忘れ咲き・4




「あたりまえだろ。パイロットはコンマ単位の誤差でやるかやられるかの世界だ。欲のない灰色コーネフでも

わかるさ。物の長さや角度くらい。」

・・・・・・灰色とかいうな。

だったらポプランは虹色なのか。



「じゃぁ空戦隊の男は自分の恋人が髪を切ったりちょっとでも太ればわかるのかな・・・。」

自分の仕事とはぜんぜん単位が違うなとアッテンボローは考えた。

「いや、おれは天才だから特別なのよ。」

「コーネフは?」

「まぁ、努力は認めるけれどな。」





アッテンボローは呆れた。よくまぁ好き勝手にいいたい放題な男であることよと。





今夜はアッテンボローがポプランの部屋にお邪魔している。

夕食を作る暇が無かったので食事はピザを頼んだ。アンチョビとマルゲリータ。

オニオングラタンとサラダ。

と、ライトビア。

こんな日もある。



顔を洗って(彼女は唇に口紅がついてまま食事をするのが好きじゃない。)少し一息ついて

部屋着を来て落ち着く2人。アッテンボローは男からシャツとジーンズを借りた。



「ジーンズなんかはいたら尻、きつくないか?ボトムははかなくてもいいじゃん。このあと

むふふの時間なのに。」

「うるさい!尻、尻いうな。大きなお世話だ。ちゃんとはいったぞ。ジーンズ。なにがむふふの

時間だ。パン一で食事なんかごめんだよ。行儀が悪いじゃないか。」

「白のレースのかわいいTバックのぱんつなのに・・・。姉上とおれが相談して買ったのにな。」

「それがどうした!」

男は残念そうに言うし、女はさっさとピザを並べて食べようという。



「テーブルもないってどうしてなんだ。」

アッテンボローは疑問を口にした。以前から気にはなっていたのだ。テーブルやソファというものが

この部屋にはないのだ。

「うーん。特に意味はないんだけど。おれ部屋でごろごろするのがすきだしな。テーブル使わんし。」

裸にボクサーショーツだけでピザを食べようとする男にアッテンボローは赤面をして

「頼む。何か着てくれ。恥ずかしい。」

と部屋に備え付けのクロゼットを指差した。

「え。ぱんつはいてるじゃん。真っ裸じゃないだろう。レディの前だから。」

「パンツだけじゃだめなんだ。普通何か着るだろう。そりゃここは温度は一定だけれどさ。」

「そんなに俺の裸はお気に召さないかな。フロイライン。毎日鍛えているのに。」

にこにこと男はうれしそうに女性提督をからかう。毎日もっとすごいのを見ているくせに

いまさら何が恥ずかしいのか。でもそういう女心もかわいいしわかる男なのでつい

からかいたくなる。

「気に入るとか気に入らないの問題じゃない。お前の体が綺麗なのは私だってよく知っているから

何かシャツでも羽織ってくれよ・・・。食事してるんだからさ。」

からかわれていることをしらない女性提督はトマトのようにほほを染めて男に抗議を

申し立てている。



「このあとすぐ2人で風呂に入るのに。ま、そんなうるうるした目になるなって。わかったからさ。」



男の一人暮らしともなるとこうなるのかなぁとアッテンボローは考えた。

けれど一人暮らしをしていたヤンやキャゼルヌだってパジャマやコットンのシャツに

コットンのスラックスやボトムを着て対応していた。あの人たちの下着姿を考えたくない

彼女・・・・・・。

ポプランはとりあえずTシャツをかぶってでてきた。でも下半身はボクサーショーツ・・・・・・。

もういいやとアッテンボローは思うのである。

下半身裸体よりははるかに目のやりどころに困らない。



昨日今日の恋のお付き合いではないから、2人は勿論お互いの体などもう十分すぎるほど

見てきているのだけれど、それでも「多少のエチケット」というものがあってもいいと女性提督は

思うのである。

ポプランの上半身は綺麗な逆三体型だし美しいと彼女は大いに認めているけれど、

なんとなく食事中はそこに目をやるのは気恥ずかしい。

化粧云々の前に、裸体を浴室や寝室以外でさらすことのほうが問題がある気がする

28歳の彼女である。



「ダスティ。今までお前さんが付き合った男は食事のときはテーブルに蝶ネクタイかタキシードの

正装だったのかなー?三人の過去の男性諸氏。うん?」

ポプランは愉快そうに彼女をからかった。ピザを口にほおばって床で食事をしている。

でも彼女のお尻が冷えないように彼女のところには大きなクッションをおき、あたたかいラグを

男は忘れない。(彼は彼女のヒップがとても好きなのだ。)

