ことごとく彼はあらゆる職種からはじき出された。先にリンドバーグ家が 彼の素行を調査して仕事にありつくと金を使って、解雇させてきたらしい。 彼は一人息子で跡取りだったがために一族の執念はすさまじかった。 石油王なのだし何も子供ができたといって正妻に迎える必要はないと彼の父親は言う。彼の父親には本妻の ほかに幾人もの女がいた。オーエン青年は子供のころからそのような父親がいやで、ソニアのような 生真面目でよい娘をただ一人の伴侶として迎えたかった。けれど産まれた子供と大事な女性を食べさせて いくために仕方なく二人は籍を入れなかった。 幾度もオーエン青年は愛する女性と息子を戸籍に入れたいと家族、一族に申し込んだが誰も聞き入れては くれなかった。 もう一度軍に入ろうと思ったこともあったがリンドバーグ家の影の実力は正当な後継者すら感知できぬほど、 政府と軍部上層部に深い関係を持っていた。 彼は再入隊もできなかった。 「恐ろしい話だねえ。」ヤンはため息をつき紅茶を飲む。 リンドバーグから移されて母親のミズ・ジーリンスキーの膝の上で眠っている子供は、そのような つらい因縁に巻き込まれていたのであった。 最初の三年はハイネセンでリンドバーグ氏は仕方なく家業を継ぎミズ・ソニアと赤ん坊であったニコラ坊やとも 暮らしていたが今度はなぜうちの一人娘を影の女にしなければならないとジーリンスキーの父君が二人の 「事実婚」に大反対を唱えてきた。 ソニア・ジーリンスキーは産まれたときからとても大事に掌中の玉のごとく貧しいながらも品格を身に つけさせて育ててきたのに、正式な婚姻を三年もたつのにしないのはどうしてだとお怒りになる。 「そらそうだろうな。俺でも怒る。子供までいるのに法的な夫婦になれぬとは娘が不憫だ。」 二児の女児の父親キャゼルヌは言う。 リンドバーグはお恥ずかしい話で、と先を続けた。 ジーリンスキー氏が言うことはもっともである。 リンドバーグ家が普通の企業であればここまでややこしくはならなかったのであろうが石油業界という さまざまなしがらみの多い分野のトップ企業であったがゆえにここまでひどい話になってしまった。 けれどオーエン・リンドバーグである以上リンドバーグ家から逃れられない。 他の仕事をしようとしてもようは先を越されてもみ消され結局、父の後を継ぐように追いつめられる。 実家で働いている以上は事実婚という形でもソニアとの生活は経済的に安泰であった。 けれどさとのジーリンスキー氏はそれが気に食わない。 当然といえば当然でまたも娘や孫を隠そうという出来事も起こりかねないと判断した二人はイゼルローン 要塞が陥落された年、民間人として要塞で居住することを選んだのである。 それでもリンドバーグ青年はハイネセンの家業をしていた。 リンドバーグ家の意向としては「オーエン・リンドバーグがどこにいようとどの女性と暮らそうとも、 家業さえ継げばとりあえずはよい。」というものだった。 事実籍は入っていなかったが親子三人この要塞で仲むつまじく生活をしていた。 ときおりリンドバーグ青年は仕事で首都星に帰っていた。その間はソニアと坊やとの母子家庭になる。 じつはニコラ・ジーリンスキーが自分の父親とポプランとをさほど違和感なく「パパ」と呼べたのは幼児の演技 ではない。 父親と接する時間があまりに少ないからであった。たまに会う父親は優しいし、だいすきな存在だが リンドバーグもポプランも同じ髪の色、同じ眸の色。スパルタニアンに乗っていること。幼児には区別が つかぬほど父とのふれあいは少なかった。 「・・・・・・なんだか聞いててつらいな。」とアッテンボローはいう。 「な。世の中にはいろんな事情で婚姻できない人がいるんだ。