夢を殺すな、夢を追うんだ・4




シェーンコップ率いる「ユリシーズ」以下6隻の戦艦は「レダII」に強行接舷を果たした。

帝国軍駆逐艦を一隻は完全破壊したがもう一隻は「レダII」に双子のように貼りついているので砲撃することは

できない。



宇宙歴800年6月1日0204時。

要塞防御指揮官陣頭指揮のもと多くの犠牲を払いながら、「レダII」に潜り込んだ暗殺者たちをほぼ制圧した。

狡猾な侵入者たちは数では圧倒的にシェーンコップの部隊より多かった。

だがワルター・フォン・シェーンコップを筆頭に皆歴戦の勇士であり、大いなる怒りと復讐の念に駆り立てら

れており、数の劣勢などものとせずテロリストたちを銃撃し炭素クリスタルの戦斧(トマホーク)でなぎ倒した。

「ヤン提督の姿がありません。」

部下の報告でシェーンコップは常のように典雅には己を装うことができなかった。

「リンツ、ミキを連れて探しに行け!ここは俺が片を付けておく。」

怒号にも似た声がしてカスパー・リンツ大佐と女医、陸戦部隊数名がシェーンコップの命令が出るが早いか

装甲服などきているとは思えぬほど早く駆けだした。女医に連れられた救命班も後を追う。

リンツは「レダII」の船内図を頭に入れていたし、女医でもあり陸戦ではシェーンコップとほぼ互角と噂される

ミキも当然ゆくべき場所はわかっていた。

逃げおおせたとしたらヤンはDブロック、Eブロックまでにいる。ユリアンならその経路をとるだろうと二人を

先頭に、途中であう侵入者たちを荷電子ライフルとトマホークで振り払ってヤンを探し求めた。



シェーンコップは床に倒れたブルームハルト中佐の傍らに膝をついた。

床には血が広がっており、一度ならずシェーンコップは足をすくわれかけた。そんな二人の周りを僚友たちが

静かに数人囲んでいた。

多くの帝国軍軍服を着た男たちの屍をみれば、この若き薔薇の騎士連隊長代理で次期第15代目をつとめる

はずのこの男が孤軍奮闘したのかわかる。ブルームハルトはシェーンコップから見ればまだまだひよこだったが

かわいい弟子であり、その気質を好ましく楽しみにしていた男だった。

瀕死の薔薇の騎士連隊長代理の体を揺さぶり、シェーンコップにブルームハルトは残りの全生命をかけて

言った。

「ヤン提督は、無事でしょうか。」

さしものシェーンコップも即答できなかった。まだ身柄を保護できたという知らせがない。士官ルームではスール

少佐は重傷を負い今医療班が救命措置をとっていたしパトリチェフ少将に至っては体中に銃創があり事切れて

いた。暗殺者たちが圧倒的多数で襲撃しにきたのか見て取れた。

「あのひとは・・・・・・不器用ですからね・・・・・・逃げおおせてご無事ならいいのですが・・・・・・。」

青年士官は静かな声でシェーンコップに言う。

「ユリアンやマシュンゴがいる。リンツとミキが救出に向かっている。Eブロックあたりで無事でいるだろう。お前

さんは心配するな。」まっすぐでおおらかな気質。柔軟性があって人望もあった。シェーンコップやリンツにはない

よい資質を持った陸戦の雄である若いこの青年を、シェーンコップは大事に育てたつもりであった。だからこそ

ヤンの護衛につけた。必ず任務を全うするであろうと自分の名代として「レダII」にのせたのだ。



よかった。

「あのひとがいないと・・・・・・生きててもおもしろくないですからね・・・・・・。」

浅いが大きな呼吸を二度してライナー・ブルームハルト中佐は絶息した。壮絶な部下の死に様にシェーン

コップは無言であった。心中では悔いても悔やみきれぬ想いがよぎり、またたった一人でここまで戦いきった

男に敬意を表した。沈痛な表情は表さなかったが奥底では是が非でもこうなったらヤン・ウェンリーには生きて

もらっていないとと、小さな憤懣がシェーンコップの怜悧な眸にわずかに浮かんだだけであった。

ブルームハルトは0310時に戦死を遂げた。








Dブロックの途中でリンツと女医は暗い廊下で数人の動かぬ影を発見した。

女医はすぐさま駆け寄ってそれらの影が死んでいる暗殺者たちと生命の灯火がわずかに残る三人の仲間で

