狂詩曲・4
絶食後、禁断症状で39度の発熱をポプランは何食わぬ顔をしてやり過ごした。 老夫婦の前では。 オリビエ・ポプランやイワン・コーネフは軍の精鋭中の精鋭兵士である。 発熱程度で変調を周囲に悟らせるようなことはない。 痛みや苦痛に耐えれる体になっている。 でもアッテンボローはポプランの体に触れるとかなり熱を持っていることに気づいて 心を痛めた。 妻としては彼を休ませて看護したいけれど、彼が寝込んでいる姿を見せれば今夜の 「決行」の妨げになることを戦術家として理解しているので元気なアッテンボローが 病人のふり、高熱を出しているポプランが健康なふりをして朝、ポプランはいつものように 礼拝に出かけた。 老夫婦がいなくなり昼間二人きりになるとアッテンボローはポプランが脱水症状を 起こさぬように監視カメラの死角でアルカリイオン水の残りを口に含ませた。 「そう心配するなよ。おれはもともと自主的奉仕に参加していないしこういう熱は 時間が来れば下がるんだ。俺やコーネフ、マシュンゴは大丈夫だろうがユリアンと 船長が心配だな。いやユリアンはともかく船長は・・・・・・お年を召しているからな。」 39度の高熱でいまだにボリス・コーネフに毒づくことができるポプランにアッテンボローは 少し安堵する。 心配するなってとアッテンボローのベッドに粗末な布で間仕切りをしてポプランは彼女を 抱きしめた。 「かなり汗をかくね。やっぱり熱が高いからだな。着替えよう。オリビエ。」 アッテンボローは抱きしめたポプランの熱い体温を感じて自分の荷物から男物の衣類を 取り出した。 この二人はトップスに関しては同じサイズなので便利であった。 「女物を持ってこなくてよかった。ほらぬいで。」 「いまいち色気が足りない脱がせ方だなあ。」ポプランはいくらでも減らず口をたたける。 「高熱だもんな。ほかのみんなもこんな症状かな。」 アッテンボローはかまわずポプランのシャツを脱がせて汗を拭いてやる。 なんかさ。 ポプランは言う。 「このつましい空間でお前に介抱されちゃうと・・・・・・老後を想像しちゃうな。」 「ばか。」 それとか貧窮した生活の中でいたわりあう夫婦の姿ってやつ。 「美しいよな。清貧。」 ポプランが新しい衣服を着せられつつ言う。 「・・・・・・やっぱり熱で言っていることが変だ。オリビエ。かわいそうに。」 「こういうのを夫婦善哉とかっていうんだぜ。ダーリン・ダスティ。」 じゃあ。 「下のほうは緩んでないのか。私は下したけど。なんならパンツも履き替えさせてあげるよ。」 普段なら大歓迎だとポプランは言う。 下のお世話はできれば違う意味でしてほしいと撃墜王殿はアッテンボローの耳元でささやいた。 ・・・・・・。 「・・・・・・・本気?」アッテンボローは赤面して小声でつぶやいた。 「90%は本気。」ポプランはため息混じりにつぶやく。 でもなあ。 「今夜がエックスデーだとして俺たちが監視カメラのある部屋でイイコトしちゃうと 計画丸つぶれだからな。10%はかなえられぬ希望ってところ。」 そういったポプランの唇にアッテンボローは唇を重ねた。 「ここから出られたらいっぱいイイコトシヨウね。オリビエ。愛してる。」 もう。こういうときだけ。「ダーリンは積極的なんだよな。あんまり誘惑すると 本当に襲うからな。」 ポプランは地球になんぞ来るんじゃなかったとつぶやいてアッテンボローのベッドに 横になった。それからすぐに規則正しい寝息が聞こえてきたのでアッテンボローは 熱が高いせいだなと思ってポプランの額にそっと手を添えた。かなり熱い。 禁断症状による発熱だから汗や尿などで毒素を放出させるしかない。 けれど本人は口にもしないしそぶりにも出さないが熱で頭痛と関節が相当 痛んでいるはず。 かといって医療用のゼリーパームはないしサイオキシン麻薬が混入されている水で 彼の額を冷やすのもよくない気がした。一度にアルカリイオン水を飲ませても嘔吐 させてはポプランの体に悪いから彼の唇が乾いた時点で少しずつ口に含ませた。 