お前みたいに独身主義云々酔狂でおれの プロポーズを57回断る女は贅沢なんだぞ。ダーリン。」とポプランは彼女の頭を撫でた。 それが・・・・・・。 「屋台骨の父が倒れましてね・・・・・・。」 リンドバーグ青年は語る。 「そういえばそんなニュースあったな。半年前くらいですね。リンドバーグ氏が危篤だったとか・・・・・・。 でも持ちこたえられたと耳にしています。」ヤンはいった。 おかげさまで父はすんでのところで命は助かりましたと青年は述べた。 そんな父親であっても実の父親であるので彼は急遽ハイネセンへ帰ることになった。それが半年前の ことである。ソニアにわずかな現金を残して彼はハイネセンへ帰った。 「・・・・・・お前そんなにいい家の息子なのに持ち金がなかったのか。もしかして口座とかもリンドバーグ家が おさえていたとか。」とポプランは尋ねた。 本当に情けないでしょう。少佐の言うとおりですと青年は恥じ入った。 生活資金は潤沢ではあったけれどそれはリンドバーグ青年が生活費の必要額を見積もって申告をして 実家から出るものであり個人名義の資産を作ろうとすればまたも派遣されている調査員がそれを リンドバーグ家に通告して口座を凍結する。リンドバーグ青年がハイネセンとイゼルローンを航行する 費用は惜しまないで出されるがソニア・ジーリンスキーには余分な金を持たせないようにリンドバーグ 一族は考えて実行していた。リンドバーグ青年が自由に使える金も一族は掌握していた。彼から 金をなくせばオーエン・リンドバーグはあきらめて家業に専念するだろうという簡単な根拠である。 「ここまでするのはうちがあまりに政府と結託している「黒いファミリー」だからでしょうね・・・・・・。」と青年は 苦笑した。 「言葉は悪いがお前さんは子供と同じように保護者がいて、監視されているわけだな。オイルダラーの することは恐いものだな。個人の口座を凍結なんて。」キャゼルヌは呟く。 結局航路に着いたリンドバーグ青年は親元に一時帰り、その間父親の看病に努め仕事もしソニアへも 金を送っていた。 その個人的な金を作るのはそれほど容易ではなく送金もばれれば途中で回収をされる。 父親だけではない。ファミリーが総勢でソニア・ジーリンスキーに必要以上の資産を残さぬように目を 光らせていたからである。 一方でソニア・ジーリンスキーは夜清掃業の仕事をした。 22歳の若くて美しい女性の仕事ではないが彼女は性格や気質から、夜の世界ではとても自分が糊口を しのげると思わなかったのである。ちいさな子供を夜一人で残して働きに出るのは心苦しいけれど昼間彼が 起きている時間は一緒にいてオーエン・リンドバーグの息子として恥ずかしくない所作やしつけを重んじたし、 愛情もかけた。 22歳のソニア・ジーリンスキーは民間区のビル清掃業で息子を養育するための今後の資産の貯蓄をして いたのである。 男を作って出奔したのではなかった。アッテンボローはますますひどい話しだなと思う。 「でも急に小生の名前を使う羽目になったのはなぜでしょう・・・・・・。あなたどこへ行こうとして いたんですか。ミズ・ジーリンスキー。」 ポプランは勤めて紳士的に質問した。 いまこの場でミズ・ジーリンスキーを批難できるものはいない。 「ポプラン少佐がこの要塞にいることを広報で知りました。ご結婚なさったことも。・・・・・・はしたないことを 申しますけれど若いときの恋愛でしたが真剣でした。父が厳格であのように閉じ込められてしまいましたが 私は少佐のお人柄を信頼してましたの・・・・・・。」 ・・・・・・そこは何か間違っているよとイゼルローンのみなは思う。だが突っ込みを入れる空気ではない。 ポプラン一人、気をよくして頷いている。