あると悟り、まずヤンの脈をとった。

「生きてる。ヤンは生きてる。」女医はリンツに叫んで、ヤンの傷を見た。が、とっさに沈痛な面持ちを一瞬

見せた。

左大腿部動脈叢貫通。

大手術になるなと女医は思う。

手持ちの医療器具で出血多量によるショック死を防ぐため薬物も使いながら、さらにほかの医療班で生き

残ったものにユリアン・ミンツ中尉とルイ・マシュンゴ少尉の手当をさせた。

「マクレイン中佐、ミンツ中尉の出血が止まりません。」

「直接圧迫を続けなさい。ミンツ中尉も手術をして血管縫合の必要があります。マシュンゴ少尉はどうですか。」

「昏倒していますが無事です。右大腿部と左肩に二発の銃創ですが致命傷ではありません。」

女医がストレッチャーを三台用意させリンツに「三人とも緊急執刀。特にヤン司令官とミンツ中尉の手術は

時間が勝負だから「ユリシーズ」に至急三人を収容することを告げて。」と手を止めることなく救命措置をしな

がら叫ぶようにいった。そのとおりリンツはシェーンコップに伝え三台のストレッチャーに患者を乗せ搬送。いち

早く女医と患者たちは「ユリシーズ」に引き上げた。

シェーンコップらは暗殺者たちが残した一枚の布を見つけた。地球教徒のものであった。テロリストで息がある

ものを三人連行して0330時。いつまでも狂ったような地球教徒の激しい攻撃を掃討し、全員「ユリシーズ」へ

退却した。

後日、エル・ファシル政権政府代表であるドクター・ロムスキーらの遺体を収容しなかったことに完全さを欠くと

評価されたがシェーンコップはヤン、ユリアン、スール、マシュンゴらの緊急手術により重要性をおいたから

当然の帰結である。人道的に劣ると言えるであろうが。

ユリシーズのオペルームが全部ふさがり一番難しいヤンの手術はミキ・M・マクレインが執刀にあたっている;。

軍医長であるバーソロミュー准将も患者の執刀をし、医療班は緊迫に包まれていた。

マシュンゴの怪我は一番軽かったがそれでも集中治療室に収容されている。



一体、生存者はどんな具合なんだとシェーンコップが軍医長に言った。

「スール少佐も重篤ですが一命は取り留めました。ミンツ少尉の出血もひどく一時は、と危ぶまれた状況

でしたが幸いに少尉が若く体力があったので手術も終わり集中治療室にはいっています。問題は・・・・・・

実は司令官です。」

一発の凶弾によって斃れたヤン・ウェンリー。大動脈叢をブラスターで貫通されているためすべての血管が

切断されており輸血を続けながら血管縫合の手術が続いているという。

「・・・・・・左足を切断する結果になるというのか。」シェーンコップは尋ねた。「そう易しい問題ではないのです。」

軍医長は言う。

手術が失敗すれば司令官は死ぬという。

切断すると血行障害が起き後日死亡することもある。切断は早くて一時生命をとりとめるには有効であるが

切れば血行障害や脳障害、寝たきりの生活になり長くはいきられない。

「だからマクレイン中佐も切らないでつないでいるんです。腕を切るのと脚を切るのでは少し状況が変わります。」

「それだけの血管縫合をあいつはしているのか。」

シェーンコップはあごを撫でながら漏らした。

「マクレインしかつなげられないでしょう。切るのは誰でもできます。ハイネセンで民間の医者をしてMは手術例を

3000超すのですから。そんな医者はいません。」

軍医時代、女医は夫とともにありたいという願いだけで医療の道に足を入れた。そしていつも夫以上の医師には

なれなかった。医療技術に乏しく、シェーンコップから見れば医師をなめてかかっている仕事ぶりでしかなか

った。あのころの女医には全力で医療に取り組む姿勢を感じなかったし、それもまた女の性(さが)かとシェーン

コップは見ていた。

けれど第六次イゼルローン要塞攻防戦において夫と上官両名を撤退する駆逐艦「エルムIII」で激しい揺れの中

生命を救った。医学上では。上官は予後の経過がよく回復を見せたがミキの夫、ジョン・マクレインは「脳死

状態」に陥った・・・・・・。



シェーンコップは過去の苦い思い出を振り払い手術は女医に任せつれてきた地球教徒の尋問にあたっている