本当は動脈を冷やすのが効果的なんだがとアッテンボローは考えるが冷却材がない。 体を温めるのはポプランにはいいのではと思ってアッテンボローは上の段にある彼の 毛布で彼をくるんだ。汗をかくのはこの場合よい。ポプランはぐっすり眠っている。 彼は多分大丈夫であろうけれどアッテンボローはユリアンや船長は大丈夫だろうかと 思った。船長の場合はコーネフもいるから何とかなりそうだしマシュンゴも一人でうまく 禁断症状に耐えていると思われる。 けれどユリアンはどうだろう。 彼のことだから部屋にこもっていないで自発的奉仕活動を続けているような気がした。 眠っているポプランが咳き込んだ。これも禁断症状のひとつだろう。 バックパックに入れていたガーゼを取り出して安全なアルカリイオン水を口に含ませる。 無意識にポプランは水をなめて少しせきがおさまった。 アッテンボローの手元にあるアルカリイオン水が船長の持ってきた水のすべてであり 船長やコーネフにも渡しにいきたいと思った。マシュンゴやユリアンにも。 しかし目立つ行動は避けねばならない・・・・・・・。 すっかり寝入ったポプランはどんどん汗をかいている。 彼でさえこうなのだからほかの仲間もひどい目にあっているはずだとアッテンボローは 考えてポプランの汗を一通り拭いたらわずかなアルカリイオン水を仲間に渡しにいこうと 決意した。 ポプランなら反対するであろうが止むを得ない。 彼女が寝込んだときに・・・・・・サイオキシン麻薬の禁断症状であったわけだが 船長やコーネフたちが助けてくれたことを思えばじっとしておれない。 フードを目深にかぶって小分けにした小さな水のボトルを抱えて目立たぬように 間仕切りの布の外に出た。 アッテンボローはこの本部建物を数度しか歩いていないが彼女は方向音痴ではなかった。 聖堂を通り抜けた反対側に船長とコーネフの部屋があったはず。その向かいにマシュンゴ。 ユリアンの部屋だけはわからない。 アッテンボローは小瓶をポケットに入れて手に雑巾を持った。 ほかの巡礼者を真似たのである。 ポプランは「病気の妻」の看病のため礼拝しか普段出ていなかったがあとの仲間は今頃 勤労奉仕の真っ最中であろうと判じて聖堂に向かった。 褐色の肌をした大男を見つけて近づいた。「提督。」とひとことマシュンゴは言っただけで 食料の袋を抱えたまま汗だくでアッテンボローを見た。 「脱水になるのを避けるために君の分だ。一度に飲むと吐くから少量ずつのどを湿らす 程度に飲むんだ。」とマシュンゴにアルカリイオン水の小瓶を渡した。 アッテンボローは彼からすぐに離れて聖堂のモチーフや椅子を拭き始めた。 ほかの仲間はどこにいるだろうか・・・・・・。 聖堂には見当たらないので食堂付近に足を伸ばした。 通路を掃き清めているイワン・コーネフを見つけた。 アッテンボローは壁の装飾を拭くふりをしてコーネフに近寄った。 「どうしたんですか。提督が出歩くのはよくないでしょう。」 小声でコーネフが言う。彼も発熱しているのだろう。だが動きや目線はしっかりしている。 「安全な水を返しにきた。船長にも渡して。」アッテンボローは床を拭くふりをしてかがみこみ コーネフの足元に2本の小瓶を置いた。 「ポプランは何してるんですか。」というから「寝てる。」と答えた。 これ以上の会話はできそうもない。夫の弁護はこの際後日に。 アッテンボローはいったん集団トイレに身を隠した。 あまり続けざまに仲間に接触をすれば聖職者たちに怪しまれる。 あとはユリアンに水が渡せればいいのだけれど・・・・・・。 そこにボリス・コーネフ船長が入ってきた。 「あんた、ずいぶん気が利くな。水は助かるぜ。ここの水はやばいらしいから。」 「借りた恩義はささやかでも返さなくちゃな。ユリアンを知らないか。あの子に水を 渡したいんだが。」 アッテンボローの持っている小瓶を船長はこちらに渡せという。 「俺が坊やを探す。