幸せなやつだとアッテンボローをはじめイゼルローンの人間は 心の中でため息をついた。 オーエン・リンドバーグはファミリーの監視のなかソニアに連絡を取っていた。けれどこの一ヶ月急に 連絡が途絶えた。当然事実婚であるにしろ彼女は夫が大事であるし連絡がないことは何かあったのだと 思った。急いでハイネセンへいこうと決めて、ためた貯蓄を航路代にあて残りを全部息子・・・・・・5歳の 息子に預けた。 二人分の航路代はないのである。 はじめはホテルに子供を滞在させようか悩んだ。けれどハイネセンへの航路は一ヶ月かかる。 往復二ヶ月もの間滞在できる余裕はない。といえど家においているわけにも行かない。家賃が滞る。 何度かハイネセンへいくのをためらった。いくだけの価値はあるか。夫に会えるのか。逡巡した。 けれど彼が心配である。リンドバーグ家にだめを承知で連絡も入れたが取り次いで もらえない。お金を借りるにしろ、そんな縁故のある人もない。親類縁者はみなハイネセンにいる。 業者に金を借りるのは彼女としては最後の手段にしたかった。 22歳の彼女は迷いに迷い、困惑してそのときにオリビエ・ポプランを思いだした。 「最初は要塞の事務局で市民の民生委員に相談するつもりもあったんです。けれど以前 そこまで苦しい事情があるならば、子供を施設に預けて新たな結婚なり人生を歩めばいいといわれた 経路が過去にあったんです。私はこのこを奪われては・・・・・・。」 ひどい。しかし役所の連中ならいいそうだとアッテンボローは思う。キャゼルヌも思う。 「要塞の事務局まで行くと少尉・・・・・・いえ、少佐のことを思い出しました。私甘えていたんです。それに 浅はかでした。6年前。ポプラン少佐と一緒に動物園でお会いしたとき小さな子供が転んで泣いていて、 その女の子が迷子だとわかって少佐は私の手を引き女の子を背負って一生懸命母親を探していました。 その時思いました。このひとをみなは遊び人だというけれど、本当は心の芯があたたかい人なんだわと・・・・・・ お慕いしたんです。この方に相談できないだろうかと思ったんです。そのときはご相談だけのつもりでした。 本当です・・・・・・。」 ・・・・・・それは大いなる若さゆえの美しき勘違いだとキャゼルヌは頭を抱えた。 ヤンも青春とは錯覚の連続であると思った。 ポプランは特別記憶にない。そっかといっただけできょとんとしている。・・・・・・彼は子供と女性には速やかに 「よいひと」になる。 でもアッテンボローはそんなポプランの姿を思い浮かべて少し微笑んだ。 ・・・・・・大いなる勘違いとわかっていても女性提督はオリビエ・ポプランが好きなのだ。 「事務局で並んでいるときに・・・・・・普段は親を困らせないこのこが泣き出しました。いつにない様子を 察したのでしょう。私も気が動転していました。そういう気配をこのこは読み取れるので私とはなれるのを 嫌がりました。5歳ですものね。ハイネセン行きなどやめて帰ろうとも思うけれど彼のことも気がかりで。 私はばかでした。つい魔がさして「いまからパパに会えるわよ」とポプラン少佐のことをこのこに父親と 思わせて自分だけ船に乗ろうと思ったんです。とても少佐に合わせる顔がないから逃げました。 ごめんなさい。私は卑怯でした。無責任で悪辣です。」 とうとうソニア・ジーリンスキーはうつむいて泣き出した。 この一ヶ月こらえたいたもの。 あるいはオーエン・リンドバーグとの生活の苦難などもこらえていたのか、りんとしていた彼女が 涙を流した。22歳。混乱するであろうし泣きたくもなるだろうなとみな思った。 「リンドバーグ。お前女性をこんなに悲しませて一ヶ月何していたんだ。馬鹿もの。」