ものたちの部屋に行った。

しかしながら尋問をする側は連隊長代理を殺されている。

復讐心を燃やしながらの尋問とされる側の狂信。

尋問は不発に終わる。

リンツがシェーンコップに「どうせなら役に立たない地球教徒を薔薇の騎士連隊に引き渡して華々しい殉教を

遂げさせろ」と言う。これは言葉を随分選んでいるが部下たちはこぞって連隊長代理と僚友たちの復讐を果た

したい様子で1センチごと切り刻んで下水に流してやるというものもいた。

「あわてるな。イゼルローンには巨大すぎる核融合炉がある。」シェーンコップは威圧とも迫力あるとも言える

言葉で部下の軽挙を防ぐことに成功する。



ヤン・ウェンリーは助かるだろうか。

シェーンコップは思いめぐらす。

女医とは長いつきあいだがハイネセンの彼女の家に行くのは頻繁でもない。男女の関係になろうと思ったのは

第一印象だけで、気性を知ってからはそんな想いは微塵もない。女医はしょっちゅう仕事をしていた。それは

知っている。自分の診療所だけじゃない。あらゆる病院で経験を積んだのだろう。手術例が3000というのは

多いのか少ないのかわからぬし、女が優秀な医者なのか実は宇宙へ彼女を呼び戻したシェーンコップですら

わからない。

ただ、昔から陸戦で恐るべき女であったのは間違いないし、銃の腕はシェーンコップを凌駕する。しかも危急の

時の瞬間的判断力は最たるものがある。そこを買ってつれてきたのであり、医師としてのミキ・M・マクレインを

完全に信頼をしているわけでもない。



もしもヤンが助からなかったら。

あらゆるものが崩れしてゆくだろう・・・・・・。

一度は祖父に連れられ帝国を捨てもう一度はヤンを助けて自由惑星同盟という国を捨てた報いであろうかと

らちもないことを暗澹とシェーンコップは要塞への帰路、考えあぐねるのであった。







20時間にも及ぶ手術を終えた女医はシェーンコップに深刻な現実を突きつけた。



「一命は取り留めたけれど、遷延性意識障害を起こす可能性が大きいわ。つまり自発呼吸はしているし

脳波もある。現段階で意識が回復するということはない。これが三ヶ月続けば遷延性意識障害で俗に言う

植物状態になる。今までのように司令官として頭脳を使うなど無理。意識の回復は現時点ではないわね。」

「・・・・・・それではおまえの亭主と同じ状況なのか。」

シェーンコップはやや青白い顔をしている女医に呟いた。

手術は困難を極めたのであろう。

「Jは脳死だった。脳死と植物状態とは違う。ヤンは醒めない眠りにはいっているだけでいつ目覚めるかは

今後の経過を見るしかないと言うこと。」

つまり・・・・・・。

「革命軍司令官を新たに擁立する必要があると言うことか・・・・・・。」独り言のように男は言い、女医は言葉を

継いだ。

「あなたほどのエゴイストはいないわね。私人としてのヤンは立派に生きている。覚醒するのはいつになるか

未明だけど、生きているのよ。結局公人としてのヤン・ウェンリーをあなたは要しているのね。」

この際。

「イゼルローンにはヤン・ウェンリーを仰いで集まってるものがごまんといるんだ。誰かがエゴだのマキャベリ

ストにならねばなるまい。お前さんの人道主義は今聞きたくない。」シェーンコップは切り捨てた。

「医師として言えることは意識は覚醒していないけれど治療方法はいくらでもある。植物状態の患者が自立

歩行まで緩解した例を私は69例見ているの。もう一つ付け加えると、潜在意識というものがあって決して患者

が耳にできる範囲で気落ちするようなマイナスの言葉は厳禁。これは徹底してもらわないと治療の妨げに

なるわ。」

邪魔をしないで頂戴ね。

いらだちを隠せないでいた普段は剛胆で不遜な男に女医は努めて穏やかに、けれど明言して背を向けた。

いずれにせよキャゼルヌ中将とアッテンボロー中将とは十分な検討をせねばなるまいとシェーンコップは一人

残されて思案していた・・・・・・。








「ユリシーズ」がイゼルローン要塞に帰還したのは6月3日1130時であった。出迎えにでた人間は女性提督と

