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弱気で美女を獲得できたためしはない。・2
部屋にはフランス窓というものがついていて内側から外に向けてあけることができる。 でもぴたりと閉めてカーテンを引いた。 やれやれ。監視されているなとヤンは思うがある意味、仕方あるまいとも観念した。 ホテルといっても山荘風のものをキャゼルヌがしきりによかったというからフレデリカが端末で しらべてなかなか素敵だというから決めた。ここには10日間滞在する。 昨日ハイネセンでささやかに挙式をして友人知己を招いてにぎやかなパーティをした。 結婚式にはキャゼルヌ夫人も令嬢も来てくれたし、ユリアンもまだ旅立ってはいなかった。 「三月兎亭」での心温まるパーティでは結婚式は招待をしてもこなかったシェーンコップも来た。 美人がひとの妻になる式典は彼にとっては忌まわしいものであるという。アッテンボローのときも そういっていた。 たしかにフレデリカの花嫁姿は・・・・・・なんというえばいいのだろう。 普段だってとってもきれいな女性だがウェディングドレス姿は・・・・・・宇宙一の美しさといっても いい足りない。 フレデリカにそれをいうとアッテンボローのほうがきれいだと照れるのだが・・・・・・彼女もきれい だったが、やっぱり自分の妻が一番きれいに決まっている。 アッテンボローより断然私のフレデリカのほうがきれいだ。 たくさん写真を撮ってもらっているし映像もあるはずだから、フレモント街の新居で、しばらくよい 目の保養になるなあ・・・・・・。 私はやさしい女性が好きだし、このうえ賢く美しいのだからよい夢を見ているみたいだ。 時々恐いので自分の頬をつねる。 でも痛いだけで何も変わらないので安心する。 ・・・・・・結果としてシェーンコップに見せなくてよかった。 昨日は遅くまでみなで騒いで夜、ゲストにご帰宅いただいて私たちは市内から200キロほど はなれたこの地方に来た。 二人ともシャトルで寝たしこの山荘風味のホテルに来て朝も私は寝た。 ゆっくりとおきて朝食と昼食の中間の食事をとってのんびり昼下がりに釣りに出かけた。 ということできっと世間では今夜を新婚初夜というのだろうな。 こういうときに泥酔でもしたら一生頭が上がらないとキャゼルヌはいう。 でも私はフレデリカに頭があがらなくてもいいと思うし、あのかわいいお尻にならしかれてもいい。 「写真はいつできるかな。もうできているだろうな。私より先にキャゼルヌあたりは見ているだろう。 本当に君はあのドレスが似合った。いまもきれいだけど・・・・・・本当に宇宙一きれいだったよ。」 ・・・・・・いっておくが私は酒によっているわけではない。 お互い好きで結婚した相手だから安心していえるだけだと思う。 夕方に買ったチーズをつまんでは白ワインを飲んでいるけれど彼女のペースに合わせて まだ2杯目だ。 全然素面。 きれいだと思ったことを自分の妻に言って何がいけないだろう。 「・・・・・・さっきからあなたは写真のことばかりおっしゃって。恥ずかしいです。」 フレデリカはお酒が全く飲めないわけではないが飲まないそうだ。でも今夜は一杯の白ワインを 少しずつ口にしている。 「花嫁自慢というわけじゃないけれど本当にきれいだったからね。・・・・・・あ。もちろんいまの 君もきれいだよ。・・・・・・ずっときれいだと思ってきていたけれど職権乱用になったりセクシャル ハラスメントになりそうで・・・・・・・・仕事をしているときにはいえなかった。女性士官を副官に迎えた のは初めてだったから最初は困ったものさ。」 私がつい頭をかいていうとフレデリカは言う。 「でもアッテンボロー提督がずっとおいでだったでしょう。むろん副官ではないでしょうが女性士官の 扱いに困ることもなかったのでは・・・・・・。」 「うん。