とポプランはきっと 青年をきつくにらんだ。声は静かだったが憤怒しているのはよくわかる。ここまで彼女を追い込んだのは 男に責任があるとポプランは本気で怒っている。アッテンボローはまあまあと隣で彼をなだめる。 青年はじつはイゼルローン要塞に帰る船の上にいた。 そして今夜要塞に到着したという。 偶然ソニアのほうはハイネセンへ行く船が欠航続きでポートで途方に暮れている姿を夫が見つけて ここに現れた次第であった・・・・・・。この夫婦に与えられた少ない幸運のうちの一つであった。 リンドバーグ青年の話によると・・・・・・。 半年前に父君が昏倒し、一命を取り留めたもののもう大きく身動きできかねる事態となった。 このこともありさらに大病をしたあとからくる気持ちの弱さからやっとソニア・ジーリンスキーと ニコラ・ジーリンスキーの入籍が認められた。それは父君が意識を失い青年の心のこもる看護を受け、 青年の勤勉振りを見て一ヶ月前ようやく和解成立を見たのである。 一族はまだ文句を言うけれどこれでリンドバーグ青年は無事家族を存分に扶養しそして妻とも息子とも 一緒に暮らせるのだと安堵した。 「そういう大事なことはすぐに連絡していれば奥方は無理な行動を起こさずに済んだのではないかな。」 とヤンはおずおずといってみた。 それが・・・・・・。 「この一ヶ月、銀河帝国から幼帝が亡命したことが影響して個人の超光速通信(FTL)に制限ができて 容易に本国からイゼルローン要塞へ連絡できない状態だったのです。今現在FTLはハイネセンからは 私用通信がコントロールされています。制限があるのです。・・・・・・こうなると船に乗るしかないです。 そして船も欠航が続いたので巡航艦に乗って帰ってきました。これはうちの家系の口利きで。でもやはり 軍の巡航艦からも通信できなくて。・・・・・・とても妻子が心配でした。」 くそっ。あのゴールデンバウムのがきどものせいですべてがたたられるわとポプランははいて捨てた。 本国の事情をしらなかったヤンは驚いた。 「それは以前のクーデターのような種類の言論統制ではないのだよね。」 「ええ。単にラインの数の問題です。政治が大きく変動して軍務、政治、業務、報道レベルの回線が増えて 個人レベルの回線の一時的な制御です。バーラトのほかの星ではないようですが首都星だけにあの騒動で 超光速通信がパンクしているようです。」 いやまいったなとヤンとキャゼルヌは顔を見合わせた。 そういう話はこちらにも伝えてくれないと困ると本国の人間のあほうな面構えがまたも憎憎しく黒髪の 司令官殿は思う。 「じゃあ。ニコラもあなたもリンドバーグの名前を名乗って家族三人で暮らせるのですか。」と アッテンボローはそちらに関心があったので尋ねた。 はいとソニア夫人とリンドバーグ氏は安堵したような笑みを少しもらした。 「まだ一族は政府の要人の子女を私の妻にしてさらに政府とつながろうとする連中もいるのですが 父の見方はある意味違ってきて。」 青年は言う。 リンドバーグ石油の現会長である彼の父君は、同盟政府の命数は尽きていると見ていること。 ゆえに政府要人の子女と婚姻をしたところでなんの商業的価値がないと見ていると。 今後の取引はバーラト星域と、フェザーンにあると・・・・・・。 「フェザーンか・・・・・・。リンドバーグ氏はさすがによく読んでいるよ。」 ヤンはため息をまたついた。 これがただの風聞であっても彼はため息をついたであろう。 けれどこれは石油という軍事とは切り離せない世界でトップにのし上がった現役石油王の見解だ。 ひょんな騒動ではあったが十分に確信的な情報をヤンはこの青年から得ることができた。 