そのおまけの亭主、要塞事務官であった。

「とんでもないことになったものだ・・・・・・。ヤンの状態がそれほど悪いとは。あいつはまだこれからだっていう

時なのに意識が戻らないとは・・・・・・。」キャゼルヌはのどを詰まらせた。

「ユリアンやほかの人間の具合はどうなんです。」アッテンボローはシェーンコップと並んでいる女医に尋ねた。

「重傷ですがユリアンは若い分、回復が早いです。マシュンゴ少尉は皆に比べれば受けた傷が軽かったし

体力もあって心配いりません。スール少佐もしばらくは絶対安静で。」



結局。

「ヤン・ウェンリーはどうなっちまうんですか。先生。」オリビエ・ポプラン中佐は小柄な女医に視線を向けた。



ミキ・M・マクレインは即答しなかった。

何も答えが見えないわけで返答をしなかったわけではない。

ヤンが生きていることは確実で、自発呼吸ができ脳幹も生きている。深い眠りについているだけで死んだのでは

ない。

ただ、ヤンが民主共和の人的象徴(シンボル)であるという概念は根強く、ポリティカル(政治的)な回答を求め

られているとしたら。医師としてどう回答すべきか考える時間が必要だったのだ。彼女は士官候補時代から

一個人のヤン・ウェンリーを知っているし逆に軍人として政治指導者としての彼を重く見ていなかった。やはり

帰路、シェーンコップと幾度か交わした会話のようにここイゼルローン要塞にいるものは公人としてのヤンの

もと集まっているのであり、事実そうであるならば。

意識のないヤンはこの要塞の人間にどのように影響を及ぼすのかは革命軍が今後いかなる道を選ぶかに

よって回答が変わるのである。

「軍事的指導者として今の元帥閣下は指揮を執ることは不可能です。政治的なことは私のような一医者には

預かり知らぬところ、です。ポプラン中佐。」

ミキが言うとアッテンボローは確かにと頷いた。



「司令官殿が生きている事実は喜ばしい。死なれたらたまらないよ。だが、感情抜きで今後の我々の方針を

ドクター・マクレインに問うのは筋が違う。どう進むべきかは残されたもので討議して決めねばなるまい。今

ここでしのごの言う話じゃないよ。オリビエ。」

女性提督は撃墜王殿にやさしく言った。

女医はダスティ・アッテンボロー・ポプランだけが現実と感情のコントロールを柔軟にとることができる人物

であると認識した。



「司令官閣下が生きておいでなのは事実す。ですから今後私が治療を担当しますが、患者の聞こえる範囲で

不安要素のある言葉は慎んでください。潜在意識で閣下は聞いておいでです。回復の妨げになるので、

アッテンボロー中将、これを徹底していただけますか。・・・・・・今後の行く末で患者に心配をかけるような発言は

医師として厳禁とします。104例の患者のうち69名まで自立歩行ないし意識の回復まで私は見てきました。

何事にも最悪の事態を予測して備えるのは大事でしょう。けれど患者が回復する楽観的な希望は担当医として

捨てません。」

私の今後の一生をかけて。

「必ず緩解させます。」

ミキの発言にアッテンボローは心得たと言った。

「残された宿題は我々幕僚で何とかする。先生、ヤン先輩をよろしくお願いします。」女性提督は一個人として

女医に後事を託した。



「女同士は理解が早いと見える。」

シェーンコップは怜悧な美しい顔に冷たさにも似た表情を浮かべ二人の女性を見た。「俺たちが今後どうするの

かはなるほど、当然俺たちで決めねばなるまい。問題はこの事実を誰がヤン夫人に告げるかってことだ。悪いが

俺は辞退をする。」女性の笑顔は好きだが嘆く姿は見たくないという風情の要塞防御指揮官殿は大きな問題を

提示した。ヤンだけではない。ユリアンとてフレデリカ・G・ヤンの「家族」であった。その二人がいまだ意識の

回復がない。ユリアンは回復のめども立っているがフレデリカの最愛の夫は未来が見えない。女医や女性

提督は希望的観測が得意らしいが到底、シェーンコップにはまねできそうもない。

「私が言うよ。」

アッテンボローは静かにその役目を引き受けた。

