いくつかの空・2−ヤン提督のひとりごと-
みなは私が「アルテミスの首飾り」にどう対抗するかを心配しているようだが あれは破壊するつもりでいる。 徹底的にあっというまにこの宇宙から消し去ってみよう。 あんなハードウェアがあるから救国軍事会議の連中は、首都星を守れると 思っている。 よくないことだし、気に入らないな。 ぶっ壊してみよう。 いろいろと考えたが、せいぜいド派手に壊すのがよさそうだ。 私の一番の悩みの種は考えたくないことだが、ハイネセンの人民を人質に 取られること。 グリーンヒル大将はそんな非人道的じゃないことはなさらないと願いたいが・・・・・・。 大将が軍事会議の議長になられたことからして、計算はまま狂うものだと はらづもりしないといけなかろうな。まったく。 みなは信用しないだろうが。 やむをえまい。この際私は悪役になってもかまわうものか。 きれいごとはこの際、言ってられない。 どうせひとは私の思うように私を見てはくれないし、そもそも私の名前がつけば 何もかも通ってしまうこと自体、恐ろしい。 バグダッシュを部屋に呼ぶと、ユリアンの姿がないのを安心したらしい。 私に銃口を向けたところをユリアンにみられて銃殺されかけたのが よほど堪えたんだな。この男が戦々恐々としているとは。 あの子はいつのまにかあんな真似ができるようになったんだろう。 まいったな。 軍人になどしたくないのだが・・・・・・。 で、用件をバグダッシュに言うとやはり私は悪者扱いだ。 信じられないのも無理はない。 今回のクーデターは「ラインハルト・フォン・ローエングラム侯のシナリオ」が 存在して、それに見事踊らされた同盟の軍人が起こしたものだということ。 正義などないし、国や人民を憂えて起こったものではないと惑星ハイネセンの 電波に乗せて放送する。その証人兼スポークスマンに、あのバグダッシュを 私は使うことにした。シェーンコップでも信じないだろう。 いいさ。証拠はないが私はしっているんだ。 ローエングラム侯。 門閥貴族を掃討するお国合戦で手間を取っているやっこさんは今、同盟が 一枚岩で攻勢をかければ瓦解する可能性が大きい。 そういう危機感があるからこそローエングラム侯は、自由惑星同盟に ひびを入れたのだ。 きっと私はみなに恨まれるだろうがこの放送がハイネセンで人民や連中の 耳に入れば救国軍事会議の存在に疑問をいだかざるを得なくなる。 そうすることで組織の弱体化を狙う。 8月にバーラト星域付近まで侵入して布陣をしく。 軍事目的だけではなく、政治的にも効果があるはず。 ここからハイネセンへは艦隊なら指呼の間。それだけ近くに私は陣を敷いた。 つまり救国軍事同盟は、バーラト星域すらもその力で支配することができない。 我々が侵入したということはそういうことだ。 そして同時に宇宙での機動部隊をすでに持たないことを意味する。 案の定、救国軍事会議に旗色を示せなかった連中が義勇団の結成まで申請している。 各地から警備隊やパトロール隊、退役軍人がその義勇団とやらに参加して我々と 同士として戦いたいとの希望は、ありがたいやら困るやらだ。 民間人になった人間に戦闘参加してほしくないのだがな。私には気が知れない。 私なら退役したら戦闘などごめんだな。 年齢制限でもつければ少しはましかと思えば、義憤した人々の士気はたいしたもので ご老人が年齢を偽ったり、若者がユリアンを見てあんなこどもが参加しているのにと 悶着が起こったらしい。 グリーンヒル大尉がいうには係官に食ってかかる市民もいて、義勇団参加選別のようすを 苦笑して教えてくれた。 クーデターを支持していた者たちも離反したりで、効果は絶大だ。 これなら計算したとおり。 