28・強い手と長い睫




彼女が余りに柔らかな微笑みを向けるので彼は照れて一言いった。



「さっきからなぜそんなに機嫌がいいのかな。おれの奥さんは。ミセス・

アッテンボロー。」

おどけてアッテンボローは小柄で華奢な自分の愛する妻に囁いた。

彼女はさっきから夫の顔をのぞき込んではかわいらしい笑みを浮か

べていた。










海鳥号の困難を無事に乗り越えた夫、ダスティ・アッテンボローに誰が

文句など言えようか。

二歳年下の夫を頼もしく思ってしまう。彼女は彼が大好きで宇宙で一番

大事な存在だと思っている。




大事になったのだ。



不謹慎にも帝都訪問が新婚旅行になった今回の旅。

テロにまで命を狙われた夫は結局は自然の猛威をも乗り越えて

しまった。

彼の生命力に愛情を感じ安堵する。



彼なら。

目の前にいる翡翠色をした眸の持ち主の彼なら。



どんな不幸も不運もすべて幸せに変えてしまうだろう。

そのたくましさにミキは改めて、恋をした。

もう一人になりたくない。

一人でいる時間ならほしくない。






彼なら。

彼となら。

これから未来を生きていくのに退屈もしなければミキをけして

一人にしないであろう。

そう確信できた。






大好きよ。ダスティ・アッテンボロー。






よく生きてくれた。

よく生き抜いてくれた・・・・・・。






「あなたと会えて嬉しい」

案外長い睫を彼は持っていて綺麗な眸ににあっている。ミキは

さっきから嬉しくて微笑みが止まらない。







「あ。さてはあまえてるな。奥さん」

「妻が亭主に甘えてはいけないのかしら。」



どうもこのいたずらな眸にアッテンボローは弱い。小首をかしげるさまは

とても年上には思えない。アッテンボローとてミキに恋してる。

強く彼に腕で引き寄せられてもなすがまま。あんなに男性を

寄せ付けなかったミキ・M・アッテンボローが。






だって、彼が好きだから。




「おれたち新婚なんだ。仲良くして悪い法はないよな」

かわいらしい夫があたりの視線を気にしながらミキにそっと

接吻けをした。彼女が小さいのでかがみ込んでキス。

新婚ですから。



これもありということで。









海鳥号は無事、航海を続けた。



by りょう
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