ギリギリchop・4



3日目。





予定通り、アッテンボローはキャゼルヌ少将とその家族がのっている輸送船をむかえ

イゼルローンに帰還してきた。

「よう、出迎えご苦労」

アレックス・キャゼルヌ少将は家族とともにヤンとユリアンに再会した。

ヤンにしてみれば、まさしく救いの神だ。

なつかしの奥方やご令嬢2人も無事。

何よりであるが。



「しかし、アッテンボローはなんで逃げたんだ。艦から降りてから、一気に逃走したぞ」

キャゼルヌは早々に後輩の女性提督の怪しい行動を見逃さなかった。

「朱に交わってとんでもないことばかりしでかすのでお灸を据えようと思っていたんですが

それがわかっていたんでしょう。あいつは昔から逃げ足が速い」

ヤンは言った。

今ひとつわけがわからないというキャゼルヌは今後さんざん嫌というほど

あのバカップルに翻弄される。




今はしらぬが仏である。






「准将」

アッテンボローは珍しくシェーンコップに声をかけた。

男は情事のあとなのかやや衣服が乱れている。

こういうところが女性提督は鼻につくのである。

でも彼女の恋人にしてもそのあたりの観念は同じなのであるがアッテンボローは結局、

「美男子な男」より「キュートなやんちゃ坊主」にほれただけのことであった。







「私の男は?きけば、薔薇の騎士連隊でオリビエを捕獲したらしいな。どこだ?」

シェーンコップは笑みをこぼして肩をそびやかし、アッテンボローを恋人のところにつれていった。

「何をしたんだ?」

アッテンボローは驚きを隠さなかった。

シェーンコップは言った。

「これでも、紳士的に対応したんだ。お前の男はとんでもない大バカでこの3日間というもの、

歩く無節操だったんだからな」

「だからってタンクベッドのモードをコールドスリープモードにするか」






そう。

昨日シェーンコップはマスクをしたリンツ、ブルームハルトを連れポプランの部屋のロックを解除。

泥酔して飛び掛かるポプランをリンツらが捕獲。

クロロフォルムをかがせ、失神させる。

そしてこのタンクベッドにポプランを投げ込んで冷凍睡眠モードにしておいたのだ。







「乱暴だな。死んだらどうする」

「そうは言うがお前、この男はくそ真面目に約束を守ってかなり危険だったんだぞ。

他に女が用意できないわけでもないのにばか正直に浮気もせず。禁断症状で危うくユリアンが

被害に遭うところだった」

「なんだって?」

「お前と間違えて、ユリアンに抱きついてキスしようとした。コーネフ少佐がかばっていなければ今頃・・・。

悪趣味な話だ。今度からはうるさいから要塞を留守にするときはポプランをつれていくんだな。

残されたものが困る」

そういうと、これ以上こんな喜劇に関わりたくないとシェーンコップはどこかへ行ってしまった。

やれやれ。アッテンボローは頭をかいた。







・・・浮気をしなかったのは認めるが。

その誠意も愛情も認めるが。





アッテンボローは死んだように眠っているイゼルローン一無節操な彼女の恋人の顔を見つめた。






「そんなにさかってたのか。お前は」

喜んでいいやら、悪いやら。彼女は複雑だった。
















オリビエ君が目を覚ますと、そこには大好物の彼だけの提督がそこにいた。

しかもここは彼だけの提督のいつもの部屋でいつものベッド。










「ダスティ!本物だな?錯覚じゃないな」

アッテンボローがその後、濃厚すぎる強烈なキスの雨と数回以上の情交を強いられたのは、

言うまでもない。

オリビエ君が満足したときは女性提督は疲労困憊・撃沈状態であったのも書くまでもない。

夜は寝ていないし朝は無情にやってくる。

この男のスタミナはいったい何なんだろうと腰が痛い女性提督は悩む。





