54・ピーターパンシンドローム




「失恋しました」

そうオリビエ・ポプランがつぶやく。アッテンボローは「は」と

聞き返す。




「はあ・・・・・・。少年時代からの憧れの女性、リー・アイ・ファン

の生き写しはとんだ・・・・・・いやこれ以上は言うまい。少年時代

の終わりを今かみしめているんです。」




アッテンボローはポプランが以前からミキの母親に憧れを抱いて

いたことをしっているからその面影のあるミキにちょっかいを出さ

れては困ると思っていたので内心ポプランが失恋してくれてほっと

している。

もっともミキがポプランとのラブ・アフェアを楽しむ類いの女性なら

アッテンボローは彼女に惹かれなかっただろうとも思う。




それとも僚友とミキ・マクレイン争奪戦を繰り広げただろうか・・・・・・。















他の女なら、手を引くかも知れないが。

彼女に関しては絶対譲れないとアッテンボローは思う。



ジョン・マクレインを深く愛して、今彼女は彼1人を宇宙でただ1人の

男としてみている。彼もまた彼女を宇宙でただ1人の女性として見て

いる。2人は比翼でありベター・ハーフだとアッテンボローは信じて

いるのだ。






「少年時代はいつまでも続くわけじゃなしユリアンとてレディ・ヤンに

失恋をしてカリンという伴侶をえたわけです。私ももうリー・アイ・ファンの

面影を追うのはやめます。ドクターは閣下とお似合いです。きっと。

なにせ彼女は・・・・・・」


ポプランはここまで言うとやっぱしいいやとアッテンボローが仕事を

している邪魔をするのはやめてフラリと執務室をでていった。

何が何だかわからないアッテンボローであるが宇宙1の節操なしが

自分の恋人をあきらめてくれてアッテンボローにすれば爽やかな

気持ちになる。










もちろんオリビエ・ポプランという男は悪い男ではない。

女にだらしがないが、これで信頼できる男である。



リンツの報告によるとどうも『ポプラン提督の作戦』は有効で

タイラー首席ヘの脅迫状はくるものの稚拙な計画で

警備隊で爆弾を素早く探知でき狙撃も今のところはない

らしい。







実はアッテンボローのオフィスにも『脅迫状』が来た。

キャゼルヌは一瞬ひやりとしたがこれはポプランいわく

敵を欺く小細工で小道具に過ぎないらしい。

これも計画通りで実際にねらわれているのはアッテンボローの

ふりをするのが『ポプラン提督の作戦』なのだ。

いきすぎた小細工でポプランがアッテンボローの車に爆弾を

仕掛けたことまであってそれは危ないからやめろとキャゼルヌが

説教をした。



無論これもカムフラージュ。




「おいポプラン、どうせ仕掛けるなら花火か爆竹でもいいじゃないか。

本当の爆弾はよせ。怪我人が出る」


正論をキャゼルヌが唱えると、



「極上の舞台には、極上の小道具が必要なんです。小道具

大道具は立派なんだが役者がいまいちなんですよね・・・・・・」




などと、しれっという。









オリビエ・ポプランは少年の瞳を持つ男。


それはミキが言った言葉だ。

アッテンボローはそれを聞くと、ピーターパンという少年を

思い出した。


さてポプラン提督。

女には弱いが運には強い。

この作戦、うまくいくのか。それは次のお話。




by りょう
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