「いや、そういうわけじゃないけどね。食事中は食事。情事は情事ってちょっとはメリハリつけようよ。

それだけ。・・・その照れるじゃないか。私が・・・その、食事中にその気になったらどうする。」







「いつでも大歓迎だ。」







「・・・・・・ごめん。言った私がバカだったよ。」

お前は育ちがいいなとポプランはにこにこしてアッテンボローの頬にキスをする。

育ちがいいの問題だろうかと考えつつ、彼女はライトビアを口にした。

ビールは少し苦手だなと彼女が思っているとちゃんと男は缶に入ったジンジャーエールを

冷蔵庫(それも小さい冷蔵庫)からだしてわたした。

「やっぱし、グラスがいるわけ。お嬢さん。背の高い華奢なシャンパングラスとか。」

男はからかって彼女に言った。

「茶化しているだろ。別に私は深窓のご令嬢じゃないぞ。・・・でもなんでジンジャーエール

出してくれたの?」

「かわいいお顔が『ビール苦い』って言ってたぜ。」

アッテンボローとて女性だが軍人であるし、士官学校時代から酒を覚えて飲んでいたけれど

ビールは苦手なときがある。一口目は確かにおいしい気がするしおいしいけれどそれ以降は

仲間で飲んでいるときは「ノリ」で飲むだけ。20代をはるかに超えてくるとワインなどそちらの酒のほうが

飲んでいておいしいなと感じる。もともと酒豪ではない。

お酒の雰囲気を味わうのがすきなのだ。

「ありがとう。大好きだよ。」

お返しに彼女は男の唇に軽くキスをした。

トマトソースの味がする。

「食事中誘惑してるな?」

男が笑った。

「いいや。食事のあとで誘惑するつもり。」

彼女は後ろのクッションにもたれた。男は「食後の誘惑」を楽しみにしているという。

「わくわくするな。おれどうやって誘われるんだろうな。お前に。いや、愉しみ。」

・・・・・・彼女は墓穴を掘ったなと悟った。



「デッサンと射撃の関係って話お前、知ってる?」

男はすっかりピザをたらふく(ラージサイズを1ラウンドと3分の1とオニオングラタンとサラダ)たべて

彼女が残したビールを口にしている。

「なにそれ?」

「話に関連性はないけれど基本デッサンができる人間は射撃のコツをすぐに習得できるんだ。

ものの角度と射程の角度とを空間で見分ける力があるわけだな。まぁ本当かどうか知らんが

実際に射撃の腕がいい男が結局軍を辞めて画家になっていたりするから、あながちうそでも

ないかもな。」



ポプランのこんな話、取り留めのない話を聞くのは女は好きで愉しみだった。



「私はぜんぜんだめだ。射撃の腕はヤン司令官と変わらない。絵心はないし。」

「デッサン自体はものを測定する能力が要るわけだ。たとえばつまらん石膏像を描くとして・・・

女のヌードのほうがいいな。女の体の線をこっちのカンバスに移す作業だ。

木炭でモデルやトルソのラインをはかりながら線を引くわけ。測定するって事に関すれば

射撃と似ている部分もあるな。ま、それと膂力の問題だが。反動を計算に入れれば

絵が描けるからって射撃がうまいとも限らない・・・。」

「えらく絵のことに詳しいな。お前の昔の恋人が絵でも描いていたのかな。」