でも・・・・・・アッテンボローは普通の女性じゃないよ・・・・・・。バーミリオンでポプランが行方不明 になった三時間彼女は耐えた。あの子は胆力がある。あれほどの女性もいないと思う。よく分艦隊を 乱さないで指揮したものだ。・・・・・・ダヤン・ハーンで仲良くやっているだろうか。あの二人は。」 つい数日前に別れたばかりの後輩とその亭主のやり取りを思い出す。 いろいろとあったけれどあの二人にも幸せになってほしい。 ユリアンに地球へ行く前にダヤン・ハーンのメルカッツ提督への言伝を頼んでいるが、おそらく もうすでにあの帝国からの客員提督殿は私の伝言を予期しておいでではないだろうか。 60隻の船では到底艦隊としての機能はなしえない。文書にしてはまずいからユリアンには 口頭で伝えるように頼んでいる。 5年。 あの「動くシャーウッドの森」をを動かさずにいれればそれに越したことはないけれどさて、帝国も 同盟もどう出るのだろうな。 「きっとお二人ともいまも仲むつまじく暮しておいでですよ。以前ポプラン夫妻、あのころはまだ恋人同士 でしたけれど二人のお部屋に泊めていただいてアッテンボロー提督にチョコレートを作るのを教わったん です。ポプラン中佐はアッテンボロー提督をそれはもうかわいらしくて仕方がないという目でみておいでで ・・・・・・ちょっぴりうらやましかったです。」 ああ、あの紅茶のチョコレートか。 あれは美味しかったなあ。本当に。甘さも控えめでさくっと食べれて。 「あのチョコレートは本当に美味しかったよ。夕食後すっかり食べたからユリアンが笑っていうんだ。 今夜はいつもより丹念に歯を磨いて寝てくださいねって。私は甘いものは苦手だけれどあの 紅茶のトリュフというのだっけ。あれはよかったなあ。一年に一度は食べたいな。」 ええ。あれなら失敗しなくてつくれると思いますと妻がにこやかに言う。 「そんなに料理のことは気にしなくていいよ。私は毎日サンドイッチでもいい。・・・・・・何もすべての女性が 家事の達人である必要はまったくないし私は家政婦さんと結婚したのではない。・・・・・・君だから 結婚したんだ。苦手なことを無理にこなそうと思わなくていいんだよ。フレデリカ。」 私も苦手なことはたくさんあるけれど君は赦してくれているじゃないか。 「それはそうですけど・・・・・・できれば美味しいものをあなたに食べていただきたいですもの。」 ・・・・・・じゃあ。美味しそうなものを早速いただこうかな。 そっと彼女の唇にキスをした。 「・・・・・・こういうのは私の柄じゃないと思われるだろうけれど・・・・・・君が一番美味しそうだと 思って。・・・・・・君がほしいんだ。フレデリカ。」 言ってしまったけれどほしいものはほしい。 フレデリカは頬を真っ赤に染めて一度私を見てうつむき、頷いた。本当なら彼女を抱き上げて寝室に 運ぶだけの膂力がほしいところだけれど彼女の手を引いて・・・・・・細い腰に腕を回してみた。 「その・・・・・・私はなぜかみなから聖人君子のように思われるけれど・・・・・・一人の男に過ぎない。 ・・・・・・愛しているよ。フレデリカ。」 本当に大きな眸。あまりにきれいでついまぶたにくちづけをした。 そしてもう一度唇を重ねて・・・・・・。 華奢な彼女の体を抱き寄せて寝室に入った。 私たちは新婚夫婦だからこれでいいんだ。好きな女性を抱きたい気持ちは魔術師と呼ばれる 人間だってある。 弱気で美女を獲得できたためしはないというではないか。 言葉にしないとわからぬものは言わなくちゃいけない。 けれど私の美しき妻は多くを語らなくても私をやさしく受け入れてくれた。フレデリカには多くの美点が あり、それは私に対して寛容でありよく私の意を汲んでくれることだ。 彼女からとてもよい香りがする。 香水なのかな。 彼女を壊さぬようにベッドでそっと抱き締めて。