日和見主義とムライは言うけれど私だってただの軍人だったら、さてどちらがいいものか 判断に困っただろうし、形勢有利なほうについてしまうだろうな。 それが人間というものじゃないのかなと思う。 動かざる不退転の信念なんてもののほうが私は空恐ろしい。 ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムなど確たる、強い信念の持ち主であった。 おぞましい限りだ。 クーデターを起こした救国軍事会議のみなも「よりよい政府をしく信念」のもと 民衆に大きな犠牲を強いたではないか。 自由惑星同盟・首都星ハイネセンをはじめて軍事侵攻するのは なんと銀河帝国ではなく、この私。 ヤン・ウェンリーという男になってしまうわけだ。 笑えない。 ユリアンは賢い子だから私のこの冗談にもならない冗談になぐさめなど 言わなかった。 帝国に進攻するときはユリアンが大人になってからにしてほしいというが 冗談じゃないよ。私はそのころには年金で暮らしている。 銀河帝国の攻撃はお前に任せるよと、それこそ冗談を言えば、 じゃあ、僕、軍人になってもいいんですねなどとにっこりと微笑んで返してくる。 だめだよ。ユリアン。 隙のないこだなぁ。うかつなことは口にできない。 さて。アルテミスの首飾り。 このハードウェア。 惑星ハイネセンを守る12個の軍事衛星。 救国軍事会議の連中はこれがあるかぎり私が手をこまねくと思っているだろう。 そんな「信仰」は劇的に破砕しようじゃないか。 おもいきりぶち壊したほうがいいのだ。後日の備えなどこの際、不要だ。 「首飾り信仰」を破壊すれば、救国軍事会議の息の根を止めることもできる。 だからこそ徹底的に壊す必要がある。 アルテミスの首飾りへの攻撃をみなと会議でつめようと副官の大尉に会議の準備を促すと どうやら彼女はこの軍事衛星での我らの甚大な被害を恐れている様子だった。 首飾りを破壊するに当たり船の一隻も、人命のひとつも犠牲はないよといっても なんの救いにもならないな・・・・・・。 青年アーレ・ハイネセンは大きなドライアイスで船を作り、銀河帝国の圧制を逃れ、 このバーラト星域にあたらしく自由惑星同盟を建国した。 この船は、寒冷の惑星で子供が氷の船を作って浮かべていたことから 青年ハイネセンは啓示を受けた。 共和政府を建国するにあたりひとびとを新しい星に運ぶ船の材料を青年は日々黙考していた。 その惑星からは無尽蔵にドライアイスを採取できた・・・・・・。 300年前。 その故事に習うことにする。 バーラト星系第六惑星シリューナガルに我々は途中に寄った。 この星はいわゆる氷の惑星だ。 ここから首飾りと同じ数、12個の氷解を切り出した。ひとつの氷解の質量 約10億トン。(計算が楽な数字にした。) 宇宙空間でこの氷の塊がとけることはない。 宇宙は絶対零度、-273.15℃だ。 そこで塊の中心に穴を開けてそこにジェット・エンジンを取り付ける。このエンジンをつければ 無人操作ができる利点がひとつある。まだ利点はある。 これらのジェット・エンジンは前方に磁場を投射し、イオン化されて荷電した星間物質を からめとる。 星間物質は核融合の反応条件に達して、よりはるかに巨大なエネルギーを 後方に噴射する。これで推進力が増す。利点の二つ目。 無人のまま光速に近づきやがてスピードを増す。アインシュタインの相対性理論を考えてみればよい。 光速に近づくにつれ、物質の質量は増大する・・・・・・。 亜光速、より光速に準じる速さに達する氷の無人ジェットエンジンつきの氷12個。 ハイネセンの引力に引かれて速度をますます上げる。 10億トンだった氷の塊は亜光速で進むうちに星間物質を吸収しながら 計算すれば質量、2230億トンにも増大する。 