彼女は嫉妬ではなく、好奇心でたずねてみた。

「ま、そんなところかな。俺も絵心はない。で、お前は射撃が下手だって?ヤン・ウェンリー並みなのか。

それで分艦隊主任参謀長があいつなわけなんだ。」

「あいつ?ラオのこと?」

うんと男。

「あいつの前身は知らないがそうとうな射撃の腕は持っている。お前を守ってもらわないと

困るからな。ぼんくらな男を側近においてほしくない。」

彼女はちょっとだけぽかんとして。

「あれ?私のことはお前が守ってくれると思ってたよ。」

というと

「勿論それは前提条件だ。安心してくれていいぜ。ベイビー。」

男はトマトソースの味をしたキスをひとつ、彼女の唇に落とした。

女は別に酒も飲まないでつい顔が赤くなる。いまさらキスをされたところで

顔を赤らめる歳でもないし付き合いでもないがふいにキスをされるとドキッとしてしまう。



「やっぱり、ダスティ、おれに首ったけだな。素直な女性はかわいいねぇ」



・・・・・・最近どっちが飼い主かわからなくなっている。

ポプランはアッテンボローを抱き寄せて頭を撫で撫でした。

「ピザソースとか油、ついた手だろ?せっかく美容室で洗ったんだ。汚れるじゃないか。

撫でるなよな」

「後で洗ってあげる」

「・・・・・・好きにしろ」

「あ、本当に好きにしていいんだな。ラッキー」


















「・・・・・・好きにするな。前言撤回だ。」



















彼の部屋はあまり物がない。

ベッドはあるが荷物のほとんどはといていないか物置においているようだ。

備え付けの家具を使いはするがちょうどにこだわるというレベルには程遠い。

軍人は転属されることも多いので大概荷物は少ない。

そして大体は整頓もできる。すぐに身動きができるようにそういう生活習慣は訓練されている。

でもたまにできない人物もいる。

そんなヤン・ウェンリーという人間にはキャゼルヌという要塞事務監ができのよいユリアン・ミンツという

養子を気前よく出してくれる場合もある。

これはごく幸運な場合である。他の人間は期待できない。

にしても殺風景すぎる。

前にも彼女はそういったことがあるが部屋の住人は



「淋しい部屋にしておくと是が非でも女のところに転がり込むしかないだろ。

こうやっておれは、自分に試練を与えて日夜努力を惜しまないのだ。」



と、情けない回答が帰ってきた。

でも過日のポプランの少年時代の話を聞くと彼女の視点は少し変わった。

どう変わったといわれても彼女は困る。



暖かい太陽のような女性。

明るい褐色の髪をした緑の瞳がきれいな女性。

大切な人を亡くした傷はこの男が一人の女性と恒常的な関係を築かせることに

恐れを抱かせる作用があったのかも知れない。

もう二度と大事な人を失いたくない。

だから一人の女性との愛に足踏みしていた・・・・・・。

物に執着しないのもそういう心理とにている。





こだわれば、形あるものはすべて壊れる。

崩れる。





一夜の恋愛を繰り返したのは刹那の至福のため?