あんたは一応不治の病の奥方だからこれ以上うろうろするな。 よくまああんたの小うるさい亭主がこんな無茶赦したな。」 アッテンボローは苦笑して船長にユリアンの分の水を渡して言う。 あいつ、寝てるから。 ふんと鼻を鳴らした船長は熱が高くても辛らつに言った。 「あいつは使える男かそうじゃないかよくわからん男だな。麻薬に気づいたカンの 鋭さはなかなかだったが昼間から寝ているときた。こっちは意識朦朧で自主的 奉仕の真っ最中なのにな。」 でも。 「私の最愛のだんな様だ。」アッテンボローは美しい笑みを見せた。 ともかく今夜決行する。 医務室に2200時集合だと船長は言った。アッテンボローはうなずいて先に いかにもひ弱そうに拭き掃除をしながら部屋に戻った。 携帯してきた医療アルコールで手を消毒して自分のベッドにもぐりこむと気配を感じて ポプランはうっすら目を開けた。まだ彼に与える水は十分ある。 水しか今のところ有効なものがないことが女性提督には歯がゆい思いはしたけれど 仕方がない。ガーゼにアルカリイオン水を含ませてポプランの乾いた唇に吸わせた。 「・・・・・・外に出たのか。」 うん。野暮用でねとアッテンボローはポプランの体の汗を拭き始めた。 今夜2200時に決行だとさと彼女はポプランの耳元で甘くささやいた。 「医務室に集合。」 俺の場合は・・・・・・「俺の場合は昼間出た症状がピークだと思う。今夜22時ごろは ご機嫌な体調に戻ってるぜ。ダーリン・ダスティ。」 みんな働いてたよとアッテンボローはポプランの額に接吻けを落とした。 「俺はたいていひとより何でも早く兆候が出るんだ。新陳代謝が活発だからな。ほかのやつら 昼間動けるなら夕方か夜あたりがピークだろうぜ。」 そういうとまた目を閉じた。 夕方には元気になっているといいたいところだろうが本当にそうだといいなと アッテンボローはポプランの身を案じて思った。 実際、夕方になるとポプランはしっかり起き上がり部屋の老夫婦と談笑して 礼拝に出かけた。「じゃあ。いってくるよ。お前。」 など芝居めいた口調で言う。アッテンボローはポプランを引き寄せて額に唇をつけた。 熱が下がっている・・・・・・。 いつものようにでかけた夫の後姿を見ながら「新陳代謝が活発なやつは違うな。」と 感心して心でつぶやいた。 ユリアンは通路でボリス・コーネフに出会い安全な水を手に入れることができた。 「・・・・・・まさに生命の水ですね。ありがとうございます。」 青年は小声で船長に礼を言った。 二人は肩を並べて静かに歩いた。「差し入れは女性提督からだ。亭主が寝込んだらしい。」 ほかにも巡礼者たちは数人で静かに話しているのでこの二人が格別目立つわけではなかった。 「ポプラン中佐・・・・・・大丈夫なんでしょうか。」 大丈夫だろうと船長は言う。 従弟のイワン・コーネフに事情を話すと「オリビエ・ポプランは新陳代謝が人一倍活発なので とっとと高熱を出して夕方にはけろっとしていると思う。多分一番回復が早いはずだ。」と 答えが返ってきたという。 「イワンが言う言葉に賛成するが昼間かろうじて動けた人間は今夜が禁断症状のピークに なると思う。発熱や悪寒、せきなど。感冒に似ている症状だ。今夜2200時医務室に集合。 お前さんの探しているものがようやく現れる可能性がある。・・・・・・しっかり耐えろよ。」 ええ。大丈夫ですと青年は小さな声だがしっかりと答えた。 その場で二人は離れた。 26日の夜にポプランが食事にサイオキシン麻薬が混入されていることを看破した。 あけて7月27日。 今日一日ユリアンはなんとかふらつく足元に気をつけて勤労奉仕にいそしんだ。 昨日の夜から幻覚のような夢を数度も繰り返してみていやな寝汗をかいた。 動いたほうが怪しまれないし熱ならば発汗させるほうがよいと判断して奉仕作業に 取り組んだものの昼間になるとめまいやおくびがでた。 いやな汗が背中を伝い寒気がした。部屋で着替えをしたけれどすぐにシャツは 汗だくになる。 青年は育ち盛りであったので空腹もこたえた。 