これがアルテミスの首飾り12個それぞれに同時にぶつかるのだ。 無人同士、無血で首飾りを破砕する。 氷塊は光速にちかづけば質量を増す。物質自体は水素と酸素の化合物。 だがそのスピードと質量に首飾りのコンピューターは「攻撃」とみなし 迎撃のビームを発する。 だがその熱程度では数メートル半径の穴があく程度。逆に熱が災いし水分が蒸発して ビームの熱を奪い取る。ビームを無力化する。 シェーンコップは全部壊すのかと聞くが。 いろいろと首飾りを無力にする方法は考えたが、もっとも派手な方法をあえて選んだんだ。 昔からアルテミスの首飾りという代物は嫌いだった。 これがあるから首都星だけでも死守できる。 そんな勝手な思い込みを瞬時に首飾りを木っ端微塵にするからこそ、救国軍事会議の失敗と敗北を 完全に示すことができる。 私は武器としてだけでなく救国軍事会議のよりどころを完全粉砕したい。 人には言わぬが、実は私は怒っているのだろう。感情論だけで今回の作戦を 考えたのではない。それでも怒りがないかといえばうそになる。 実際は緻密な侵入角度などの計算の修正などが必要であったが、結果は上々。 首飾りは一瞬のうちに大きく光を放って、消えた。 こんなものに人命の犠牲など払えるものか。くそくらえだ。 ヒューベリオンのブリッジでその破砕の様子をみなが息を呑んで見守っていた。 首飾りの破片はきらめき、宇宙に雪が降るかのごとく。 これであちらさんも、もうやめてほしいな。 理想に燃えて参加した革命だったであろうけれど、よりよい政治体制をつくろうと 集まったにせよ、言論の自由を統制したことは、いかなる政治体制をも批判する 資格などない。 政治の腐敗は政治家が賄賂をもらうことをさすのではない。 それは政治家個人の腐敗で、それを民衆が弾劾することが許されない 状況にある。現に「言論統制」で市民の口をふさいだ。武力で。暴力で。 これは民主政治においても人道的見解からもおよそ赦されることではない。 グリーンヒル大将が自殺されたことをエベンスという軍人から敗北を認める 通信の中で我々は聞いた。 私の隣でフレデリカ・グリーンヒル大尉が体をこわばらせている。 こんな結末をどこかで予測していたのだろうな・・・・・・。私は・・・・・・。 民主政治を清浄化する? 救国軍事会議は民衆に支持を得ぬまま発足し、あろうことか市民を虐殺もし、 権力と暴力で市民の自由を奪った。 どんな理想があったにせよ、名誉を賭けようが生命を賭けようが許されることではない。 エベンスは私の言葉に、生命をとした革命であった。名誉を賭けていた。利己のためではなかった、 と反論して通信をきった。 スクリーンは灰色になった。 おそらくは自殺を図ったのだろうな。 生命を賭けていればどんな過ちでも愚かなことをしてもいいというのか。 市民の自由を奪った。 この一点で逆に、絶対に赦せるものではないと思う。 ひと、それぞれの正義。表面そうつくろっておく。 だが、私は赦せない。 シェーンコップ准将に上陸部隊を編成して準備を指示した。 彼女は・・・・・・。 大きな目から涙をとめることもできず二時間で自分は立ち直るから、時間をくれという。 気を落とさないように、か。私は間抜けなことを彼女にいったものだ。 出会ったとき、もし私がもう少しダンスが上手で彼女の足を3回も踏むなんてどじをしなければ、 私は彼女への気持ちを隠さなかったであろうか。 君を好きだったといえただろうか。 ジャン・ロベールと2人でダンスをする彼女の笑顔を見ると、気後れしてしまった。 光をすべて集めたような輝いた微笑。柔らかな笑顔。 ひかれたものの、私は口をつぐんだ。 ラップと婚約をした彼女はとても美しくて、幸せそうだった。心から祝福をした。 「あなたはどこにいます?」 