などと彼女が哲学にふけっているとピザを食べていた彼女が彼に

食われることになった。

「ダスティ、早く残りのその手のピザ、くっちゃえ。ピザを片手にセックスできるほど、

器用だったか?お前。それともそんなアクロバティックな変化がほしいのか。

マンネリズムにはまだまだ遠いはずだぞ。倦怠期もな。」

「あれ。私が誘惑するまで待たないのかな。」

女性提督は男の鼻をつまんだ。

「じゃぁ誘惑して。」







『・・・・・・あんまり深く考えないほうがいいかも知れない』

そしていつもの、なし崩し。








正直、4ラウンドで十分です。

お腹いっぱいの二人でありました。





「女の子はね。強そうに見えても女の子なの。大人になったら女性には親切にしなさい。

お父さんも私にとても親切だったんだから。いい?ベイブ。」

少年は、こくんと頷く。

「ぼくがおとうさんの変わりにレベッカ・ダーリンにしんせつにする。」

母親のほほにキスをした途端、早朝彼はふと目を開いた。

久しく見ない夢だったので彼は少し驚いている。

音のない白い朝。瞳を閉じようとしても鮮やか過ぎる夢の声に戸惑う男。

「どうした?オリビエ?」



あちゃ。

彼の恋人は気配の違いで目が覚める。

別に動いたわけでもないのに。敏感だなぁと男は思う。

彼は彼女の額にキスをして、いった。

「なんでもないよ。もう少し寝てろ。まだはやいぜ。ハニー。」

彼女は普段ならこの後

「あ、そう。」

と、すぐに眠れるひとなので軍人向きではある。だが、今朝は彼女は少し早いがもう朝だと知ると

「今日は早くでる。昨日、午前中やすんだからな。」

そういうと服の上ではわからない意外に筋肉のついた恋人の腕からするりと抜け出て、

身支度を調えた。彼女はあまり自分の体を見せたがらない。あれだけ美しいのに彼に背を向けて

すぐに下着を着けてシャツをはおりあっというまに制服を着た。洗面所で水音がして彼女が洗顔と

歯磨きをしているのがわかる。こういうすばやさも軍人らしい。いやいや軍人といえど彼女は機敏で

見ている側は気持ちがよい。規律を遵守できる人種らしい。



長い髪をとかして静かに寝室に戻ってきた彼女は眠っているはずの男に優しく声をかけて

頬にキスをした。



「またな。まだ寝てていいぞ。私は着替えに帰る。あとでな。」

男は上体を起こして彼女の手をとりキスした。

「いや、起きる。送ろう。」

「いいって。朝帰りが派手になるから。もう隠せないスキャンダルだがね。」

女は男に引き寄せられてベッドに腰を下ろした。

「仕事に行くよ。こんなことなら着替えを持ってくれば朝寝でも楽しめたがそうも

いかないし。まだ寝てていいんだってば。」

彼女を抱きしめてはなさない男に笑顔でいった。

「ふむ。仕事熱心なお人だ。おれの提督。」

男は観念していったん彼女の手を放そうとした。












「オリビエ、今夜は遅くなるから先に何か食って寝ててもいいぞ。

夜、くるんだろう?あんまり飲みすぎるなよ。」










その笑顔と、言葉に彼は息を飲んだ。

『オリビエ、今夜は遅くなっちゃうけれど先に食事をして眠ってなさいね。

夜更かしはだめよ。それとお菓子、食べ過ぎちゃだめよ』

愛するレベッカを思い出してしまった。彼女を宇宙で一番愛していた。

彼女のいない世界で何度も泣きはらした夜をすごして少年は大人になった。

彼女を遠い虚空に思い描き、やがてその扉を閉じて傷を隠して生きてきた。




彼は夢中で、今宇宙で一番いとしい女を抱きしめた。











突然、いなくなったら。



馬鹿なことを考えてるとわかっているし、情けないとも彼は自分を知っていた。

けれども、こんな大人になっている今でさえ彼女を手放すことができないでいる。

今朝のレベッカの声は彼の脳裏に焼きついている。



「すまん。馬鹿だとわかってるんだ。わかってるんだが・・・・・・。」

男の声を聞き彼女は彼を抱きしめた。朝の光のせいで男の顔が白く見えるのではない。

彼女はそれを瞬時に悟った。白い彼の額に唇をつけて男が動けないことを知る。



「お前のせいだからな」

彼女はそういった。ベッドサイドには電話があり女は自分の執務室にダイアルした。