「フレデリカは親友だし、そのご亭主もその被保護者も私の人生における大切な友人だ。今言わなければ言わ

なかった時よりも私の悔いになるだろう。」



それでなくても。

多くの僚友を失った。

あれだけ地球教徒の存在を予測していたはずだったのに。

地球教の組織の力を甘く見ていた報いであろうとアッテンボローは一人言葉を胸に押し込んだ。



起ったことは起ったことだ。

もしも、ヤン・ウェンリーが死んでいたら。

女性提督は過去を振り返らない。振り返る資格はないともうすでに覚悟していた。



いつか、またあの笑顔を見せてくれますよね。先輩。

その言葉を心の支えにしてアッテンボローはもう、前を向いていた。



女医はそんな彼女を人間として高く評価した。男たちにはないしたたかな生命。同盟軍史上最年少にして、

史上初の女性提督。

彼女の度量はこの場にいるどの男たちよりもたくましく、生きている力を感じさせた。

失ったものたち。

ブルームハルトは最後の最後まで司令官を護衛するという任務を果たした。どれだけの激痛をこらえ戦った

だろう。パトリチェフ少将は身を挺して数多くの銃弾を受けながらヤンたちを逃した。狂った暗殺者を相手に

死んでいった僚友たちの遺体を要塞に還るまでの間女医は丁寧に、綺麗に清めた。

過去、女医の夫は脳死状態に陥った。

妻として。

生きていてほしかった。

けれど夫の遺言が出てきて「脳死状態に陥った場合、生命を維持する旨を拒否する」とあった。あらゆる体に

つけていた生命をつなぐチューブをミキはたった一人、自分の手ではずした。



ヤンは生きている。

フレデリカなら必ずヤンの回復を手伝ってくれる。

眠りについた魔術師とともに生きて行くであろうと女医は確信していた。

家族なら。

眠ったままでいい。

生きていてほしいと願うだろう。今後の看護は厳しいものであるが女医は夫がどんな状態であれ生きていて

ほしいと・・・・・・側にいたかったと未だそれが心に傷になって残っていた。

誰もこの傷を知らない。誰もその傷を知る必要はない。









お前ってさ。

オリビエ・ポプランはヤン夫人に会いに行くアッテンボローにいう。

「時々、命の塊だって思うほど強いところを見せるよな。」そんな夫に女性提督は心で思った。

自分たちの夢は、まだ死んではいない。

これからダスティ・アッテンボロー・ポプランにしかできぬ仕事が山ほどできた。今まであまりにヤン・ウェンリーに

甘えすぎていたのだ。これからのことは残された自分たちで道を開けばいい。そう腹をくくっていた。



そして、やはりもし愛するポプランが同じように戦いでヤンのように目覚める日がいつになるかわからない状況に

なったとしても。

彼女は彼から、離れはしないと深く感じたのであった。

フレデリカ・G・ヤンはまだ病床にある。

女性提督は迷うことなくその扉をノックした・・・・・・。




by りょう





本当なら医学の知識があればもっと冗漫でなくわかりやすくいろいろとかけたのでしょうが

勉強不足で申し訳ありません。「遷延性意識障害」の現状は今後追々書くとして、医療が発達している

この宇宙歴ですから回復するでしょう。繊細な問題をこのように題材にしていろいろとご意見もあるでしょう。

憤慨されたり、反感を持たれるかたもいてもおかしくはないのですが、ヤンが死なないという状況を

どうしても作っておきたかったんです。

フレデリカは英雄を愛したのではなく、いつも自分の責任を全うしようと力を尽くし生活人としては

無力に近い一人の男を愛したのです。民主共和政治より、眠っていてもヤンが生きているならば。

遷延性意識障害の回復はとても困難ですがこの現代においても皆無ではないのです。

経済的、心理的な負担が介護する側にあるのですがフレデリカとユリアンならきっとヤンを支えて

生きることを望んだだろうという私の妄想です。

切断して患者自身の本来ある生きる力をマイナスにするより血管を縫合して延命を図る方法がベター

だろうかと悩みつつ書いていたので遅くなった話です。

厳しい内容で心苦しいですが更新とさせていただきます。


LadyAdmiral