しかし、えらいぞオリビエ君。

君は消して君の提督を裏切らなかった。

それは、イゼルローンのみんながよく知っているぞ。






今回はオリビエ君の忍耐勝ちであった。

アッテンボローは、かなり大量に仕入れたはずのスキンが残り僅かになっているのにぎょっとした。

こんなに大量に買い込む女、嫌だ、と我ながら彼女は思う。






しかし、今回は許すとしよう。

このバカはどうやら自分との約束を果たしてくれたようだ。

浮気をしなかった。

いろいろ、問題はあったようだが・・・。





眠っているオリビエ君に彼女はキスをしていった。

「今度からはつれていくからな」









オリビエ君は幸せそうに眠っている。

オリビエ・ポプラン、生涯最大の?試練の3日間は終わった。







めでたし、めでたし。














そう、オリビエ君はめでたくてよい。












しかし、アッテンボローはこの後まずムライにぎゅうぎゅうに1時間ほど説教をされた。

「私などが口を出すことではないけれども、アッテンボロー少将は少しご自分の立場をもっとご自覚

ありたいですな。私生活にとやかく言いたくはないですが少年少女ではないのだからやはり相手は

選んだほうがよいと思われます。大体今回・・・」

以下省略。






当然である。

そして、その後キャゼルヌにさんざんこき使われながら2時間ほどぎゅうぎゅうに説教をされた。

「就いた早々こんなことを言うのも俺も嫌だがこんな茶番劇軍部中枢に知れればどえらい羽目になるぞ。

大体よりにもよってああいう類の男を恋人にしているお前さんが悪い。風評しか知らんがパイロットとしては

優秀であろうが、ご乱行が過ぎる人物だそうじゃないか。ヤンの下にいるからいいようなものの、

違う上官だったらお前さん、訓戒処分ではすまないぞ。世の中にはお前が見ようとしないだけであの男以上に

よい男がいるんだ。

こういっては何だが、こんな下手物食いとは思わなかった。

お前さんも将官なんだから身辺はできれば綺麗にしておけ。綺麗過ぎるのもなんだが、

一応言いたくはないがお前さんは女であるのは曲げれない事実だからな。

お前さん自身いつも女であることが軍部において有効だったことを覚えていないといっているだろう。

司令部の威信も考えないといかんな。ただでさえ28歳の女性提督は風当たりも強いのだし、

俺やヤンでは庇いきれなくなるときも来るかも知れん。聖人君子を選べとは言わんが、

もっとまともな男に目を向けるほうがいいぞ。お前はもっと賢い分別があると思っていたが、

今度の件に関してはそういう種類の男を恋人にしたお前さんが悪いな。それにだな・・・」

以下省略。

これも当然である。










最後にヤンに4時間ぎゅうぎゅうに文句をいわれたのは全く当然の帰結である。

「・・・ポプランがどうこうじゃないんだよ。アッテンボロー。わかるだろう。

普段からのお前の行動は学生時代そのまんまだ。いつまでも学生気分のままでは困る。

こんなことは言いたくないんだ。お前は優秀な将官だからね。お世辞じゃなくて、私以上に本来は

能力があるんだ。ただ、なにがかけているかといえば、地位にふさわしい思慮分別かな。

お前が有能であり、話がわかる人物であることは普段から私は認めているよ。

多分誰よりもね。

ああ、言いたいことがうまくまとまらないな。

つまり・・・今回われわれは一人で寝ることに慣れていないレディキラーの怖さを

存分に知ったわけだけれど・・・。

一枚岩とはいえないけれど今のこの人事はまずまずの線をいっていると私は思っている。

けれどもポプランがあんなことになるような約束事はやはり避けてやるべきだと思うよ。

逃げ道やガス抜きは誰しも必要だろう?

