72・朝 目が覚めると、腕の中で彼女が眠っている。 ここのところ疲れが出ていたのでアッテンボローは心配 だったが今、窓から差し込む柔らかな太陽の光のもとで みる彼女のほほは、ほんのりと赤みを帯びて元気そうに 見える。 いとおしいと思えた。 まだまだお互いわかりあえない部分もわかっていないところも ある。けれどもお互いなら話しあって乗り越えていくだろうと思えた。 いや、乗り越える努力ができるだろうと彼は確信している。 まだまだ彼女の優しさに赦されてばかりで自分でもふがいないと アッテンボローは思っている。 けれどミキはそんな未熟なアッテンボローを大事に思っていた。 アッテンボローは強い女性だと思っていた彼女の本当の 心の傷を見た思いがした。 何があっても腕の中で眠る彼女を守りたいと真剣に思った。 形はどうあれこのままこの彼女の家で暮らすのは彼にとって 悪くない。 自然だしかえってはなれてくらすより落ち着く。 はなれて暮らす理由がない。昨日二人でそう決めた。 ミキはすぐ診療所で仕事もできるしアッテンボローのすんでいる 官舎に比べればこの家は生活をするにふさわしい。 そうこう思って、ミキの顔にかかる髪の毛を、彼女が起きない ようにそっと触れる。 「・・・・・・寝顔、みてたでしょう」 起きていたのかとアッテンボロー。 ううんと彼女は微笑んだ。 「本当に疲れてたんだわ。今さっき目が覚めたの。やだな。私が 先に寝顔を見てやるつもりだったのに」 彼に抱かれて彼女は笑った。 なぁに。 「なぁに。これからも、朝は来るんだからチャンスはあるさ。今朝は おれの勝ち」 勝ち負けなの?と彼女がまた笑った。 無邪気で明るい彼女の笑顔にアッテンボローは癒される。 これからも一緒にいようねと、どちらが言ったかは作者にすら あずかり知らぬところ。 恋人同士の普通の、朝。 恋人同士の、普通で、けれども大切な時間。 by りょう |