マシュンゴには重々ユリアンの身の上を頼むことにしようとも思い、彼の養子にもいくらフェザーンに行くときに 金持たせようか考えていたが・・・・・・こんな話を聞くと金がなければ十分に身動きが取れないのも事実 だと改めて痛感する。だからせめて自分の給料の半年分は振り込んで口座を作ろうと思った。 50万ディナール。 16歳のユリアンはその金額を見て驚くだろうがこの際これくらいはもたせぬと心配だ。 無駄に使う子ではない・・・・・・。 「じゃあ、三人無事に暮らせるわけだな。」とポプランがいうと母親の腕の中で夢を見ている少年が あどけない顔で眠っている。 「ポプラン少佐。本当にごめんなさい。ミセス・ポプランもひどく傷つけてお詫びのしようがありません。」 ソニア・リンドバーグとなる女性がまたも瞳に涙をためてアッテンボローにわびた。 女性提督は金髪の女性に弱い。 彼女は首を横に振って。 「ニコラは本当によい子でしたよ。あなたが現れなかったら私は母親になろうと決めていました。・・・・・・三人で 幸せに。」 と魅力のあるやさしい微笑で三人の親子に言った。 隣の夫を見るとそんな彼女をやさしい面持ちで見ていてくれていた。 二人の子供はまだ先になるけれど。 たぶん二人ともよき父と母になれるだろうとお互い信じた。ポプランはアッテンボローの手を握り締め、彼女は その手を放さなかった。 かくてユリアン・ミンツはフェザーンにある五大銀行のうちの一つの通帳を出発前にヤンから手渡された。 ユリアン・ミンツの名義で新設した口座には少年が驚く金額が振り込まれていた。 こんなに・・・・・・。 ヤン・ウェンリーは現在自由惑星同盟軍のNO.3に位置する大将閣下である。 彼の基本給の半分の金額50万ディナールがユリアンの口座に用意されていた。 先日の話もありヤンは急遽軍事制圧なり、市民クーデターなりが発生した場合ユリアンが無事に船を 調達して自分のもとに帰って来れる金額は少なくとも渡そうと思っていた。渡航費用がないとなると 動きようがない。それでは困るのだ。 政変は起こった。幼帝を自由惑星同盟は受け入れた。それにともなったさまざまな事象が起こりうる ならば、ヤンの手元で金をくすぶらせておくよりは旅立つ16歳の被保護者に持たせるのが得策であると 彼は考えていた。 たしかにユリアンがフェザーンにいくにあたり何を贈るのがいいかと美しき副官殿にヤンは臆面もなく 尋ねている。フレデリカ・グリーンヒルはヤンがユリアンの保護者であることを考えると儀礼的な贈り物 より実用に向くものがよいと判じた。 「じゃあ。金銭かな・・・・・・。」とヤンが呟く。 「ええ。閣下以外のひとからはユリアンは受け取らないでしょう。資金はあって不便ではありません。」と 柔らかな笑みとともにそのような返事が返ってきた。ヤンはこの年少の才媛の副官に忠告をえることは 恥ずかしいとは思っていない。大尉は常識も豊かで利口なのだからヤンができないことを 補ってもらうことに恥などない。副官とはそういう役割であってよいと黒髪の青年は思っている。 「いくら振り込んだらいいかな。大尉。」 そんな開けっぴろげな質問を過日ヤンはフレデリカに投げかけていた。それでも大尉は おじずに返答した。彼女は自分の上官がこちらがおじたり不安げな顔をするとよりいっそう 不安になるひとだと知っている。そちらが台所事情を言うならこちらも正当な進言をしてもよい と彼女は思っている。 「フェザーンの銀行にユリアン・ミンツ少尉の口座を設ければ必要に応じてあとで額面を増やす こともできますわ。閣下。口座を新設なさるとよろしいかと存じます。」と彼女は答えた。 さすが大尉だなとヤンは思いさて、いくら振り込もうかと思案していた・・・・・・。 