今後も彼と交際をするならば彼の性質を理解していくことも必要ではないかな。

その上でお前さんがどうしても納得がいかぬのであればまた考えることもあるだろう。

私はね。

2人の交際がまずいとは思わないよ。

実際のところポプランはお前さんだけが唯一の女性であるとは自覚しているしそれはいいと思う。

お前さんが女性として一人の男に大事にされれば私もうれしい。

けれども、今回のような問題は今後起こらぬように注意しておくれ。

それとやっぱりもう少し司令部に身をおいていることを深く自覚してほしい。

われわれは前線で命令を下す立場だ。

命令には従わなくちゃいけないが、こういう事態を収拾できない司令官に命を預けないといけない

兵士の気持ちを考えれば・・・いや勿論私だってほめられた上官でもないし、司令官ではない・・・

人のことは言えないな・・・。

恋愛は大いに結構だし、相手が悪いとは言わない。

わかるだろう?アッテンボロー。

ところでお前は士官学校で悪い言葉をたくさん覚えたみたいだがグリーンヒル大尉のように

品性がある女性にもうなんとか2号の話をしてはいけないよ。

いたずら心の延長だろうけれど、大尉はあのとおりまじめな副官だから休憩時間も返上して

つまらぬ言葉を調べていた。

私は自分の副官や部下に過剰な労働はさせたくはない。

それはお前にも当てはまることだけれど・・・。

ああ、なにから言えばいいのかわからないんだ。

つまりだな・・・もっと品性を持ってほしいんだ。

そうすれば誰もお前には文句を言わないしこんな無駄な説教をする必要はないだろう。

お前の悪いところは、わかってやっている確信的なところだ。

茶目っ気で片付けられるところも多いから大目に見てきたけれど今回は・・・」

以下省略。

合計約7時間の説教の後彼女は3日間眠れなかった。

何も疲れていないのでは決してない。

多くの仕事と、あふれんばかりのオリビエ君の愛情のおかげで眠らせてもらえなかったということだ。










「おれはやっぱりお前だけだ。愛してるよ。ハニー」










鮮やかな緑の瞳を輝かせるオリビエ君は、陽気に言う。

「ありがとよ」

満身創痍で、彼女は言った。






彼女は、今後一切、南極2号ネタを使うことはない。





by りょう







LadyAdmiral







ギリギリchop


別のタイトルでしたが、この曲を聴くとなんとなく。ギリギリだったんです。(^^;)

ちなみに外伝2巻でユリアンのイゼルローン日記があります。そこから多くの引用を

用いていたのですが引用はよくないと反省。訂正しております。自分の筆で書かないと

いけませんよね。反省です。

アッテンボローは同盟軍では最後はかなりの「黒幕的」なポジションで暗躍をしています。

原作一巻ではむしろラオのほうがヤンの補佐をしています。




外伝になるとシェーンコップなどは一気に若返ります。原作後半では父親であることが

発覚してついおじさん扱いですが、外伝のシェーンコップはさすが、もてるだけの魅力があります。

私が書くこのシリーズでは女アッテンボローとポプランが主役ですが、いないと困る人がいます。

イワン・コーネフ。この人がいるおかげで会話がちょっとだけ田中先生風味になる錯覚がするので

とても大事な人物です。別の意味でフレデリカも重要な脇役です。一応田中先生の筆を真似たいですが

あれだけの語彙と文章力は到底まねできる代物ではないです。ポプランは実はそれほど私には

キュートではなかったんですがどんどん書くにつれ、いい男だなと錯覚してしまいます。





アッテンボローが女性だったらという設定はとても愉快なものです。

できるだけ品位を落とさないように心がけても書いている人間に品位がないので

こんなパロディになり大変田中先生には申し訳なく思うしだいです。




DVDと原作、また外伝ではややキャゼルヌの赴任状況が変わっている気がします。一応、外伝の2を

参考にしました。単身赴任のはずでしたが、妻子を連れての赴任だった模様です。

さて、妻にもいえぬ、「一生の不覚」が気になる今日この頃です。




LadyAdmiral