戦没慰霊祭でトリューニヒトを目の前にして喪服で弾劾した彼女。 憂国騎士団に襲われてもなお婚約者の死を悼み平和運動に身を転じて 議員となった彼女。 私のように戦争を生業にした男は、どんなに彼女を思ったとしても 彼女とともに生きることは赦されることはない。振り返ってあの日にかえって もう一度すべてをやり直せたらと願う気持ちも、空しい。 軍人の手によって彼女は殺された。 彼女はそのこころと、言葉だけが武器だった。他には何も持たなかった。 そんな彼女が、あの美しい面影も失うほど殴られ、殺された。 君には私は何の償いの手段も、資格もない。私は戦争屋だ。 いかに無血上陸を果たそうと私は大量殺戮者であり、軍人であり、戦争屋だ。 さようなら。ジェシカ。 ごめんよ。ジェシカ。 ムライ参謀長はまだクーデターの残党がいるかもしれないから私が上陸して 単独行動をとることを、憂慮してくれるがユリアンをつれて早速ビュコック大将のもとに うかがった。お会いすると思った以上にお元気であられたことが何よりだった。 もちろんずいぶんと不自由なめにあわれたことだろう。 4ヶ月も拘禁されていたのであるから衰弱は隠せないが、ともかくご無事で なによりだ。 個人的所感で申し訳ないが、統合作戦本部長代行の身の上はそれほど憂慮していない。 私は偏った人間だし、十分それを自覚している。 やはり、グリーンヒル大将をお救いするのはかなわなかった。 正直、私にはその手段は見つけられなかったし自信もなかった。 さて。上陸はした。討伐もした。 宿題が残っている。 救国軍事会議生存者の逮捕。 クーデターの失敗と憲章秩序の回復をバーラト星域全土に広報すること。 被害状況の掌握と死亡者の検死報告書の作成・・・・・・。 グリーンヒル大将は眉間に銃創が見られたとシェーンコップが報告してきた。 そんな見事な自殺があるか。・・・・・・もう言うまい。 私が口にすることではない。 これらの山積みの仕事も、二時間、おそらくはお父上の死をいたんだと思われる 副官殿は流れるように次々と片付けてゆく。 仕事があるほうが彼女のこころがまぎれるのであろうか。 この4ヶ月というもの・・・・・・。 いつも私の隣で彼女は明るい瞳を輝かせていたはずなのに、肩をおとし 罪にさいなまれていた。それを見せまいと努力しているのが私でもわかるのだから みな、わかっただろうな。 彼女にはなんの罪もない。咎などない。それでも明るい眸にかげりが見えていた。 母君は病没されているので、彼女も一人になったのか・・・・・・。 顔や肩周りなど、少し小さくなった気がするのは・・・・・・。きっと気のせいじゃない。 戦勝パレードか・・・・・・。 舞台裏とは、かくありき、だな。 とにもかくにも仕事は恐ろしいスピードで片付く。次々私はサインしてそれですむ。 パトロールにでていたシェーンコップ准将からユリアンがある人物を発見したと 耳にした。 ヨブ・トリューニヒト。最高評議会議長。 このクーデターの間姿を隠していた彼は、めざとくユリアンを見つけて声をかけたというのだ。 「ヤン提督の養子のユリアン・ミンツ君だね。」 ユリアンが目をつけられたなら私が無視するわけにはいかないな。 みやづかいのうちだと、元首の官邸に地上車を走らせて訪問した。 どうも話ではこの騒ぎの間「地球という聖地奪還のための聖戦」とこの戦争を支持している 地球教という宗教団体の地下組織にかくまわれていたらしい。 ビュコック大将と話し合いをした公園の近所で行進していた団体だと思う。 この戦争がなぜ800年も前に人類が捨てた発祥の地、地球に関係するのか 私には理解できないのであるが、トリューニヒトは地下組織で日々救国軍事会議を 打倒すべく「努力」をしていたという。 