フレデリカははじめてなんだろうかと思いつつ、 はじめてであれ経験豊かであれ(私にはそうは思えない)とにかくやさしく・・・・・・彼女と肌を あわせた。愛する女性との行為は心にあたたかな甘い疼きがある。 「もし痛かったら痛いというんだよ。フレデリカ。」 いいえ。私大丈夫ですとほほを染めて言う彼女は、やっぱりとてもいとおしかった。 ダヤン・ハーン基地ではハイネセンの放送を受信できる。 時事ニュースくらいは情報として必要である。 「うちの野暮天司令官殿は姫と結婚式を上げたらしいぜ。新婚旅行に出かけたとか報道されてる。 ふむ。・・・・・・果たしてちゃんとできたのだろうか。」 オリビエ・ポプランは端末でそのニュースを見てにへらと笑った。 女性提督は夫に珈琲を入れてカップを渡した。 「ばか。そんな下世話な心配しなくても先輩だって童貞でもないんだからできただろう。はい。 食後の珈琲だよ。だんな様。」 サンキュと言ってポプランは愛妻の唇にキスをひとつ。 「フレデリカの結婚式にはでたかったなあ。彼女自分の結婚式でまさか大泣きしていないだろうな。 私たちの式の時によく泣いてたね。フレデリカは。」 椅子に座ったポプランの膝の上にアッテンボローは座っていいと眸で彼に訴える。 オリビエ・ポプランはアッテンボローのかわいいお尻に敷かれることがだいすきだから、ぽんぽんと 自分の膝を叩いた。座っていいよという合図である。 「童貞じゃなかったんだ。あの司令官。」 「・・・・・・あのひと32歳だしね。英雄だから。といってご乱行をしていたわけじゃないけどユリアンを 養子にもらったころ女性と付き合ってたよ。ユリアンの母親になれそうな女性を探したみたい。でも 好きになれなくて結局わかれたそうだ。先輩も確か初体験は早かったな。15くらいじゃないかな。 士官学校に入る前にってきいた覚えがあるな。」 ええ、とポプランは驚く。 制服組はみんな案外ませてるなと初体験が17歳だったもとレディ・キラー殿は呟く。 「ヤン先輩のお父さんって結構ハンサムでね。亡くなっておいでだけれど一度は離婚して次に 美しい奥方を迎えた人なんだ。その美しい奥方が先輩のご母堂。それこそ美人薄命で先輩も 母君のことは覚えていないらしい。ということでなんていうかな。案外先輩はお父上のDNAを 受けついでらっしゃるのではないかな。女性の扱いが全く下手なひとでもないんだよ。 ・・・・・・でも好きなタイプじゃない女性との色恋沙汰は面倒くさいらしい。」 先輩はフレデリカが好きだからうまくいっただろうとアッテンボローはぶつぶつ文句を言うポプランの 秀でた額にキスをした。 「できのいいユリアンをあれだけかわいがるのだからかわいい妻をたいそうかわいがるのは眼に見えて いる。今度あったら絶対のろけをたんと聞かされるよ。」 「ふうん。のろけならうちも負けないけどな。愛してるぜ。奥さん。」とポプランはアッテンボローの頬に 何度もキスをした。こそばいってと彼女は笑った。 「フレデリカのほうが若いからヤン先輩の子供をうんじゃいそうだな。・・・・・・うちもがんばってるんだけど。」 アッテンボローはポプランの子供が生みたいと常々思っているのでつい本音を言った。 「まあ、競争じゃないからさ。ダーリン・ダスティ。あんまり不安になるな。昔から言うだろ。仲のよすぎる 夫婦にはなかなか子殿が授からないって。うちはそれだと思うぜ。かといってお前と仲たがいするのは 俺はいやだ。」 赤ん坊より目の前の夫をかまってと冗談でポプランは唇を少し尖らせた。 丁度いい形だったからアッテンボローはその唇に自分の唇を重ねた。 「うん。私もお前と冷えた関係になるのはいやだ。・・・・・・いつもくっついてなくちゃやだ。」 ポプランは実に素直でよろしいとアッテンボローを抱き寄せる。 翡翠の色をした髪が随分伸びてきた。「あとで髪を切ってやろう。俺はこれでも得意だ。」 「女の髪を切るのがか?」