最初は生活費程度の資金を考えていたのであるが結局リンドバーグ氏の話を参考にして額面を 増やしたのである。 一度はユリアンはこれだけの金額を受け取れないといったものの、ヤンは金は持っていて困ることは ないという。ヤン自身は要塞で暮らすにあたり大きな金額を必要としない。貯蓄もある。一応 みやづかいもしているから給料はきちんともらえるし危険手当、管理職手当てなどサラリー以外の 何かしらをもらっている。同盟政府さえ存続すれば。 そしてヤンは浪費をする才能がなかった。 ものさえしっかりしていれば値段は安価で十分な金銭感覚の持ち主だった。服装にもお金はかけないし、 プレミアやブランドにはこだわらず大量生産で十分であった。酒の味も安酒と高価なものの違いが わかるほど通でもない。 ヤンは自分が大尉から少佐になったとき給料が上がって古書がたくさん買えたのがうれしかった。 じつはそれまではさほど用兵云々に興味はなかった。 古代の用兵を歴史とともに学ぶうちに身についた結果が現在に至っている。 たしかに士官学校時代にも「補給」を考慮に入れた作戦で優等生の敗退せしめたが、彼の本来の 興味はあくまで歴史である。 古代史を鑑みれば戦争の歴史であり戦争で重要な補給を重んじたら、授業のシュミレーションで勝った。 エル・ファシルで民間人を避難させたことがきっかけで少佐になった。 そしてびっくりするほどサラリーが上がって、古書を買いあさる。 結果よりいっそう戦史に詳しくなったのであった・・・・・・。 大佐時代には子供ひとりを養育するくらいの余裕もあった。 彼がほしがったのは蔵書の類だけで、生活用品や家具は最低限あれば文句はない。 そしてその蔵書さえ廉価版でもよかったのだ。初版などこだわらない。 こんな性質だからイゼルローン要塞にいればそう金も使わない。 アッテンボローに食費を渡すにしろあちらも別にいらないという。二人分を三人分作るところで それほど金額が変わることはないというのだ。おまけにヤンは少食気味だから少しは食生活が 大事である意識を上官殿にこの際味わってもらいたいと思う女性提督であった。 かくてユリアンの留守中は食事はミセス・ポプランが世話をしてくれる。 掃除や洗濯はマダム・キャゼルヌが引き受けてくれた。 心根の優しい後輩の女性提督は上官の朝食までサービスをしてくれるといってくれた。 もっとも上官が男である以上彼女の悋気もちの夫はデリバリーをさせるのを嫌がったので運んでくるのは その夫ということになる。「ワイフを朝から男の一人住まいになぞやれません。」 最近女性提督に朝起こされっぱなしの少佐であるが、こと女房殿のことになると早い起床など どうと言うことはない。 起床時刻0700時にはオリビエ・ポプラン少佐が「しかたなく」朝食を持ってヤン家にいく。 そして仕方なくおこして食事はおいて帰る・・・・・・予定である。 0900時に執務室に現れない場合はフレデリカ・グリーンヒル大尉がヤン家に迎えに行く ことになっている。 ・・・・・・これではさすがのヤンもいったん朝は往生際をよくして起きるしかない。 どうせ彼は仕事時間中昼寝をしてもよいらしいので公園のベンチで昼寝をすることで 睡眠バランスを整えればいいと思っている・・・・・・。 誰の人生でもない。ユリアンの行き方はユリアンが決めればよい。 そのためにも金は要るのだ。そして豊かな見識も。 ユリアンがフェザーンで何を見聞してくるにせよヤンの一番の心配は少年の無事故であった。 出発日にはミンツ少尉、ならびにメルカッツ提督の壮行会を行なった。二人ともともに目的は違えど ハイネセンへいくのだ。青年はそこからフェザーンへのたびに出る。勿論ハイネセンではヤンから じきじきに預かった「親書」をビュコック大将に手渡す任務がある。 