78・うた



この非常時にどうだと思うのだがミキと一緒に暮らしだして

おれははじめていろいろな彼女の側面をかいま見ることが

できて今のところ、愉快である。




彼女はひとりごとが多い。



初めは普通の会話かと思っていたのだが実は彼女が1人で

いろいろ考えているときに知らずのうちに口からこぼれていた

ようで最初はおれはいちいち応えてみていたが最近はそんな

ミキを観察している。










ミキは、1人で歌を口ずさむことも多い。

彼女にそのことを言うと長く1人で暮らしてきたからだと思うと

いう。彼女は歌がうまいほうではない。

人間だれしも欠点がある。


音痴でも今のところ耳障りではない。



ミキの声はかわいいというのか凛とした清楚な声だからおれに

してみれば可愛いなあと思うばかりである。




今我が家には5人のカムフラージュの警備がついていてそれは

それで慣れてきたのだがポプランがミキにちょっかいをかけて

いるのが恋人として嬉しくはない。

あのレディ・キラーが言うには。




「33歳の野郎を守るより、美しい女性を警護することこそ、自分の

本懐」

など吹聴していい加減迷惑だなと思っている。



一方のミキはなんとも思っていないらしく脈絡のないひとりごとを

しょっちゅう言ってる。おれに言ってくれればいいのにパイ生地を

こねながら台所や寝室、キッチンでひとりごとをしょっちゅう言って

いる。

うまいといえない歌も陽気に歌っているもんなので一緒に暮らさ

ないとわからない部分は当然あるのだなと、おれは納得する。










ミキにつきまとっているポプランに彼女はひと言言ったらしく

それからはポプランのちょっかいもぴたっとやんだ。

おれにすれば万万歳である。さすがミキ。つけいる隙がない。




ミキの歌はうまいというものではないが陽気で自作の勝手な

歌が多く聞いていて面白い。


緊急時のおれには恋人との明るい笑い声やひとりごとなど

可愛く思える。












そうおれは当時呑気に考えていた。

それもまたよしとしよう。

なにせ、その時のおれはまだ何もわかっていなかったの

だから。




by りょう

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