ラブラブギルティ・1123 彼女の誕生日はいつも戦闘中。 愛しいワイフは同盟史上最年少提督であるし同盟軍最強と謳われるヤン艦隊の分艦隊を指揮する身だ から仕方がないのかもしれない。実のところおれ様の誕生日もその一ヶ月後にあたるわけだしお互い商 売に忙しい。その分結婚記念日は円満な一日を過ごせることが多いので奥さんが喜ぶ圧力鍋とか、アン ティークの茶器などをプレゼントする。 もちろんシャンパンと「アンネマリー!」の白い薔薇は忘れない。 ダスティ・アッテンボロー・ポプラン中将ほど白い薔薇が似合う女も珍しい。 白い花が似合う女だ。 ときどき男になっちまうCUTEなワイフだがそのときですら白い薔薇がよく似合う。 今年宇宙歴800年11月23日はなんにもなかった。 帝国美男子の「ロイエンタール元帥謀反」が勃発してイゼルローンは二者択一の選択を強いられた。 どっちに味方するか、ってことだな。皇帝と色男の反逆者ロイエンタールと。 うちの司令官はおねんねしているし若すぎる司令官代行はこの機に乗じてイゼルローン要塞の存在を 有利にしようなんて野心はなかった模様。 ヨブ・トリューニヒトの首は魅力的な餌だったが。 ユリアン・ミンツは昔から品行方正な子供だったし多少大人になっても三つ子の魂何とやらでロイエン タールの美味しい餌に食らいつくといういささか陳腐で野蛮な・・・・・・・それでいて実に心理的に巧妙な 取引に応じなかった。 うちの奥さんはそれでいいんだとあの美しい微笑みを見せる。 ワイフがそういうなら・・・・・・。 ダスティの見つめる視線の先には。 彼女は自分の気持ちに鈍感だ。 ダスティ・アッテンボロー・ポプランともあろう女性提督がフレデリカ・G・ヤンやユリアン・ミンツをどんな局 面になろうと見限るはずがない。亭主としてはしゃくといえばしゃくだが情に薄いあいつなんてあいつらしく もない。そんな女でなければきっと・・・・・・。 ここまで愛しはしなかった。 どの宇宙を探してもあれだけの優しい女には出会えない。 誰が赤の他人のために不眠不休で眠れるヤン・ウェンリーの反乱分子の排除のために交渉して説得を 試みるだろうか。 どんな女が罵声を浴びせられてもヤン一家を身を盾にして護るだろうか。 ろくに眠りもせず飯も規則正しく食わないで・・・・・・欲している赤子を見送ってなんのためにあの女は 戦い続けるのか。 人は主義だの主張だののために闘っているのではない。 それを行った人間を奉じて後に続いて闘うのだ。 ダスティ・アッテンボロー・ポプラン中将は言い切った。 正鵠を得ている。 おれ様のワイフは時勢を読むにあまりに長けすぎている。 男たちが意識がないヤン・ウェンリーに絶望している間、あいつはその輝ける魂で自ら行動を起こした。 批難され罵倒されても顔色一つ変えず、不平分子を排除した。それこそがヤン夫人やユリアン、そして 眠れるヤン・ウェンリーを護ることになるからだ。 おれができたことはそんな彼女の側で食事の用意をして健康管理をして。 いつか。 そう遠くないいつか。 今度こそ本当に皇帝と「民主共和政治」の御旗を掲げて闘うときが来る。 あいつは・・・・・・。 ダスティ・アッテンボロー・ポプランは戦死扱いとはいえ中将。本来なら二階級特進で・・・・・・元帥だ。 そして革命軍実質の艦隊を指揮する女であるに違いはない。 おれにできること。 おれの前でしか涙を流せないかわいい女、ダスティのために戦うこと。 そして・・・・・・ おれの生命にかけてでもユリアン・ミンツを護ること。 ユリアンに何かあればおれの愛しい女性提督(レディ・アドミラル)は新政府において身動きがとれなく なる。あの意外に細い肩にヤン・ウェンリーの遺したものが覆い被さってくる。