「悪いな。私だ。出先から電話している。朝早くてすまないが今日一日休むことにした。

何か危急の用事があったら、私は自分の部屋かポプラン少佐の部屋にいるので遠慮せず電話してくれ。

すまないな。」

音声だけの電話だったので怪しまれるのは承知の上。それと恋人の部屋から電話をしたことも

どうせ司令官閣下にも伝わる。

ぽかんと彼女がすることをみていた男は我に返ったのか、仕事に出なくていいのかとあわてて

女性提督にたずねた。

「明日できることは、明日すればいいや。休みだ。私だって年給はある。恋人がこんな状態で

オフィスにいけるほど冷めた女じゃない。」

彼女は抱きしめられたまま男の目を見て、悪びれもなく「恋人のために休暇」をとった。

男は驚いた。

彼女らしくなかったからだ。



「なんだ?いやなのか?」

彼女の眸は青いブルー。いたずらをしたあとのようにきらきらと輝いて

男を見つめる。

「いやじゃないに決まってる」

彼女は穏やかな笑顔で、いった。

「どうせ開戦されれば会えないんだ。その時に悔やむのはいやだよ。

私だってそう仕事の鬼じゃない。恋人といっしょにいたい、ただの女なんだ・・・・・・。お前

わかってないだろう。」



上目遣いでいわれては、男の急所ではないか。

「お前って、ほんといい女だな」

彼ほどの男でもそういうのがやっとであった。

「それで・・・・・・。二度寝をしようと思うんだけれどベッドに入るのに私が服を脱ぐのかな。

それともお前が脱がせてくれるのを待てばいいのかな。どっちにすればいいかな・・・・・・。」

などと無防備な一言を言うのであるからさすがのレディキラーもかなわない。

こういう無垢な誘惑が実は女性提督は得意だった。

彼女は気がついていないようだが。

「じゃあ、おれがぬがせましょ。」

自分から罠にはまった女性提督がいまごろ顔を真っ赤にした。

「やっぱり脱がせるほうがすきなのか?脱いでもらったほうが楽なのか?どうなんだ?」

照れ隠しの質問。

「時と場合によるけれどどちらもそれなりの趣があるから、なんともいえないな。」

男の顔を両手で包み込んで彼女は思った。

運がいい女だからおそらく戦争では死なないと自分のことを思う。

男の目の前からいなくなるときが来るとしたらそれは別の理由だろう・・・・・・。

どんな理由で二人が離れるのかはわからないが男の傷を知っている女は

「提督」である前に今日一日は「女」でいてもいいと思えた。



彼女は彼をマザー・コンプレックスとも思わないし脆いことが、悪いとも思わない。

そもそも彼女は彼の全てを受け容れようと決めたしそう努力している。



でも、ひとつ質問してみた。

「なぁ、オリビエ、わたしはおまえの母親なのかな。」

いつのまにやら激しく腰を使用中の彼女の男はいった。




















「ばか言うな。母親にこんなことできんだろう。」



よし。ノーマルだ。

そう安心して彼の動きにあわそうとした彼女の耳元で、恋人は熱く囁いた。

「ねぇ今度裸でエプロン、着て」

さて。



グリーンヒル大尉が好きな人の言ったことはするといっていたが、彼女もするだろうか。

など不埒な彼女は考えたが、失礼なので想像はやめた。

フレデリカにそのような妄想をいだいてはいけないと彼女はよく自制をした。

「エプロン?私が使っているのでいいの。」

彼女が囁き返すと。

「チャーミングなの、プレゼントする♪」






・・・・・・休んでよかったんだろうか。

あぁ、皆さんごめんなさいと心でわびる彼女であった。
















ヤン・ウェンリーとフレデリカ・グリーンヒルは珍しくランチを一緒にしていた。

珍しいことにヤンが副官を誘ったのである。

「いつも大尉と仲良しの不良女性提督が体調が優れないと仕事を休んだんだ。」

ランチのメニューはチキンのソテーとサフランライス。ミネストローネなどなど。

フレデリカは何かお見舞いでも部屋に持っていこうか少し考えたがその表情を汲んで

ヤンは彼女に言った。

「お見舞いはいいんだよ。ま、今はアッテンボローじゃないとできない仕事はないから、

彼女もたまには恋人孝行するくらい健全だと思う・・・・・・。ちょっと甘い上官だろうか?

