97.うそ


奇妙だな。

気づいたのはさすがレディ・キラーであるオリビエ・ポプランだった。

だが彼は今口を出さないほうがいいと見て取った。



ダスティ・アッテンボローはめでたく怪我が治り後遺症も残らずに退院

できた。

これ自体はめでたい。










退院の日に女医は違う患者の手術にはいっていたので姿を見せ

なかったが、実は数日前から彼女は用事があるとき以外

アッテンボローの病室に入らなかったしその時間も短かった。

あんなに仲がよかったはずなのに。

喧嘩をするような気性の二人にも思えない。なんといっても

アッテンボローはあのE式の美人女医に魂を抜かれていたのだからと

撃墜王殿は思う。




男と女の間だから何かあったんだろうなと小突きたい気持ちがあるの

だがアッテンボローの集中力は早くも仕事に向いており。

こうなるとポプランは邪魔できない。

女医の方も一日に数件の手術や大学の講義などあったので捕まえる

ことができなかった。







そうこうしているうちに閣下の退院の運びとなった。

何とかしてやる義理はないけれど何とかしてやらねばなるまいてと

面倒見のよいポプランさんは今はただ黙って様子をうかがうこと

にした。




そして、突然の春の嵐。






「うそ」

「来ちゃった。オリビエ」






ポプランの目の前に淡い金髪の澄んだブルーの眸の少女とも

言えるような女性が現れた。




なんで?

あれだけどこに行ったかを黙っておいてくれとコーネフに言って

おいたのに。

まったくコーネフという名前の一家には祟られる、そう撃墜王殿は

げんなりした。

丁度居合わせたキャゼルヌ、アッテンボロー、リンツはただ呆然と

している」



「お前、ボリス・コーネフをどう買収したんだよ。ここまで来やがって。

他のクライアントの仕事は?くそ。相当金を積んだのにあの野郎。」

撃墜王殿は金髪美人に文句を言いつつもボリス・コーネフに腹を

たてていた。


「終わったもん。いい。オリビエ、おじさまは男よりもあたしのような

女の子に味方してくれるのよ。あなただって男の約束より女性の

おねだりを重んじるでしょう。男ってそういう生き物じゃない。」




・・・・・・やられた・・・・・・。

こいつのいうことが正しい。

ポプランは観念した。




ちょっと長めのボブへアの美人は明らかにポプランより10は若い

のに口調やいうことは年上の女性のそれだった。

彼女は呆然としているギャラリーに気がついてぺこりと可愛く頭を

下げた。







「初めまして。オリビエを雇ってくださってありがとうございます。

お世話になります!」


彼女は綺麗な姿勢で歯切れよく挨拶をキャゼルヌらにした。

キャゼルヌはこのお嬢さんは一体お前のどういう関係に当たる

レディなのだと小声でポプランを突いた。

ポプランは仕方がないなと言いつつ彼女を紹介した。




「彼女がおれの今の仕事のパートナーなんです。マネージャーかな。

やれやれ」


「やれやれってなによ。ちゃんと紹介して」

すらりとしたスタイルの美少女にせっつかれてポプランは言った。






「イレーネ・コーネフ。17歳。あのイワン・コーネフの妹ですよ」

今度は一同が、どよめいた。












「うそ」

淡い金髪に、ブルーの澄んだ眸。

白い肌がまぶしい17歳。




「いっときますがおれは手出ししてませんからね!コーネフの妹

なんてお断りですよっ」







限りなく怪しい・・・・・・

これで当分、撃墜王殿はアッテンボローとドクター・ミキ・マクレインの

恋の終わりを知ることも叶わず。



「私もこれでも銃の訓練は受けているんです。オリビエと一緒に護衛の

お仕事、頑張ります!仕事は誠実、確実にがモットーですから♪」


♪って・・・・・・






おそるべしはコーネフ一族かとキャゼルヌは呟いた。



by りょう


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97・うそ