かといってサイオキシン麻薬中毒患者になるのは16歳の青年は怖気のふるうことで なんとか空腹を耐えた。 さっきの船長の話によれば夕方から夜にかけて禁断症状がピークになるとか。 確かに昼間以上に今は視界がかすむ。夕方の礼拝が終わって早々に部屋のベッドに 倒れこんだ。 頭がぼうっとするから多分今自分は発熱しているのだとユリアンは考えた。 アッテンボローの差し入れの水はこの際ありがたかった。 今夜2200時にはアクションを起こす。 ユリアンはいつもポケットに忍ばせているブランクメディアを確認して目を閉じた。 といえどとても眠れそうもない。関節が痛む。しっかり間仕切りの布を引いてベッドで 丸くなって苦痛に耐えていた。 何かが崩壊するような感覚。 手足がもぎ取られそうな痛みと漠然とした不安感。体中からにじみ出る毒素の強い汗。 何もかもが青年を不快にさせたがとうとう幼児期以来でなかった激しいせきが出始めると 沈着冷静な16歳の青年は焦った。 腕の時計はまだ2050時を指している。 2200時までは何とかこらえなければならない・・・・・・ユリアンは次から次に出てくる いやなせきを手で押さえて外部に漏れないように努力した。しかし間仕切りは毛布のような 古ぼけた布だけである。 同室の信者はユリアンのせきがうるさいというものもいたし心の優しいものは 医務室に行ってはどうかと薦めてきた。 大丈夫ですと布越しに親切な声にこたえた。親切・・・・・・。普通ならば親切だが この際は無用なお世話である。 下手な時間に一人で医務室に行けば医者に禁断症状を見破られて麻薬を体に 投与されるであろう。 2200時になれば・・・・・・。 アッテンボローからの水も飲み干した。激しい頭痛にめまい。この激痛をポプランや 船長、コーネフ、マシュンゴも耐えているのかと思うと自分ひとりが脱落はできない。 ユリアンは幼いころ風邪を引くと咳き込んだ。体を鍛え健康になると風邪を引いて 寝込んだのはイゼルローン要塞に移住した14歳のころ以来である。 苛立ちと焦りと不快さにさいなまれつつ時計を見ると2130時。 溜め込んでいたせきが怒涛のようにあふれ出て、そのとき・・・・・・。 聖教者の一人がもだえ苦しむ青年に甘い声をかけた。医務室へ行こうと。その男の 背後にはおびえた顔をした巡礼者たちと監視カメラ・・・・・・。30分ほど早いけれど ユリアンは医務室に行くことを同意した。 羊のように従順なふりをして青年は通路を歩いて医務室へ連れて行かれた。 早かったと思っていたがもうそこにはアッテンボロー、ポプラン、マシュンゴが医者の 問診を順々に受けていた。ポプランなどは元気そのものできらめく緑の眸で ウィンクまでよこした。 コーネフたちの姿は見えない。こちらに向かっているのかもしれないと青年は 考えてあいている椅子に腰をかけた。 ただしいつでも戦闘開始できる体勢だけはとっていた。 空々しく医者が今日は具合の悪い患者が多いとつぶやくとポプランはそれをしおに 靴で床を蹴った。 サイオキシン麻薬漬けの飯をさんざん食わされたからだよとコーネフが合流する前に あっさりと医者に向かってほえた。 サイオキシン麻薬と聞き医者は顔色を変えレーザーメスを握ってポプランに向かって 振りかざそうとしたがまずオリビエ・ポプランをしとめることなど無理である。 医者の机の上にあった注射器をポプランはひとつダーツのように投げ医者の右目に お見舞いした。眼球に注射器が刺さったのだから医者は発狂したように大声を上げ それを聞きつけた地球教徒の男が二人、高電圧銃を構えて医務室に入り込んできた。 女のアッテンボローを見ると一人が彼女に襲い掛かったがアッテンボローはこういう けんかは得意だ。 襲い掛かってきた男の腹部にすばやくひざをめり込ませかがみこんだ男の首に 手刀を振り下ろした。 もう一人の地球教徒はマシュンゴによって壁と激突させられ意識を失った。 「提督相変わらずお見事ですね。」 