私は。」

ラオは勿論アッテンボローの今日の突然の休暇をヤンに報告したとき「体調不良」と

申告したが・・・・・・。

彼女が私生活を仕事より優先させるのは初めてなのでヤンはそれでいいと今回は

思っている。ほとんど兄のような気持ちで真相を見守っている。

フレデリカはちょっと驚いたが・・・・・・でも自分の上官は案外恋愛音痴ではないのかも

知れないわと微笑んだ。

「いいえ。甘いのはお二人の関係だけですわ。閣下もそう思っておいででしょう。」

とお見舞いを持っていくことはやめることにした。

「仲がいいのはよいことだと思ってね。アッテンボローは案外仕事人間だからたまには、

息抜きをさせてやってもいいなと。ユリアンも見舞いに行きたがるだろうから今日は

あいつが休んでいることは内緒だよ。大尉。」

とヤンはミネストローネを口にした。

「それでね。」

閣下。

「ユリアンには、今日アッテンボロー提督が体調不良でお休みをしたといわないでおくのが

よろしいですわね。気の利く子ですから耳にすれば気を回して、見舞いをしにいくかもしれない

ですもの。」

ヤンはフレデリカがもう十分わかっていることに驚きもして、微笑んだ。

「うん。うまくあのこが気がつかぬように今日は大尉、頼むよ。こんなことは副官の仕事のうちじゃ

ないだろうけれど・・・・・・。」

「いいえ。そういうお仕事もわたし喜んでお受けしますわ。閣下。」

ようするにユリアンが大人の恋の現場に足を踏み入れないようにうまく知恵を絞ってくれと

ヤンは言いたかったようで。

そしてそれはフレデリカは彼が口にする前に察知していたことだった。

「こんなことを言っては公私混同で大変申し訳ないが・・・・・・。」

ヤンはスプーンを右手に持ちつつも落ち着かない様子で美しき彼の副官に言った。





「グリーンヒル大尉。君がいないと困る。・・・・・・いろいろとありがとう。」







寧日安寧なイゼルローン要塞。



ヤン艦隊が出動するのは数日後。

この日は女性提督にしろ、可憐な副官殿にしろ、心が温まるそんな一日。



by りょう




LadyAdmiral


「忘れ咲き


GARNET CROW嫌いじゃないです。ベストアルバムしか知らないですが(^^;;

元のタイトル「少年時代」でもよかったんですが何となく変えときました。



そういえばコナン君のEDでしたね。さすがに最近はアニメを見ないので(テレビは苦手(^^;;)

ここまでくらいです。

キングを読んでいるのでエディ・コクランだのさすがの長老のりょうでも知らない歌あり。

ケッズなんてありえないですしね。(うそばかり書くんですよね。)

まじめな話ではなかったのでちょっと気楽な作品って感じです。

娘小説ではあっても基本は原作なんでどうしてもヤンたちに動いてもらわないと

格好がつかないです。

フレデリカはすきです。というかかわいいです。23歳のをとめですからね。

本当はヤンはフレデリカに意思表示はしていないとしてもアンソロジーですから

最後のせりふくらいはかわいい「捏造」として。


娘が主役のはずがときどきフレデリカ優先になります。ま、それもありということで。

追記:このヤン艦隊出動までの話と出動が長いです。

シェーンコップがクーデターを鎮圧したのはシャンプールだけで私の勘違いでした。

訂正です。こうして推敲の歴史がまた一ページ・・・・・・。

















LadyAdmiral