式典は嫌いでスピーチも2秒で済ませるはずのヤンが「政府の強い希望により」というくだりを 幾度も使ってくどいスピーチを終えた。式典ではシャルロット・フィリスが花束を贈呈して幕を閉じた。 花など贈ったところでとヤンの幕僚もヤンも「つまらない」と不平を並べたが簡単な形式は必要であると ごく簡素にフレデリカ・グリーンヒルは花束贈呈を式典の中に取り入れることをみなに 納得させた。 結局ヤンはユリアンにいろいろと話したいことはあったけれど胸にこみ上げる思いを言葉に できないまま青年を旅立たせた。人間、心に思うことの半分もなかなかいえないものだなとヤンは 思いながら送り出した青年の無事を願う。 オリビエ・ポプラン少佐がユリアン・ミンツ少尉に「避妊具」を贈ることを ダスティ・アッテンボロー・ポプラン提督に考案して言うと「壮行会の品位が下がるから却下。」と あっさり言われた。 ある日の二人の寝室。2240時。 「ユリアンが今度パパになったらどうするんだ。ダーリン・ダスティ。ヤン・ウェンリーや ミス・グリーンヒルで何とかできると思うか。」と抗弁したが。 「ユリアンとお前は性格が違う。女性や恋に関しての道徳も違う。本当に恋をすればフェザーン なら物がたくさん売られている国なんだ。そういうものは自分で調達させろ。反論あるか。」 と女性提督は理にかなったことをいった。のでオリビエ・ポプランも納得せざるを得なかった。 彼女はペーパーバックを珍しく読みふけっている。といってもポプランはいつも思うのだが彼女ほど 特に努力をしなくてももとから頭のよいひとがなぜこうも生産的でないホラーだの猟奇的なものを 好んで読むのか不思議であった。大きな枕を背もたれにしてときどき「へー」「そっか」など感心して 読んでいる。彼は「民事事例集」をお読み終えて「民法物権」を読みつつ隣のアッテンボローを ちらちらと見ていた。あのまずすぎる射撃と空戦シュレーター以外の科目を「授業だけ」でのきなみ Aの評価をもらえる頭をもっと有益に使ってほしいなと思うときもあるけれど・・・・・・。 彼が民亊などの本を読むきっかけは戦後自分が何を生業にして女房殿を食わせるかであった。 できれば飛行機に携わる仕事はもう結構だから彼の父親を見習い法律で食べていけないかと 民亊から彼は勉強をしていた。ポプランの父親は三年の兵役の間艦載機に乗ったが、やめて 法学部の教授になるほどの人物だったと聞いている。教授になれるかそれはともかく オリビエ・ポプランは愛する夫人を法律で養えないであろうかとしばしば思っていた。法曹界のどの 仕事をするかはまだ考えていない。 つまりは彼の読書は彼女のための時間である。彼の頭の中には常にアッテンボローという 女性がいる。そしてそれは彼にとって幸せな重さなのである。 けれどまだその分野で食べれるのかわからぬうちは何もいえぬ。 そこで彼女はひとり置いていかれた気持ちになりすねる。 でも彼の頭にはすでに戦争後のポプラン家が常に念頭にあり、彼の思う青写真には家庭で 編み物をしたり子供をあやすアッテンボローがいる。彼女がよい母親になるのはよくわかる。 できれば自分が働いて彼女には家庭を居心地のよいところに整えることに没頭してほしい。 オリビエ・ポプランは古い男ではないからアッテンボローが家庭に入るのはいやだといえば仕事 をするのもよいと思っているが、とうのアッテンボローはじつは家庭に入りたい女性であった。 自分が彼女にとってよき夫であれば彼女はより以上のよき妻になる。 それは結婚してわかった。坊やと接している彼女を見るとあの子が自分たち二人の子であれば どれほどよいだろうと幾度も彼は思った。 