恐ろしいのはこの男は二流の「顔だけの政治家」ではない・・・・・・。 そんなビジョンがよぎった。 「地球教」・・・・・・。どちらがどちらを利用しているのであろうか。 あの惨めな敗戦アムリッツァでも同盟は大きな打撃を受けたが、この男はいまもなお現に 無事でいる。無傷だ。 今回だって・・・・・・死んだのはジェシカやグリーンヒル大将だったではないか。 市民とローエングラム侯の脚本で踊らされていた軍人たちではないか。 この男は無傷だ。 トリューニヒトは地下に潜伏して事なきを得て、後日「軍国主義勢力に対する民主主義の勝利の式典」で、 使い古された「自己犠牲をもっての祖国愛」をうたったスピーチを晴れがましくぶちかましている。 民主政治の代表である最高評議会議長は軍部との関係修復の意味も込めて 私との握手を求めた。トリューニヒトの人好きのする笑顔は要するに、 民衆の面前で私たち2人が握手をすることは、軍国主義が圧制をした忌まわしいクーデターから、 祖国が解放されたことを示すアクションである。ゆえに、お互い笑顔でそのプロパガンダにはげめ、 ということらしい。 政治宣伝! 出世などするものではない。 やめてやろうかと幾度も思った軍人家業。ようは「常勝提督」という名札がよくないわけだ。 負ければいいんだ。 などと実行できるものでもない。勝てば多くの敵を殺すし、負ければ多くの味方を殺す。 戦う以上は勝利するほかない。でもどのみちやはり宇宙の戦火を鎮めることもままならない。 人間が自己の幸せの権利を放擲してまで、守るべき国家などないんだ。 そこまでしなければ滅ぶものなら、滅んでもいい。 そこまで思っていても結局はまたもこの男にヤン・ウェンリーは、利用される・・・・・・。 選挙権を得て人々は政治手腕や業績ではなくこの、人好きのする笑顔に票を投じてきたのだ。 私はこの男を信用したことはない。 いつも自分の票は政治を監視して投じてきた。 今回、市民の権利を守るためにたたかったのはジェシカだ。 だが彼女はこの世のどこにもいない。暴力で圧殺されたのだ。 「プロパガンダ」のため私は、おおくの民衆の前で手を振る。 歓呼の声が上がる。 でも、ヤン・ウェンリー。 なくしたものの大きさを考えろ。そしてこの男と決別して手を振るのをやめろ・・・・・・。 今すぐそれをしなければいけないとお前はわかっているだろう? ・・・・・・民主政治の元の軍人である以上は、できないんだ。 軍人である私がこの場でこの男と決別すれば、市民はまた軍に疑義をいだく。 クーデターから解放された人々は・・・・・・。 私は「あほう」のように、私の名前を遠くに聞こえる中手を振った。 「ヤン・ウェンリー」である以上、人民は私に勝利を求める・・・・・・。 宿舎に帰ると、手がちぎれるほど消毒液と水でトリューニヒトと握手した手を洗っていた・・・・・・・。 こんなことをしても何も雪ぐ(すすぐ)ことはできないじゃないか。 子供じゃあるまいし。 大尉は実の父上と戦って、ジェシカは生命までも失った。こんな結果のために。 こんな男を支持する「民主政治」とはなんだろう・・・・・・。 けれど選ぶのは民衆の自由。 私がぞっとしながらまだ手を洗っているとユリアンが、らしくもなく大慌てで私の側に やってきて大変な連絡がムライ参謀長から入ったと声を高くした。 何が大変なんだかと思えば。 銀河帝国、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ提督が私の元に 亡命をしたそうだ。キャゼルヌがイゼルローンから急ぎで連絡をよこしたらしい。 銀河帝国の名将じゃないか! そりゃ、大変だ。 なんか家具のあちこちに足や腕をぶつけながらムライと話して、すぐに私は幕僚を集めて 会議を開いた。 