と意地悪くアッテンボローは尋ねた。 「うん。男の髪なんぞ切ってどこが面白いと思う。愉快さもときめきもない詰まらん作業じゃないか。 ・・・・・・それとものばしてみるか。もう一回。にしてもこまめに切ったほうが髪は伸びるから ちょっと整えてみよう。」 さらさらとした感触のアッテンボローの髪をやさしく撫でてポプランは言う。 「お前の髪はどうする?・・・・・・私には切れないと思うけど・・・・・・。」アッテンボローは赤めの金髪に 指を入れて思案する。 「んー。まあコーネフにきってもらう。どうせやつも散髪してくれって俺に言ってくるだろうし。」 ・・・・・・アッテンボローがみょうな目線を送ったのでポプランは否定した。 「いや、飛行学校時代は金もないからお互い髪を切ったことがあったんだ。妖しい男の 楽園じゃないぞ。・・・・・・そりゃお前に髪をいじられるほうがおれはいいに決まっている。・・・・・・お前 男の髪って切ったことないだろ。」 アッテンボローの白い首筋に唇をそっと当てて言う。 首筋はキスマークがつくと女性としては恥ずかしいだろうと思うのでポプランはそっと 白い肌にくちづける。 「うん。ないな。姉に切ってもらうことはあってもひとの髪の毛を切ったことはない。」 そういえば。 「いつも髪を洗ってくれるだろ。お前。」アッテンボローは宙色の眸でポプランに言う。 「うん。この三年ほどな。不満か。」 ちがうよ。 「・・・・・・私もお前の髪を洗う練習したほうがいいかなと。これからもずっと一緒に暮すんだったらね。 老後のことを考えて練習・・・・・・したほうがいいかなとか思って。」 少し上気した頬がたまらなくかわいらしくていとしい。 ポプランは彼女の唇にやさしくあまいくちづけをする。 彼にとってアッテンボローの唇は甘い媚薬のようなもの。 いくらくちづけを重ねても足りない。 「うん。ずっと一緒だ。ずっと。・・・・・・ということは善は急げだから早速風呂で髪を洗ってくれ。 ダーリン・ダスティ。幸い今日は休日だしな。いまから風呂に入ろう。よしよし。」 いや、よしよしじゃなくてさ。 「まだ朝なんだよ。」 「おう。うちも新婚だからな。休日の朝に二人で風呂に入ったとしても誰にも文句はいわせんぞ。」 いやそうじゃなくってさとアッテンボローは抗弁したが。 朝だろうが夜だろうが結婚一年が近づくこの二人はまだ新婚と言い張り甘い時間を共有する のである。あと2ヶ月もすればこの二人が結婚して一年になる。 あちらこちらで幸せな光景が見受けられるこのころ。 つかの間の平和であっても戦争よりははるかによく。 ヤン夫妻もコールダレーヌの山荘風味のホテルで監視の目があるもののごく普通の新婚夫婦 生活を10日間過ごし、フレモント街の新居での生活を始めた。ヤンは新居の片づけを手伝おうと 妻に言ったが。 「私、料理はだめですけれど掃除や整頓には自信ありますわ。あなたは・・・・・・」 フレデリカは少し考えてヤンにいった。 「あなたはゆっくりお昼寝をなさってください。私はそんなあなたがだいすきですから。」 と愛らしい一言を付け加えた。 あまりにかわいらしい一言だったので亭主のほうはいたく心を打たれ、愛妻の額にくちづけをして ソファに気楽にごろりと寝転んだ。 フレデリカはその姿を見て微笑み、いそいそとヤン家の主婦らしく家庭を住みやすい場所にすべく 努力を惜しまなかった。 fin by りょう 閣下。とりあえずなんとか流れ的にはいたした感じですね。閣下のキャラ的にあえぐとかそういうのは 割愛して皆様のご想像にお任せいたします。けれど私の思う閣下はけっこうはっきりいうひと だと思いますし好きな女性と結婚して情愛を交わすことにさほど躊躇されないかと。さすがにポプランほど いけいけではないでしょうが。帝国の監視の目もあるのでリビングではほっぺにちゅーで止めているの ではないかとご推察です。 |