彼女はよき妻であり、よき母にもなることがポプランには簡単に予測できた。そして確信している。 今回の「ちいさなポプランの息子」騒ぎであるが、さほど大きな騒ぎにならなかったのは 一日のうちに解決を見たことと、実際蓋を開けるとあの小さな天使はオリビエ・ポプランの 子供ではなかったこと。女性提督が子供の有無に全く頓着せず慌てもしなかったこと。 ここまでは公の話である。 隣で猟奇的分野の本を読みふけっているアッテンボローを眺めて思う。 ちゃんとポプランが食べる大人の食事と坊やの食べる子供用の食事を作りわけ、洗濯物を洗い 風呂から上がった坊やに風邪を引かせぬようにさっさとパジャマに着替えさせた。 大体は一人でできる5歳児だったがアッテンボローは半日「おねえさんだけれどママ」であった。 あのまま母親が出てこなかったらあの坊やはポプラン家の第一子になったはずであった。 ポプランと過去の恋人との子供ということはあまり大きな問題でもなく・・・・・・よほどポプランが 「民亊のお勉強」をしていることの方がアッテンボローにはご不興であった。 「なに。さっきからこっち見て。」と本から顔もあげずに言う彼女。 ・・・・・・たしかに本から顔をあげてもらえないのはさみしいという気持ちは理解できた オリビエ・ポプラン少佐であった。「いんや。なんでも。美人が本を読む姿はきれいだなと。」 「ほざけ。」彼女は本に目線を落としたままくちの端だけをあげて微笑んだ。 女性提督は件(くだん)の天使を非常にいとしく思っていたのでじつは坊やがいなくなって少しさみしい 思いをしていた。 坊やは実の両親の元に戻れた。そして実の両親は坊やをやむをえない理由でひとりにしてしまったが 愛情を十二分注いで育てているのもわかった。あの三人はこれから幸せに暮らすであろう。 万事めでたいと思う。 それでもあのちいさな赤目の金髪の幼児の存在で女性提督は母性を自覚した。 そんな女性提督をちゃんと夫の少佐は見ていて本を取り上げて隣の彼女を抱き寄せた。 「大丈夫。俺たち二人の間にも子供がいつか生まれるから。俺種無しじゃないって医者に 見てもらったことあるもん。」とアッテンボローをやさしくいう。 「私がとしまだからかな。ときどき男になるからだめなのかな。軍医は関係ないって言うけど。」と 女性提督が幾分物憂げにいうので夫はやさしく言う。 こどもは授かるものだから、時期など誰もわからぬということだと。 「あまり気をもむな。かわいそうになる。お前は十分すぎる女房殿なんだから。何も悲観しなくていい。」 ポプランのぬくもりを感じて。そうだよねと女性提督は彼に微笑んだ。 「お前さえ満足してくれればいいや。あまり気にしないことにする。」 すなおに言って安心してポプランに体重をかける。幸せな、甘い重さ。そして彼女のひとの心を 和ませる笑顔。いとしいなと思う。 彼は彼女のその微笑が何にもまして自分を幸せな気持ちにさせることにまた改めて気がついた ので、これまでより以上の愛情をアッテンボローに注ごうと決めるのであった。 あまり彼女をすねさせないで「お勉強」の工夫をしようとも思うし。二人の将来のためなんだけれど 彼女が甘えるのは大いに赦せるポプランである。 ・・・・・・やはり彼女ほどの女性はいないのだから腕の中のアッテンボローを大事にしようと 心の中で誓った撃墜王殿でありました。 fin by りょう そっか。石油と軍事はつながっているよねと自分で書いてて納得。 フェザーン出発が終わったから次は・・・・・・艦隊戦の前に何か砕けた話を。ヤンの基本給は年間100万 ディナール。らしいです。DVDでは。パイロット一人養成するのに300万ディナール。 1ディナールはいくらなんだろうなー。 |