だんだん生気を取り戻しつつあったユリアンはアッテンボローの鮮やかな手並み・・・・・・ 足並みをほめた。 「いや。私の亭主はもっとサディスティックだよ。」とアッテンボローはポプランに 視線をやった。ポプランは相当量のサイオキシン麻薬の袋を開封してコップに水を入れ 濃度の濃い薬液を作った。そして一番大きな注射器を使ってそのサイオキシン薬液を たっぷり注入するとマシュンゴに右目をつぶされ激痛にあえいでいる医者を押さえ込ませ 腕にゴムのチューブを巻かせた。 「さあ。お注射の時間だ。これだけの量のサイオキシン麻薬を打てばどうなるか 医者のあんたならわかるよな。」と紳士的に口調を和らげた。やめろと叫ぶ医者に 「うんうん。実は俺もこんな真似はしたくない。だが俺のワイフにサイオキシン麻薬入りの 飯を食わせたお前さんたちの罪、到底赦せないね。じゃあな。下種野郎。」 とさわやかな笑顔で医者の腕の皮一枚程度に注射器の先端をちょこっとさした。 まだ命乞いをする医者。ポプランはふむといってユリアンに目配せをした。 話を聞き出せるぞということであろう。 青年はずいぶん楽になりつつある体で医者に地球教の秘密を尋ねたが 医者は自分は末端の医者だから知らないと白状した。「じゃあ末端の医者として この世とおさらばだ。ごきげんよう。」とポプランがことさらに上機嫌で言ったら その言葉で医者は気を失ってしまった。 「ずいぶん繊細な医者だなあ。」とポプランは面白くなさそうにつぶやいた。 いじめすぎたからだよとアッテンボローは苦笑した。 「お前ってけっこう意地悪なんだな。オリビエ。」とアッテンボローが言うと そうなんですよと入り口でイワン・コーネフの声がした。 「俺らが来る前に何してるんだ。お前は本当に協調性のない男だな。」 ボリス・コーネフがあきれて文句を言っている。 そのとき部屋に警報が鳴り響き銃声や爆音が聞こえた。 異教徒が襲ってきたと医務室に飛び込んできた地球教徒の男三人は マシュンゴ、ユリアン、コーネフが一撃のもとしとめた。 「異教徒って私たちのことかな。」アッテンボローはうきうきした口調で言った。 喜んじゃだめですよとユリアンは言ってみたが無理そうである。 ポプランは気絶した聖職者の僧衣を脱がしにかかっている。 これで変装をするつもりらしい。 「男の服なんぞ何が悲しくて脱がせなくちゃいけないんだ。俺には美しい妻がいて 蜜月なのにな。まだ結婚して一年にもなっていない新婚なんだぞ。」とぶつぶつ いって黒い僧衣を剥ぎ取った。 アッテンボローたちもいやな仕事だなと思いつつ地球教徒の衣服をはいでいる。 ふと開いたドアからポプランは外の様子を黒い僧衣を肩にかけてみてひゅうっと 口笛を吹いて三歩ほど後退した。 「ダーリン・ダスティ。俺以外の男の服を脱がすのはやめだ。脱がすのは俺だけに してくれ。それに・・・・・・どうもこの変装も役に立ちそうもないほど事態は劇的な展開を 見せている模様だ。」 ポプランは首を振ってユリアンは「どうしたんですか。」とたずねた。 人生ままならぬということだ。青年よとポプランはウィンクをしてユリアンに ドアの外を指差した。 銃撃戦が展開され本部建物のあちこちに火が放たれていた。 しかも重火器から火炎を吐き出しつつ前進している帝国軍装甲服兵士団の一群が みえた。 「ほお。珍客だな。」アッテンボローはさらにうきうきして言う。 うれしそうにしないでくださいとユリアンは言ってポプランに何か考えはないものか 詰め寄った。オリビエ・ポプラン中佐はうーんと天井を見つめて思案した。 「ユリアン。ポプランの作戦はいつだって「行き当たりばったり」なんだよ。」 とイワン・コーネフは苦笑した。 医務室で大人5人と半分大人1人が今後の策を模索していた・・・・・・。 fin by りょう こんなところで終えるなといいたいところでしょうが原作もここでシェーンコップに 舞台がチェンジしています。やっぱりコーネフは生きててくれてうれしいです。 |