私はおだてに弱い。 メルカッツ提督は部下だけを連れて亡命なされた。ご家族はオーディンにのこして イゼルローンへいらしたと聞く。 何か含むところがあり諜報が目的であれば通常偽の家族がくっついてくるところだろう。 だがそれはない。 ならば名将である提督が私を頼りにいらしたとなれば、私の力の及ぶ限り 提督の権利を擁護しよう。情報部であり、いつの間にか私の幕僚となっている バグダッシュも、メルカッツ提督はおよそはかりごとなどに無縁の人だと言う。 ならばお迎えする。 イゼルローンのキャゼルヌと通信がつながり、メルカッツ提督とお会いする旨を伝えると 画面には音に聞こえた宿将、メルカッツ提督が現れた。 私はあいかわらず気の利いた挨拶はできぬが、よい部下がおられることが 判じられたので老提督の後ろに控える副官に視線を向けた。 おそらくは副官にすすめられて変わり者の私を頼ってこられたのかもしれない。 まだ壮健であるうちは、負けたとしても死ぬことなどない。 僭越だがそのようなことを私は感じて、身をお引き受けすると約束をした。 私たちがイゼルローンへ還るときがきた。 敵の造った要塞に「還る」という言葉を使うのか。ふと心の中で笑みを漏らす。 今回のことでなんとか勲章とかなんとか栄誉賞だの感謝状だのもらったが、いずれ 質草にするか、換金できるかもしれないから物置にほりこんでおいた。 うれしいことにメルカッツ提督を中将待遇で「ゲスト・アドミラル(客員提督)」として 無事お迎えできる。イゼルローン要塞司令官顧問。 提督のような老練で熟達した用兵家がおられればこの先私も楽ができる。 お使いするのは申し訳ないが、きたるローエングラム侯との戦いにはぜひ力になっていただこうと ほくそえんでしまう。 やっこさんにばかりよい提督が集まるのでは不公平じゃないか。 私や幕僚の中で昇進はなかったがシェーンコップだけは、准将から少将に昇進した。 そういえばユリアンも・・・・・・軍曹待遇に昇進した・・・・・・。 これでスパルタニアン搭乗資格をえたとなると。 やれやれ。考えることは山積みだ。 さよなら。 また戻る星ではあるけれど、私はしばしまたそらへ還る。 失ったものは多い。隣で私を見つめるヘイゼルの眸の佳人とてそれは同じ。 振り返ることもできないまま、私は前に進むしかない。 私が、生きている以上は「ヤン・ウェンリー」であり、「ヤン・ウェンリー」である以上、 戦いにおいては勝利を望まれるのであろう。 腹をくくらねばならぬな。 あがいたとしても私は軍人を辞めることはできない。 地図のない道をこれから歩くしかない。 今度は・・・・・・ラインハルト・フォン・ローエングラム侯との戦いが始まる。 by りょう |
「いくつかの空」
長いよ!
難しいよ!
物理は苦手だよ。
わかりにくくてすみません。
剽窃家のわたしです。
「さよなら さよなら あなたに会いたい
さよなら さよなら どこかでもう一度
さよなら さよなら 偶然のように
孤独のその先に・・・・・・」
って、そんな空気でもないですね。
首飾りのくだりは面白かったんですがいろいろとヤンの場合は政治がくっついてくるので、
・・・・・・ま、すみません。謝ります。(きっと推敲が必要になる気もします。)
30歳なんてまだまだぴっちぴちでメルカッツ提督をお迎えするなんて、
一人称で書いているとまるで私がお迎えする気持ちになりあわあわしました。
ヤンってえらいです。一度、この場面を一人称で呼んでみたり書いてみると自分が見える気がします。
後半はちゃちゃがいれれないまじめなところでした。
今回も原作とOVAが混ざります。
やっぱり物理が苦手なので首飾りくだり、解釈を間違えていたらすみません。
それと誤字脱字も多いですね。反省。