ヤン夫人はともかくそれを だまって看過する女じゃないことくらい、これだけ一緒にいればわかる。 最終決戦にはユリアンは必ず出陣するだろう。 不良中年、ワルター・フォン・シェーンコップ中将もしゃしゃり出るに決まっている。 となると愉快な薔薇の騎士連隊だって黙ってはいない。 キャゼルヌのだんなとコーネフはそのときはレディ・ヤンとともに居残ってもらうことになるはずだ。 あの二人は父親。コーネフなんかは頼りないにもほどがあるが情けない父親でも故国を捨てて あの堅物の嫁になったテレサを未亡人にはできない。 愛する二人には蜜月が必要だし、生まれてくる子供には頼りなくとも父親が必要だ。 おれは感じる。 自分の命数が儚いものではないと。 生きて還る自信はある。 ダスティは・・・・・・。 彼女はおれのいない人生など生きてはいけない。 でもな。 愛しい女よ。 男はときには命を張ってでも護りたいものがある。 死にものぐるいで護らねばならないものがある。 それがお前なんだ。 お前を一人にしない。 いつも約束してきた。 嘘偽りない、真実。本気で俺は言ってきた。 ユリアン・ミンツを護らずしてもしあの青年を冥界に送ってしまったならばお前はそのときこそ本当の 一人になる。お前はヤン・ウェンリーの思いをもっとも受け継いだ真実の女。血脈は通っていないけれ どフレデリカ・G・ヤンを一人にはできまい。 むしろ彼女を庇って生きていくことになる。 おれは感じる。 おれには見える。 だからこそ、おれはユリアン坊やを是が非でも生きて遺さねばならない。 口にすれば・・・・・・。 お前はきっと泣く。 お前を一人にしない・・・・・・これだけは誓う。 いつまでも、いつまでも愛していることも誓う。 ただ。 愛しい女。 側にいてやれなくなるときがくることをおれは知っている。 喪った仲間たちだって死ぬ気で戦ってきた訳じゃない。 生きて還ることを望んで散った。 愛しい女。 「綺麗な白い薔薇だね。でもどうしていつも白い薔薇なんだ。好きだけど・・・・・・なぜだ。」 お前が清廉な女だからだ。 愛しい女。 無邪気に笑ってみせるおれの生命をかけて・・・・・・人生をかけてその生き様を護りたい女。 おれがいなくなっても泣くな。 おれ以外の男の前で泣くな。 おれ以外の男のうでの中で泣くな。 到底綺麗な生き方をしたおれとは言えないがお前はおれの人生の最高の宝物。 お前を見ていれば、お前がこの先どう生きるのかおれにはわかる。 おれはお前しか見ていないんだから。 愛しい女。 魂が存在できるとしたならば。 おれはお前を離さない。 罪に似た愛情だとしても、おれはお前を離さない。 宇宙に散ったとしても。 命果てたとしても。 愛する女よ。 おれがいなくなっても泣くな。 おれ以外の男の前で泣くな。 おれ以外の男のうでの中で泣くな。 お前はシャンパンの栓を開けてにこやかに・・・・・・まぶしすぎる気高い笑みを見せている。 まだ未来なんて見えなくていい。 おれのすべてをかけてお前を護る。 おれがお前を見失うことなんてない。 ダスティ。 ハッピーバースディ。 お前を盲目的に愛した男を、憎まないでくれ・・・・・・。 お前をけして一人にしない・・・・・・。 fin by りょう ちっとも明るくない話しじゃないかとおしかりを受けそうですが ポプランさんは原作ではブリュンヒルトの死闘前に墓碑銘を 撰したほど死を覚悟していました。彼は職業軍人でエリートなん ですよ。よく忘れられますけど。って、どこがアッテンボローの 誕生日のお話かと言われても困ります。これも一つの愛情か なと。(フォローできない。)2009年11月23日(22日に書いて るけど)誕生日おめでとう、アッテンボロー。 あ、でも、基本的に絶対ハッピーエンドですから。 |